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個人経営の飲食店は「青色申告」の方がお得? 確定申告の基本をおさらい

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画像素材:PIXTA

個人事業主として運営する飲食店の場合、毎年の確定申告は必須だ。とはいえ、複雑な手続きに苦労するケースも多い。そこで最低限の知識を押さえておくべく、今回は確定申告の中でも特に細かい手続きが必要になる「青色申告」を中心に紹介する。

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確定申告について

確定申告とは、毎年1月1日から12月31日までの1年間に生じた収支について、翌年2月16日から3月15日(※)までの間に計算・申告し(=税務署への確定申告書の提出)、所得税を納付する一連の作業のこと。主に個人事業主やフリーランス、会社経営者、不動産収入のある方などが対象となる。

※提出期限が土日の場合は翌営業日。2019年度は、新型コロナウィルス(COVID-19)の感染拡大防止に向けた措置として、4月16日まで延長された

青色申告と白色申告の違い

確定申告には、いわゆる「青色」と「白色」の二種類がある。簡単に説明すると、青色申告のほうが複雑な手続きを要する分、様々なメリットを受けることができる。白色申告は簡易的な手続きで済む以外、メリットは少ない。ただ、確定申告の時期になって急に青色申告をしようとしてもできないので注意しよう。詳しくは手続きの項目で説明する。

また、青色申告の場合にも大きく分けて「複式簿記」と「簡易簿記」の二種類の記帳方法があり、納税者は、いずれかの方法を選択することができる。白色申告は売上と経費を家計簿のように記帳するだけで申告が可能であるが、青色申告を複式簿記で行う場合は、必然的に貸借対照表と損益計算書を作成することになる。一見難しそうに聞こえるが、多少の知識と安価な会計ソフトがあれば、初めての作成でも何とかなるもの。それでも難しいようであれば、税理士に丸投げすることも可能だ。

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青色申告のメリット

青色申告の最たるメリットとして、所得金額から最大65万円の控除を受けることができる「青色申告特別控除」がある。65万円の控除を受ける場合、飲食店の個人事業主であれば、複式簿記で記帳することが条件。複式簿記により作成される貸借対照表及び損益計算書を「確定申告決算書」に添付して控除金額を記載、期限内に提出することで控除を受けることができる。ちなみに簡易簿記の場合は、10万円の控除対象となる。

純損失の3年間の繰越控除も、飲食店にとって大きなメリットとなる。これは赤字が出た場合、翌年以降黒字化したときにその損失を控除できるというものだ。例えば、今年50万円の損失が出たとして、翌年80万円の所得が発生した場合、損失の繰越しにより、30万円の所得として申告をすることが可能に。特に飲食店開業の年は赤字になるケースが多いので、有効活用できるだろう。

また青色申告以外では、10万円以上の備品等を購入した場合、一括で費用に計上することができずに耐用年数期間で費用計上する減価償却が適用される。しかし、青色申告の場合は特例で30万円未満までは一括での費用計上が可能となる。費用計上額が大きくなれば、当然ながら納税額は少なくなるため、メリットが大きい制度である。

最後に、個人事業主の飲食店の場合は、家族に仕事を手伝ってもらい給料を支払っているケースもあるだろう。白色申告でも事業専従者控除で一定の控除をうけることができるが、控除金額の上限がある。青色申告の場合は「青色事業専従者給与に関する届出書」に、対象者や給与額等を記載して提出することで、届け出た金額の範囲内で経費計上が可能となる。

申告に際しての具体的な注意点は?

まず、青色申告を行うために「所得税の青色申告承認申請書」の提出が必要となってくる。青色申告に変更する場合は、変更する年の3月15日までに青色申告の承認申請書を提出し、その年の初めから青色申告のルールで帳簿を作成しなくてはならない。この手続きを踏むことで、翌年の確定申告を「青色」で行うことが可能となる。つまり、確定申告の時期が迫ってきてはじめて「今年は『青色』で申告しよう」と思っても、すぐにできるものではないのだ。ちなみに、その年の1月16日以降に新規開業する場合は、開業日から2か月以内に青色申告承認申請書を提出する必要がある。

実際の確定申告時には「青色申告決算書」と「確定申告書B」を提出する。控除額の異なる複式簿記か簡易簿記かによって記載する内容や添付する書類は変わるが、いずれも国税庁のホームページから作成することが可能なので、しっかりと記帳ができていればさほど難しい作業ではないだろう。

今回は、青色申告について紹介した。詳細な記帳が必要となるため、手間はかかるがメリットも多い。今回の確定申告で始める人も、来年の確定申告に向けて準備をする人も、今回の記事を参考に抜け漏れがないように手続きを進めてほしい。

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若林和哉

ライター: 若林和哉

株式会社パートナー経営企画・代表取締役。飲食店の勤務経験や中小企業診断士の資格を生かして、事業計画作成や資金調達の支援、フランチャイズ関連のWebページの執筆やセミナー講師などを務める。好きなお店は、ラーメン・カフェ・日本酒のおいしい居酒屋など。https://パートナー経営企画.com/