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コロナ禍の飲食店を支援する「事業再構築補助金」。第6回公募の概要を徹底解説

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画像素材:PIXTA

コロナ禍において、中小企業の事業成長などを支援する事業再構築補助金。3月28日より第6回の公募が開始している。第5回公募以降では、事業類型の廃止、新設が行われたほか、売上高10%減少要件が緩和されるなど大幅に内容が変更された。今回は、第6回公募以降の事業再構築補助金の概要を掘り下げて解説。申請を検討する事業者は、ぜひ参考にしてほしい。

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改めて「事業再構築補助金」とは?

事業再構築補助金は、経済産業省が2021年3月から予算規模1兆1,485億円で実施している大規模な補助制度。「新分野展開」や「業態転換」などの取り組みを通じて、事業規模の拡大を目指す企業・団体を支援する補助金だ。

申請する際は、以下の3つの要件(主要申請要件)をすべて満たしている必要がある。

①売上が減っている
2020年4月以降の連続する6か月間のうち、任意の3か月の合計売上高が、コロナ以前(2019年または2020年1~3月)の同3か月の合計売上高と比較して10%以上減少していること(ただし、後述の「グリーン成長枠」では売上高10%減少要件を課さない)。

もしくは、2020年4月以降の連続する6か月間のうち、任意の3か月の合計付加価値額が、コロナ以前の同3か月の合計付加価値額と比較して15%以上減少していること。

②事業計画を策定して、事業再構築に取り組む
事業計画を認定経営革新等支援機関や金融機関と策定し、一体となって「事業再構築指針」に沿った新分野展開、業態転換、事業・業種転換等を行う。

③事業終了後に、付加価値額を年率3%以上増やす
補助事業終了後3~5年で付加価値額(営業利益+人件費+減価償却費)の年率平均3.0%以上の増加、または従業員一人当たり付加価値額の年率平均3.0%(「グリーン成長枠」については5.0%)以上の増加を達成すること。

②の認定経営革新等支援機関は、中小企業庁のホームページで確認可能。多くは税理士や商工会・商工会議所等の支援機関が該当する。「事業再構築指針」については後述。③は少々分かりにくいが、要は「かなりの利益を見込む事業計画」を立てる必要があるということ。実際には、事業再構築指針に沿った取り組みを検討していくことになる。

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「新分野展開」「業態転換」とは? 補助対象となる「取り組み」を理解しよう

3つの要件の中で触れられていた「事業再構築指針」とは、本補助金において「どういった取り組みが事業再構築に該当するか」を定義したもので、新分野展開・事業転換・業種転換・業態転換・事業再編の5つに分類されている。では飲食店経営者の場合、各分類に対して具体的にどのようなケースが想定されるのだろうか。一つずつ見ていこう。

①飲食業+αで「新分野展開」
既存店の営業を継続しながら「新たなモノ」を生み出し、新たな市場に進出するケース。その上で、新製品の売上高が総売上高の10%以上となる場合。(※)

例:カフェの飲食スペースを縮小し、新たに焼菓子などのテイクアウト販売を実施

②飲食業のA事業からB事業へ「事業転換」
飲食業としてのノウハウは活かしつつ、店のジャンルを変更するケース。その上で、新事業が売上高構成比の最も高い事業となる場合。

例:既存の日本料理店から、高い売上が見込めそうな焼肉店を新たに開業

③飲食業自体を辞めて別業種へ「業種転換」
飲食業を閉業し、別の新たな業種に挑戦するケース。その上で、新業種が売上高構成比の最も高い業種となる場合。

例:既存店を閉業し、高い売上を見込めそうなコンサルティング業を開業

④A業態の飲食業からB業態の飲食業へ「業態転換」
飲食業としてのノウハウは活かしつつ、商品の製造方法や提供方法を変えるケース。その上で、新製品の売上高が総売上高の10%以上となる場合。(※)

例:店内飲食メインの店舗経営を辞め、オリジナル食品のEC販売を開始

⑤組織再編を行う「事業再編」
合併や会社分割、株式移転、株式交換、事業譲渡を行い、1~4のいずれかを実施するケース。

例:M&Aによって既存の飲食事業を譲渡し、ミールキットの製造事業を立ち上げるなど

■新事業売上高10%要件の緩和
第5回公募からは次の点が緩和された(※)。
●3~5年間の事業計画期間終了後、事業再構築で新たに取り組む事業の売上高が、総売上高の10%以上となる事業計画を策定することを求めている要件について、付加価値額の15%以上でも認める
●また、売上高が10億円以上の事業者であって、事業再構築を行う事業部門の売上高が3億円以上である場合には、当該事業部門の売上高の10%以上でも要件を満たす

補助対象となる経費の例

上記のような事業再構築を行う場合に、以下のような経費が補助の対象となる。

・建物費(建物の建築・改修、建物の撤去、賃貸物件等の原状回復)
・機械装置・システム構築費(設備、専用ソフトの購入やリース等)、クラウドサービス利用費、運搬費
・技術導入費(知的財産権導入に要する経費)、知的財産権等関連経費
・外注費(製品開発に要する加工、設計等)、専門家経費 ※応募申請時の事業計画の作成に要する経費は補助対象外
・広告宣伝費・販売促進費(広告作成、媒体掲載、展示会出展等)
・研修費(教育訓練費、講座受講等)

■補助経費に関する見直し
第5~6回公募からは次の点が見直された。

<第5回公募より>
・貸工場の賃借料についても補助経費として認める
※ただし、補助事業実施期間内に工場の改修等を完了して貸工場から退去する場合に限る。一時移転に係る費用(貸工場等の賃借料、貸工場等への移転費等)は補助対象経費総額の1/2が上限

<第6回公募より>
・ 「建物費」については、原則、改修の場合に限ることとし、新築の場合には、一定の制限を設ける
・ 「研修費」については、補助対象経費総額の1/3を上限とする

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岩﨑美帆

ライター: 岩﨑美帆

1982年生まれ。NPO活動に没頭した 大学時代、塾講師、広告営業を経て、フリーライターに。食・健康・医療など生と死を結ぶ一本線上にある分野に強い関心がある。紙媒体、Web媒体、書籍原稿などの執筆の他、さまざまな媒体の企画・構成の実績がある。好きな言葉は「Chase the Chance!」