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次世代型の組織モデルで人手不足は解消する!? ティール型飲食店『肉汁水餃子 餃包』の挑戦

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『肉汁水餃子 餃包』で出迎えてくれた有限会社タロコの代表取締役・坂田健氏

2018年に発行されたフレデリック・ラルー氏の著書『ティール組織』は、組織の進化論について綴られており、世界各国で大きな注目を集めたベストセラーだ。

ティール組織の特徴は、上下関係がなく、目標や目的のために現場のメンバーが必要に応じて意思決定を行うという点。ラルー氏の提唱をきっかけにティール組織を導入して成果に繋げたビジネス組織も多く見られる。

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看板メニューは店名と同じく「肉汁水餃子・餃包」4個990円

目指したのはマネジメントに依存しない自立型組織

東京・六本木駅にある『肉汁水餃子 餃包』もティール型組織のひとつ。この手法を取り入れることでどのような効果があったのか、『餃包』を運営する株式会社アールキューブの前CEOで、現在は飲食店向けに餃子の製造・販売を行う有限会社タロコの代表取締役・坂田健氏に話を聞いた。

「飲食店は店長やオーナーシェフが絶対的な権力を持っていることが多く、その人が抜けると組織ごと崩壊することもよくあると思います。それに加えて、多店舗を運営しようと思うと、経営者が管理業務に追われ、本来すべき仕事ができなくなる。それならどうするかと考えて、弊社はかねてから星野リゾートさんなどをお手本に、上司に過度な管理をされなくとも、メンバーが自主経営できる自立型の組織を目指していました。そもそも、管理業務そのものは、直接付加価値を生み出さない内向きな作業と考えています。

そんななか、ラルー氏の著書で言語化されたティール組織を知り、当社と似たことをしている企業が少ないながらもあることを知りました。『餃包』は現在ほぼ現場のスタッフだけで回せています。会社全体のメイン事業は飲食店に卸す餃子の製造(業務用餃子の餃包)やコロナ禍をきっかけに始めたYouTube事業(毎日餃子TV)で、店舗はあくまでモデル店のような立ち位置。このように新しい事業に手を付けられるのも、管理業務に私の時間が浪費されていないからだと思います」

お手伝いスタッフの仕事風景。コロナ禍での明るい雰囲気づくりにもつながった

生物的な組織だからこその柔軟さ

新型コロナウイルスによる時短要請などが解消された2021年秋ごろ、飲食店では深刻な人材不足が話題になった。その対策にもティール組織は一役買ったという。

「もちろん『餃包』も人手が足りなくなった時期があります。ただ、うちの場合は求人メディアで募集をかけても費用対効果が悪いので、Timeeというアプリ経由でスポット的に働いてもらったり、保健所など関係各所に確認を取ったうえでお客様に飲食代を無料にする代わりにボランティアとしてお店のお手伝いをしてもらうなんてこともやりました。

『餃包』を含めて、うちの会社は生物的な組織なので自由に変形していけるんです。どの組織形態でも目的の達成のために常に変化するのは当たり前だと思っています。固定概念にとらわれて求人メディアだけに頼っていたら生き残れていなかったかもしれません。そこのアイデアをいろいろ試せたのも、経営陣が店舗に付きっきりじゃなかったからだと思っています」

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松嶋三郎

ライター: 松嶋三郎

フリーランスのライター。堅いネタから柔らかいネタまで、週刊誌やビジネス誌など紙・Web問わず多数のメディアで執筆中。「書く記事はジャンルも内容も媒体も食わず嫌いしない」がモットー。 https://twitter.com/matsushima36