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飲食店の「人手不足」解消に。採用強化に成功した4企業の取り組み

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画像素材:PIXTA

今、飲食店が抱えている大きな課題といえば「人手不足」問題だ。コロナ禍の影響をもろに受けた飲食業界は働き手が集まりづらい状況が続いており、新たに採用活動を行っても十分に応募がこないという店舗も少なくない。

そんななか従業員の待遇改善によって採用を強化したり、入社後の働きがいをつくり出し定着率をアップさせたりと、さまざまな方法で人手不足を解消しようとする飲食企業が増えている。ここでは飲食店の人材確保を目的にした、4社の施策事例を紹介したい。

■中華料理チェーン『日高屋』 -中途採用者へ入社手当50万円を支給-
中華料理チェーン『日高屋』を展開する株式会社ハイデイ日高は、2022年5月以降に採用した中途社員に対して、合計50万円の入社手当を支給する取り組みをはじめた。手当は入社後12か月に分割して支給し、中途社員の定着を期待している。

また既存社員に対しても2月に特別感謝金を支給したほか、年間公休日数を4日増やした。人手不足によりいまだに時短営業を余儀なくされる店舗もあるなか、通常営業再開に向けて、金銭面・条件面での待遇改善で積極的な人材確保を進めている。

■チアダンスカフェ『チアーズワン』 -チップ制度導入で時給アップ-
ダンスパフォーマンスが楽しめるチアダンスカフェ『チアーズワン』を運営するベスティ株式会社は、2022年3月のまん延防止措置解除後から、店の独自通貨「スマイル」を用いたチップ制度を導入した。

お客は来店時に受け取った1000スマイルを、ダンスパフォーマンス後に気に入ったチアリーダーに手渡すという仕組みで、スマイルの追加購入も可能だ。受け取ったスマイルは業務終了後に精算し、チアリーダーを務める従業員へ還元される。

昨年12月に行ったテスト導入では、一人あたり時給300円程度の賃金アップとなった。また、チアリーダーの多くは歌やダンスを仕事にしたいという夢を持つ若者だが、チップ制度が導入されたことで、ダンスパフォーマンスに対するさらなるモチベーション向上につながったという。チップを渡すという体験に、客の反応も良好だ。従業員への待遇改善施策が、店の魅力づくりにも直結している。

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■『岐阜タンメン』 -働きやすい環境づくりでリファラル採用比率50%超え-
東海地区を中心に『岐阜タンメン』や『カプサイメン』などを展開する株式会社岐阜タンメンBBCは、従業員から知人や友人の紹介を募るリファラル採用を強化し、安定的な人材確保に成功している。これまでは求人広告中心の採用だったが、2022年3月のアルバイト採用ではリファラル比率が50%を超えており、正社員登用には希望者が順番待ちをしているほどである。

リファラル採用成功の秘訣は、第一に友人や知人に紹介したいと思える働きやすい現場環境の整備が欠かせない。同社ではカット野菜や自動調理器を導入するなどで現場オペレーションの改善を図ったり、休日を増やし有給取得率アップしたりといった労働環境の改善に努めた。

また、求職者へ提示する情報として、仕事内容や労働条件だけでなく、中途入社した社員へのインタビューや座談会の様子を動画などで公開。さまざまなキャリアを持つ社員の転職ストーリーや、同社で働くやりがいについて発信することで、求職者の入社意欲を高めると同時に、社員にとっても会社の魅力を再認識するいい機会になっているようだ。

リファラル採用を強化したことで従業員の帰属意識が高まり、離職率は2.5%にまで低下。人材確保の好循環を生み出している。

■『Soup Stock Tokyo』 -バーチャル社員制度-
食べるスープ専門店『Soup Stock Tokyo』を展開する株式会社スープストックトーキョーでは、同社独自の人事制度である「バーチャル社員制度」が、アルムナイ採用(出戻り採用)につながりつつある。

バーチャル社員制度とは、希望する離職者(アルバイト含む)にバーチャル社員証を発行し、退職後も個人と企業がゆるく繋がり続けることを目的としている。バーチャル社員になると、引き続き社割で商品が購入できるほか、ウェブ社内報が閲覧できたり、新商品の試食会や社内イベントの招待をうけることができる。

離職後もこうして関係を継続し、仲間意識を持ち続けることで、働く地域やライフステージの変化を越えて、離職者が再入社するケースが出てきている。企業文化と働く人を大切にする同社ならではの、新たな採用手法に成長するかもしれない。

飲食店の人材採用はますます激化しているが、工夫を凝らした採用活動で人材の確保に成功している店舗もある。働く環境を整えるのはもちろんだが、今回紹介したようなアイデアを積極的に考えていくことも、今の飲食店には必要なことなのかもしれない。

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松本ゆりか

ライター: 松本ゆりか

東京でWebマーケターを経験した後、シンガポールへ渡りライフスタイル誌やWebメディア制作に携わる。帰国後、出版社勤務を経てフリーライターに。主に中小規模ビジネスや働き方に関する取材・執筆を担当。私生活ではひとり旅とはしご酒が好きなごきげんな人。