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コロナ禍で都内飲食店の「訴訟事件」が急増。訴訟理由のトップは「家賃滞納」

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画像素材:PIXTA

緊急事態宣言が発令された2020年以降、都内飲食店を対象とした訴訟事件が急増していたことが、東京商工リサーチの調査でわかった。特に食堂やレストラン、居酒屋業態において、家賃や仕入れの売掛金、設備や備品などのリース費用の滞納に関する提訴が目立つ。コロナ禍の影響で売上が激減し、公共の支援策では補填しきれず事業頓挫した飲食店が多発したと推測できる。

【調査概要】
対象期間:2019年~2021年
調査対象:東京地方裁判所での飲食業者が起訴された訴訟事件
調査機関:株式会社東京商工リサーチ
※詳しい調査結果はこちら

【注目記事】2021年の外食売上、“コロナ禍元年”よりさらに市場縮小。「居酒屋」は前年比42%減

コロナ1年目、飲食店の訴訟事件は前年比約2倍。未だ高止まりで苦心が続く

2020年は飲食業者の倒産件数が過去最多を記録するなど、飲食業界にとってはまさに苦悶の年だった。東京地方裁判所で飲食業者が提訴された訴訟事件についても、感染拡大以前の2019年に比べ1.94倍にも急増した。ゼロゼロ融資や雇用調整助成金の特例制度のほか、時短協力金といたコロナ関連支援策が行き渡った2021年には118件(前年比25.7%減)と落ち着きを見せているが、未だにコロナ前の状態に戻ったとは言い難い。

東京商工リサーチ調べ

提訴理由のトップは家賃滞納。売掛金やリース料滞納で事業頓挫が相次ぐ

最も多い提訴理由は3年間で変わらず、家賃滞納などの理由で立ち退きを求める「建物明渡・賃料」であるが、その件数や占有率は急増した。コロナ禍の売上減少でテナント賃料が支払えない飲食店が多発したことがうかがい知れる。

次に多い訴訟内容としては「売掛金・リース料」が浮上した。2021年には「工事代金(原状回復)」による訴えも加わり、テナント賃料のみならず、仕入れに係る売掛金を滞納し、店の設備や備品を残したまま、休業や廃業に陥った事業者があったと推測される。また従業員や業務委託者への賃金未納も散見された。

東京商工リサーチ調べ

「酒場・ビアホール」の訴訟件数、コロナ前の約3倍に急増。業態で分かれる明暗

業態別の最多は「食堂・レストラン」で、いずれの年でも訴訟件数全体の半数以上を占め、全体数の推移と同様の波を描いている。しかし、それ以上に目を引くのは「酒場・ビアホール」業態で、コロナ1年目には前年比約3.2倍の急増である。飲食業態のなかでも特に、コロナ禍の憂き目を見てきた居酒屋業態の厳しい状態が見て取れる。

一方で「喫茶店」や「そば・うどん店」については、この3年間で大きな数値変動がない。これらの業態ではコロナ禍の影響が比較的少なかったことや、店舗開発にまつわる投資が他業態と比べ簡易で事足りることが要因とも考えられる。

東京商工リサーチ調べ

コロナ関連支援策の縮小傾向に、飲食業者の不安は続く

以上の訴訟事件に関するデータから、コロナ禍の売上減少が飲食業者へ大ダメージを与えたことがわかる。今後はコロナウイルスの感染拡大が続いても、営業の制限はなく、時短協力金を得られない状況が予想される。そんな中で、いわゆる「コロナ融資」の返済について考えなければいけない飲食店もあるだろう。当面はキャッシュフローを重視した堅実な経営をする飲食業者が増えそうだ。

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松本ゆりか

ライター: 松本ゆりか

東京でWebマーケターを経験した後、シンガポールへ渡りライフスタイル誌やWebメディア制作に携わる。帰国後、出版社勤務を経てフリーライターに。主に中小規模ビジネスや働き方に関する取材・執筆を担当。私生活ではひとり旅とはしご酒が好きなごきげんな人。