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コロナ禍の飲食店経営に必要なフードテックは? 「新しい生活様式」への対応も万全に

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写真はイメージ。画像素材:PIXTA

新型コロナウイルスの影響で外食需要は低迷、飲食店は苦しい状況が続いている。緊急事態宣言が解除されて以降、人々の活動範囲は“withコロナ”の意識とともに少しずつ広がりつつあった。しかし、7月に入りこれまで以上に国内の新規感染者数が増加。東京都をはじめ大阪府や愛知県の一部地域では不要不急の外出を控える呼びかけとともに、酒類を提供する飲食店に再び時短営業要請が出された。

弊社が飲食店経営者を対象に行った調査によると、2020年7月の売上が昨年より「減った」と回答した店舗は86.2%。その内、「50%以上減った」と回答した店舗は44.7%にも上る。この厳しい状況の中で、飲食店には何が求められているのか? ここでは、「経営指標の改善」と「新しい生活様式への対応」という2つのキーワードにスポットをあてて考えていきたい。

写真はイメージ。画像素材:PIXTA

コロナ禍において、飲食店がやるべきこと

外食業界全体の売上が減少している今、重要となってくるのが経営指標の見直しだ。経験則や感覚による判断も時には大切だが、やはりデータに基づいた数値の分析を怠ってはならない。客足の落ち込みが避けられない今は、損益分岐点を下げて利益を出しやすい経営体質にすることが大切だ。当然、FLコスト(食材費+人件費)の繊細なコントロールが必要となる。

また、こうした数値を改善しつつも、やはり重要となるのは「集客」だろう。そのためには、お客を安全に迎え入れられるよう新しい生活様式に対応する必要がある。感染拡大防止策として、アルコール消毒液の設置や従業員のマスク着用など、すでに様々な対応を行っている店舗は多いが、さらに徹底した対策を目指すなら、注文用タッチパネルやセルフ会計システムといった「非接触系」のサービスを取り入れるのも手だ。

いずれにしても、これらの課題にはテクノロジーの力を用いて“効率的”に取り組むことが鍵となる。そこでここからは、POSシステムの最大手・東芝テック株式会社で商品・マーケティング統括部部長を務める川村元信さんと、参事の安齋嘉徳さんに、飲食店向け最新ソリューションの効果的な活かし方について話をうかがったので紹介したい。

東芝テック株式会社 商品・マーケティング統括部部長の川村元信さん(左)と、参事の安齋嘉徳(右)さん

数値を把握して「人件費・食材費」の無駄を省く

経営指標を見直すには売上はもちろん、食材費や人件費を正確に把握する必要がある。東芝テックはクラウド型の経営管理システムを提供しており、これらのサービスでは売上や原価、勤怠管理の各データを日々集計・分析できるため、損益状況をすばやく把握することが可能だという。では、実際にどのような数値がポイントになるのだろうか。

「例えば、時間帯別の客数や人時売上が明確になることで、ホールや厨房の最適な人員配置が可能になります。また、どのようなメニューがいつ提供されているかというデータを分析すれば、仕入れの効率化にも繋げられる。まずはこうした数値に着目することで、人件費や食材費の無駄を減らしていけると思います」(川村氏)

東芝テックが提供している「FoodingWorks EX」の管理画面

そのほか、肉類、野菜類といった食材ごとの原価率や、POSレジの売上データから月の予算達成率なども確認できるそう。しかも複数の店舗のこうした情報を一元管理できる点はクラウド型の経営管理システムならではであり、多店舗展開をする経営者にとって大きなメリットになることは間違いない。

ちなみに東芝テックでは、「FoodingWorks EX」「FSanalyst」という飲食店向けのクラウドサービスを提供。いずれも個人店はもちろん、チェーン店まで幅広い飲食店で活用されている。

事前注文アプリの活用でテイクアウトの売上を最大化

新型コロナウイルスの影響でテイクアウト需要が高まっているが、その中で広がりつつあるのが事前注文・事前決済サービスだ。飲食店のテイクアウト商品をスマホで事前注文し、あとは店に取りに行くだけ。そんな新しいスタイルが定着しつつある。

スタッフとお客様との接触機会が減り感染予防に繋がる、注文や会計作業がなくなり業務効率化につながるなどのメリットがある一方、厨房からすると「店内で受けた注文とアプリを通じて受けた注文が混ざって作業が煩雑になる」というデメリットもある。その点、東芝テックでは事前注文アプリとPOSシステムを連携することで解決を図っているようだ。

「弊社では、事前注文決済サービス『O:der(オーダー)』と連携したPOSシステム『FScompass』を提供しています。『FScompass』を利用している店舗であれば、スタッフが受けた注文とモバイル(O:der)からの注文を一括管理できるため、売上を集計しやすいというだけでなく、厨房に出力される注文伝票が煩雑にならないというメリットがあります」(川村氏)

依然としてテイクアウト需要は高く、「O:der」のような事前注文アプリを利用するお客も増えてきた。こうしたサービスを導入しているか否かで、売上も少しずつ変わってくるだろう。

東芝テックのPOSシステム「FScompass」と事前注文アプリ「O:der」の連携イメージ図

新しい生活様式への対応、次なる一手は「非対面」「非接触」

口コミグルメサイト「Retty」を運営するRetty株式会社が5月末に実施したアンケート調査によれば、飲食店に対して「厳密な衛生管理」を求める声は7割を超える。現状、ほとんどの飲食店でマスクの着用や消毒などの対策は講じられているが、「それ以上の対応」となると不十分と言わざるを得ない。ならば、感染拡大防止策として非接触・非対面のシステムを取り入れた飲食店は、それだけで差別化を図れる可能性もある。

「非接触・非対面という点で言えば、弊社のPOSと連携した店内オーダーシステムや、『WILLPOS-Self by FScompass』などのセルフ会計システムが注目を集めています。例えば『SelfU(株式会社Shocase Gig社製)』はお客様自身のスマホを使ってテーブルからメニューを注文し、決済までできるシステム。『Relax Order NS』は各卓に設置するタッチパネル端末ですが、同様のことが可能です。また、食券機の要領でセルフオーダーもできる会計システム『WILLPOS-Self by FScompass』は、時間帯や混雑具合などに合わせて様々な会計パターンを提供できるのが特徴。店員が操作する通常モードと、お客様に操作してもらうセルフ会計モードのいずれかを選択できます」(川村氏)

セルフ会計の運用イメージ

これらは対面や接触の機会を減らすだけでなく、従業員の負担を軽減するなど業務の効率化も叶えてくれる。今後は、コロナ禍でより注目を浴びるようになったデリバリー業者など、外部のサービスと提携したシステムを提案していきたいと話す、川村さんと安齋さん。可能性は広がるばかりだ。

飲食店は未だ厳しい状況が続いているが、まずは経営に関わる数値を正確に把握し、改善すべきところは改善する。そしてお客様を安全に迎え入れられるように店内環境を整える。優れたテクノロジーを用いれば、よりスマートに課題を解決していくことができるだろう。

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田中恵実子

ライター: 田中恵実子

編集プロダクション在籍時にグルメやライフスタイル、住まいなどをテーマとしたさまざまな雑誌・Webマガジンにて取材&執筆をおこなう。現在はフリーランスとして、女性向けショッピングサイトなどの編集執筆を担当。世代より少し上の歌謡曲やJ-POPを愛聴。