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【後編】飲食店が「事業再構築」を進めるには? 数値計画と必要利益の考え方を解説

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画像素材:PIXTA

新型コロナの影響で消費者のニーズは少しずつ変化。これに伴い、業態転換を検討する飲食店も増えつつある。しかし、事業再構築と言われても、何から手をつければいいのかわからない経営者も多いだろう。そこでシリーズ後編となる本記事では、「【前編】飲食店が「事業再構築」を進めるには? 事業計画見直しの具体的なコツを解説」に続き、飲食店が事業を再構築する際に立てる数値計画の注意点や、利益を生むための工夫について解説していく。

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まずは運転資金を確保。その上で「必要利益」を設定しよう

前回の記事では、事業再構築に向けた最初のステップとして、まず自店舗の強みを明確にすること。さらにそこから「アンゾフの成長マトリックス」を用いて、具体的なビジネスモデルを検討する必要性を述べた。今回は、ビジネスモデルの検討と並行して考えたい、数値計画について解説する。

数値計画に欠かせない損益計算書(以下、PL)を作成するうえで重要なのが、継続的な利益を生み出す戦略にこだわること。あわせて、コロナ融資など、金融機関への返済を念頭に置いた資金計画でなければならない。必要利益や資金を検討した結果、金額的に厳しいようであれば、そのビジネスモデルは見直す必要がある。こうして、より柔軟にブラッシュアップさせていくことが大切だ。

例えば、ある飲食店が、事業再構築後の新たなビジネスとしてテイクアウト・デリバリーを始めて、下記のPLのようになったとする。

【既存の飲食店】※単位・万円
売上…400
原価…120
人件費…135
賃料…50
減価償却費…10
その他販管費…65
利益…20

【新ビジネス】※単位・万円
売上…70
原価…25
人件費…0
賃料…0
減価償却費…0
その他販管費…35
利益…10

人件費・賃料・減価償却費がゼロということは、新たなビジネスモデルを構築するにあたり、追加の人件費やスペースなどの投資をかけずに、10万円の利益を上乗せしたということなので、かなり効率のよいモデルと言えるだろう。

PL上の合計の利益として、30万円(20万円+10万円)が計上されるが、減価償却額は実質のキャッシュアウトがないため、合計40万円がキャッシュインだとする。この金額で月額の返済や、個人事業であれば生活費を含めた金額がまかなえるかどうかが、資金計画のポイントである。例えば返済額が60万円ということであれば、必要利益は50万円となるため、この額では返済がまかなえない。この場合、ビジネスモデルの見直しや追加のビジネスが必要となる。

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「利益を出す」とは? 黒字化させるための施策を考えよう

必要利益を算出したら、その利益を出すための施策を考えよう。ここでは、3つの施策を紹介する。

①市場を拡大して売上数量を伸ばす
市場拡大というと難しく感じるかもしれないが、要は客数を増やすことである。客は新規層とリピーター層に分けることができるため、現在の状況に応じてどちらを増やすことに注力するか考えるといいだろう。新規客を呼び込むのであれば、地域や年齢層・利用用途や利用時間帯など、既存顧客とは異なる市場に向けた施策が必要である。リピーターを増やしたいのであれば、新規客をリピーター化するための施策、リピーターの利用間隔が短くなるような施策が有効である。

②売値を上げる
いわゆる値上げをすることも、利益を出すためには有効な施策である。現在、人件費や食材・光熱費などが上昇傾向にあるため、値上げに関しても比較的受け入れられやすい状況にあると言える。実際にカフェやファミレス、居酒屋の大手チェーンなども値上げを発表している。

とはいえ、やはりネガティブな印象が懸念されるということであれば、例えば主力商品の金額は上げずに、サイドメニューやトッピングなどの金額を上げる、食材を変える、ポーションの量を増やすといった付加価値の向上と並行して検討するのも、ひとつの方法だ。

③売値据え置きでコストを下げる
現状、コストの単価を下げることは難しいかもしれない。だが、少数の従業員でも運営できるよう、オペレーションや教育を見直す、食材ロスが多いメニューをやめ、比較的原価のかからないメニューに変えるといった対策は考えられる。まずは販管費を見直して、無駄なコストを極力削っていくことから実施してみよう。

今回は事業再構築に関して、数字面からの検証とその施策を紹介した。前編と合わせることで、現在または将来の事業と向き合うコツや、今後の動き方が見えてくるのではないだろうか。アフターコロナに向けた取り組みとして、貴店の発展に少しでも役立てていただけたらと思う。

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若林和哉

ライター: 若林和哉

株式会社パートナー経営企画・代表取締役。飲食店の勤務経験や中小企業診断士の資格を生かして、事業計画作成や資金調達の支援、フランチャイズ関連のWebページの執筆やセミナー講師などを務める。好きなお店は、ラーメン・カフェ・日本酒のおいしい居酒屋など。https://パートナー経営企画.com/