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飲食18団体が緊急会見「外食は我慢の限界」。時短要請・禁酒政策の緩和求める

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会見の様子

コロナ禍で飲食業界はもちろん、これまで共に歩んできた一次産業や酒蔵、納入業者など、飲食に関連するすべての業種も打撃を受けている。このままでは世界に誇る日本の食文化が消えてしまう可能性すらある。

6月10日、食文化の未来を守るため飲食18団体が集結。「外食崩壊寸前、事業者の声」と題する緊急記者会見が行われた。18団体が“飲食アライアンス”として声を上げ、現在の厳しい状況を社会に伝えつつ、政府や自治体の政策に反映させるため、5つの提唱を行った。

1、「禁酒政策」の撤回と厳しい時短政策の緩和を!
2、飲食店の感染対策において第三者認証を明確化し、認証店舗についてはメリットを!
3、生産者や納入業者も苦しんでいる。支援策の強化を!
4、「アフターワクチン」に向け、米国のような大規模経済支援を!
5、エビデンス(根拠)に基づいた飲食店政策を! 

会見には18団体のうち、一般社団法人 食文化ルネサンス、一般社団法人 日本ファインダイニング協会、一般社団法人 日本飲食未来の会が出席。加えて、飲食関連業者として旭酒造株式会社(獺祭の蔵元)、株式会社横浜君嶋屋(業務用酒類卸販売)、株式会社金井農園(群馬の米農家)が参加した。

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コロナ禍で困窮する参加者が、その思いを政府に訴えた

現在どのような思いで経済活動を続けているのか。緊急記者会見に登壇した参加者それぞれの思いを紹介する。

食文化ルネサンス専務理事・二之湯武史氏

■食文化ルネサンス専務理事・二之湯武史氏
「飲食業は休業要請、時短要請、そして現在の酒類提供の禁止で最もコロナの影響を受けている。経営体力だけでなく、精神面でも我慢の限界にきています」

Zoomで参加した株式会社菊の井・村田吉弘氏

■食文化ルネサンス理事、株式会社菊の井・村田吉弘氏(日本料理『菊乃井』)
「京都では大きな料亭がどんどん店を閉めている状態。料亭というのは一度なくなりますと、もう二度とできることはありません。今は要請を守っているが、もう限界。観光地なのに店を閉じている飲食店が多く、火が消えたよう。京都の魅力が半減しています」

株式会社Wakiya・脇屋友詞氏

■食文化ルネサンス理事、日本中国料理協会副会長、株式会社Wakiya・脇屋友詞氏(中国料理『Wakiya』)
「『サービス業に将来があるのか?』という声が聞こえている。暗い街の雰囲気が、飲食店の職場にも流れている。18団体が集まり、政府に訴える力を持ちたい」

株式会社バルニバービ・佐藤裕久氏

■日本ファインダイニング協会理事、株式会社バルニバービ・佐藤裕久氏(『Good Morning Café』ほか多店舗)
「歯を食いしばり、赤字を垂れ流してやっております。タコが自分の脚を食べるように命や思いを繋いでいます。我々が希望を見失えば、日本の食文化が失われます。未来につなげるための、貸付ではないファンドを作ってほしい」

ソルト・コンソーシアム株式会社・井上盛夫氏

■日本ファインダイニング協会副会長、ソルト・コンソーシアム株式会社・井上盛夫氏(広尾『EAT PLAY WORKS』ほか多店舗)
「日々ぎりぎりの状態。お金を借りて、每日資金繰りに追われている。これは我々のせいですか? どうやって返すんですか? 10年ぐらい棚上げにしてほしい。基金が欲しいです。18団体がひとつになり、物を申して、この国を食を通じて復興させていけるように頑張りたい」

株式会社ウォーターマーク・山下春幸氏

■日本飲食未来の会代表理事、株式会社ウォーターマーク・山下春幸氏(『Hal Yamashita』)
「これまで日本の飲食業界は右肩上がりでした。ところが、コロナで吹き飛びました。このあと復活するのは厳しいです。私自身16店舗あったお店が、6店舗なくなりました。今月も1店舗閉まります。一次産業も困っています。コロナは怖いです。広げたくありません。だけど経済をまわしていきたい」

株式会社オール・ケッチァーノ・奥田政行氏

■日本飲食未来の会理事、株式会社オール・ケッチァーノ・奥田政行氏(『アルケッチァーノ』)
「飲食店が減っていくと一次産業や調味料、日本酒、ワイナリーなどの生産者の数も減ってしまう。日本の食の風景が変わってしまう。一度なくなってしまうと復活するまでにパワーを要する。未来が見える政策を考えてほしい」

旭酒造株式会社・桜井一宏氏

■旭酒造株式会社・桜井一宏氏
「飲食が悪、アルコールを楽しむことが悪、そういった考えがあるように感じています。飲食は密接に地域の経済に繋がっています。酒蔵も経済圏の一員。その経済圏を守ってほしい。前向きに皆が戦っていける、前に進んでいける、そういった形を模索してほしい」

株式会社横浜君嶋屋・君嶋哲至氏

■株式会社横浜君嶋屋・君嶋哲至氏
「酒が悪いイメージを持たれたのは初めて。酒があるからこそ生きていてよかったという思いが奪われている。酒は神代の時代から造られてきたし、宮中晩餐会にも必ず出すもの。酒を飲むと騒ぐという理由で禁酒にするのではなく、騒がないような法律を作ってほしい」

Zoomで参加した株式会社金井農園・金井繁行氏

■飲食店向けに群馬で米を栽培する株式会社金井農園・金井繁行氏
「コロナ禍で飲食店向けの米の出荷量がマイナス7割。ひと月に20万円、10万円の支援金では足りない。農村の美しい原風景を守っているプライドもあります。このままいくと米作りに希望を持てなくなり、耕作放棄地がかなり出てくることを心配しています」

酒蔵も業務用酒類卸販も一次産業の米農家も飲食業に関係する仲間として緊急記者会見に臨んだ。

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中島茂信

ライター: 中島茂信

CM制作会社を経てライターに。主な著書に『平翠軒のうまいもの帳』『101本の万年筆』『瞳さんと』『一流シェフの味を10分で作る!男の料理』『自家菜園のあるレストラン』。『笠原将弘のおやつまみ』の企画編集を担当。「dancyu web」や「ヒトサラ」、「macaroni」などで執筆中。