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飲食店の支援の実情を『ウルトラチョップ』高岳氏に聞く。廃業防ぐには「キャッシュの確保」

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株式会社Bespo代表取締役CEOで、『ウルトラチョップ』を運営する高岳史典氏

緊急事態宣言が5月25日に全面的に解除されたが、新型コロナウイルス禍で倒産・廃業する店舗は、今後も増えることが予想される。それらを免れるためには行政の支援を効果的に利用する必要がある。

飲食店予約サービス「ビスポ!」の株式会社Bespo代表取締役CEOで、ニュージーランド産のラムチョップなどを提供する『ウルトラチョップ』を運営する高岳(たかおか)史典氏に支援の重要性や、コロナ禍で得られた教訓、“アフターコロナ”について聞いた。

【注目記事】飲食店が活用できる新型コロナウイルス関連の「補助金・助成金」は?

2月にインバウンド需要縮小、3月半ばから一気に客足遠のく

2020年4月の飲食業の倒産は80件、前年同月比29.0%増で1992年以降の28年間で最多を記録した。「新型コロナウイルス関連倒産」は2月0件、3月2件、4月10件と急増している(東京商工リサーチのデータから)。“直撃弾”を受けた飲食業界に対しては行政も様々な支援策を打ち出している。

(1)持続化給付金
(2)雇用調整助成金
(3)税や社会保険料の納付猶予
(4)IT導入補助金、持続化補助金
(5)新型コロナウイルス感染症特別貸し付け(公庫)
(6)セーフティネット保証・危機関連保証

これ以外にも東京都が独自に「感染拡大防止協力金」や「テイクアウト支援の助成金」などの給付を行なっている。支援を効果的に活用することが、店舗の存続に決定的な影響を及ぼす。高岳氏は実際に支援を活用し、危機を回避した。具体的に支援策をどう利用したかを聞く前に、同氏の新型コロナウイルス禍の影響を説明しよう。

1月23日、ビスポ!とアリペイ(中国の世界最大の第三者決済)との連携を記者発表したが、奇しくもその日は湖北省武漢がロックダウンされた日でもあった。この時点で、武漢で新型感染症が広がっているという情報を得ており、アリペイとのサービスに影響が出ることを懸念していたとのこと。日中間で渡航制限がかかるおそれがあるとみて、連携はしたもののサービスインは取りやめた。

2月後半になると『ウルトラチョップ京都店』の売上が落ち始めた。インバウンド需要が落ち込んだことが影響しており、その時点で京都店の休業は覚悟したという。1回目の(セーフティネット保証による)融資に動いた。

北海道が2月28日に新型インフルエンザ等特措法に基づかない独自の緊急事態宣言を出したあたりから東京でも不安が広がり、3月半ば過ぎから一気に客足が遠のき始め、4月7日に緊急事態宣言が発出されると完全に客足が止まり、休業要請に従い京都店と神楽坂店を休業、残りの東京2店舗も短縮営業とした。「(前年比)70~80%で持ち堪えていたものが、実質的に2~3週間で一気に10~20%に落ちてしまった」と高岳氏は振り返る(以下、コメントは全て同氏)。

4月7日に東京ほか7都府県で緊急事態宣言が発出され『ウルトラチョップ』でも休業・短縮営業を余儀なくされた。画像素材:PIXTA

融資の素早さ「セーフティネット保証」

短期間で一気に経営環境が悪化したことで、上記(1)~(6)の支援策のうち、(3)の税や社会保険料の納付猶予以外は全て利用した(する考え)という。納付猶予をしなかったのは、近い将来にいずれにしても支払わなければならないのであるから、融資を得ることができたなら支払っておいた方がいいという考えによる。

(1)持続化給付金
事業の継続を支え、再起の糧のための制度。法人には最高200万円まで給付される。
「オンラインで申請したが、出し方そのものは難しくなかった。売上が落ちたことを証明する書類が必要であり、きちんとした帳簿の提出が必要。税理士の助けがないとできないであろう。5月7日に申し込み、5月26日に給付がおりた」(高岳氏)

(2)雇用調整助成金
従業員を一時的に休業させた時の手当ての一部を助成する。一定の要件を満たせば、特例的に助成率100%に引き上げもあり得る。
「閉めた2店舗の従業員は給与の7割を補償し、その時点でその9割は雇用調整助成金で戻りそうと感じていた。企業にとって一番大事なのは従業員なので、8人の社員・契約社員の雇用を守るために必要だった。提出書類が複雑で社労士の助けがないと申請は難しいと思う」(高岳氏)

(4)IT導入補助金、持続化補助金
デリバリーやEC販売を開始する際のシステム導入をIT導入補助金で支援し、店舗の改装や機器の導入を行う際に持続化補助金が活用できる。
「オンライン・SNSを使った販売も始めたので、今後、申請できるものは申請しようと考えている。常連のお客さんを囲い込んだサービスはオンラインなら比較的簡単にできる。極論、明日からでもできる」(高岳氏)

(5)新型コロナウイルス感染症特別貸し付け(公庫)
特別利子補給制度を併用することで実質的に無利子での融資となる。都道府県等の制度融資を活用し、民間金融機関にも実質無利子の融資を拡大するもの。
「すでに申請した。金利が低いので借りられるものは借りた方がいい。使わなければ返せばいい。多くの書類作成が必要で、初めての人は難しいと思う。書類は作成したら提出。すると『面談しましょう』という電話がかかってくるので、そこで教えてもらえる。都合3、4回、足を運ぶ必要がある」(高岳氏)

(6)セーフティネット保証・危機関連保証
セーフティネット保証4号(特定地域の災害等により影響を受けている中小企業者)、5号(全国的に業況が悪化している業種を営む中小企業者)該当者に最高で3000万円まで無担保で融資。
「非常に早く手続きを進めてくれる。特に渋谷区は早く、必要書類を持って行ったらその日に認定を出してくれるぐらいのスピード感であった。4号認定をもらって銀行から保証協会に行くには新たにそれなりの書類を集めないといけない。そこから着金まで2、3週間かかる。5月下旬での申請であればもっとかかるかもしれない」(高岳氏)

このように支援制度を効果的に利用して、危機を乗り切った。「もし、支援を活用しなかったら?」と聞くと即座に「ダメだったと思います。ウチは潰れていたと思います。4月が前年同月比80%の売上減で、月間で1000万円以上も売上が落ちました。それを考えたら『アウト』ですよね」という答えが返ってきた。

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松田 隆

ライター: 松田 隆

青山学院大学大学院法務研究科卒業。ジャーナリスト。スポーツ新聞社に29年余在籍後にフリーランスに。「GPS捜査に関する最高裁大法廷判決の影響」、「台東区のハラール認証取得支援と政教分離問題」等(弁護士ドットコム)のほか、月刊『Voice』(PHP研究所)など雑誌媒体でも執筆。ニュース&オピニオンサイト「令和電子瓦版」を主宰:https://reiwa-kawaraban.com/