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無断キャンセル「No show」で59歳の男を逮捕。飲食店には死活問題、泣き寝入りせずに行動を

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画像素材:PIXTA

居酒屋に団体予約を入れて、無断キャンセルした59歳の男が11月11日、警視庁丸の内署に偽計業務妨害の疑いで逮捕された。東京・有楽町の居酒屋『のど黒屋 銀座数寄屋橋店』(閉店)に17人分、合計22万1000円分を虚偽に予約し、営業を妨害した疑い。飲食店にとって無断キャンセル(No show)は死活問題だが、逮捕に至るのは珍しい。

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経産省の有識者勉強会で年間2000億円の損害と推定

飲食店へのドタキャンについては、2016年4月に早稲田大学のオールラウンドサークルが高田馬場の居酒屋に50名で予約しながら姿を現さず、無断でキャンセルしたことが話題になった。予約分だけで10万円前後の損失が出たという。店側がサークルに対して「警察に行きますよ」と警告し、その後、示談で決着したとされる。

この件をきっかけに飲食店への無断キャンセルが「No show」(予約したのに現れない)として注目されるようになった。経済産業省では「サービス産業の高付加価値化に向けた外部環境整備等に関する有識者勉強会」を設置。「No show」問題の対策レポートの提出を受けている(2018年11月1日付け)。それによると「No showが飲食業界全体に与えている損害は、年間で約2000億円とも言われている」とのこと。無断キャンセルする側は「行けなくなっちゃった」と軽く考えているのかもしれないが、飲食店にとっては死活問題であり、すでに甚大な被害が生じているのである。

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No showで問われる民事責任と刑事責任

今回の事件について警視庁丸の内署に問い合わせたところ「被疑者は今年6月26日、東京都千代田区有楽町2丁目所在の飲食店に電話をかけ、6月28日午後8時から17名、1万円のコースで3000円の飲み放題をつけてほしい旨、虚偽の予約を申し込み、以って偽計を用いて前記店舗の業務を妨害したものである」とのことであった。

偽計業務妨害罪(刑法233条)は偽計を用いて人の業務を妨害する犯罪で、3年以下の懲役または50万円以下の罰金。本件では用意した料理が無駄になり、しかも17名分の席が埋まってしまい、ほかの客をそこに案内できなくなるのであるから業務を妨害しているのは明らかである。

無断キャンセルは「後からキャンセル料を取られるぐらい」と高を括っていたら大間違い。店から請求される損害賠償金は、あくまでも民事責任であり、それとは別に店の業務を妨害したことで犯罪が成立し刑事責任を問われる可能性がある。

軽いものであれば軽犯罪法1条31号の「他人の業務に対して悪戯などでこれを妨害した者」に相当して、拘留又は科料に処せられる。拘留とは刑事施設に1日以上30日未満拘置される罰則で、科料とは1000円以上1万円未満の金員を納めるものである。

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松田 隆

ライター: 松田 隆

青山学院大学大学院法務研究科卒業。ジャーナリスト。スポーツ新聞社に29年余在籍後にフリーランスに。「GPS捜査に関する最高裁大法廷判決の影響」、「台東区のハラール認証取得支援と政教分離問題」等(弁護士ドットコム)のほか、月刊『Voice』(PHP研究所)など雑誌媒体でも執筆。ニュース&オピニオンサイト「令和電子瓦版」を主宰:https://reiwa-kawaraban.com/