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2022年度の最低賃金、全国平均で31円引き上げ。東京は1072円に、飲食店も対応迫られる

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画像素材:PIXTA

中央最低賃金審議会は8月1日、2022年度の最低賃金について、現在より31円引き上げることを正式決定した。全国平均で時給961円が目安額となる。急激な仕入れ額上昇や生活必需品の値上げを背景に協議は難航し、決着が8月にもつれ込む異例の展開となった。最低賃金の伸び率は3.3%、昨年度に続き過去最大の上げ幅となる。

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全国平均961円。最低賃金の改定は10月から順次適応

最低賃金制度とは、すべての労働者に適用される最低限の賃金を保証する制度で、金額は毎年見直される。まず7月に、労使代表・公益代表とする学者らで構成される厚生労働省の諮問機関・中央最低賃金審議会において協議され、経済状況に応じて都道府県をA~Dの4つのランクに分類し目安額を提示する。その後、8月中に各都道府県の地方審議会で実額が決定し、10月から順次適用となる。下回った企業には法に基づき罰金が科されるため、現行の雇用契約や求人情報の給与額に関して確認を行っておきたい。

今年の引き上げ目安額は、東京都や大阪府など6都府県にあたるAは31円。京都府や茨城県など11府県のBは31円、北海道や奈良県など14道県のCは30円、福島県や沖縄県など16県のDは30円となった。全国平均時給は現在の930円から961円へと上昇する。

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コロナ禍、原材料高騰に加え、人件費まで

近年の引き上げ率は、新型コロナウイルスの影響で横ばいとなった2020年度を除き、概ね3%程度で推移していたが、今年は3.3%とそれを上回った。2年連続で3%を超えており、上げ幅としても昨年の28円を超えて過去最大となる。

今年の協議では急激な物価上昇があったため、経営者側としても一定の増額を容認する姿勢をみせながらも、その上げ幅について調整が長引いた。8月まで決着がもつれ込んだことは、近年としては異例である。

最終的には生活必需品の相次ぐ値上げによる家計へのひっ迫状況に、経営者側が歩み寄るかたちとなった。6月までの消費者物価指数は、生鮮食品を除いた総合指数が3か月連続で前年同月比2%以上上昇している。なかでも食料やエネルギーなどといった生活必需品が値上げされているため、このまま物価高に賃金上昇が追いつかない状況が長期化すれば、社会全体で消費抑制に拍車がかかる事態になりかねないからだ。

とはいえ10月に控えた最低賃金上昇は、飲食店にとっては深刻な問題である。コロナ禍で来店客が減少していることに加え、昨年からの原材料高騰によって仕入コストも上がっている。昨年も28円の賃金上昇を行ったばかりだが、さらにこれまで以上に人件費がかかるとなれば、より一層の重荷となる。飲食店は苦しい状況が続くが、これまで以上にコスト管理を徹底し経営の効率化に向けて改善が必要になるだろう。

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松本ゆりか

ライター: 松本ゆりか

東京でWebマーケターを経験した後、シンガポールへ渡りライフスタイル誌やWebメディア制作に携わる。帰国後、出版社勤務を経てフリーライターに。主に中小規模ビジネスや働き方に関する取材・執筆を担当。私生活ではひとり旅とはしご酒が好きなごきげんな人。