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夜は4回転することも!『烏森百薬』が打ち出す「名店のセレクトショップ」という必勝策

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店長の山本航世氏。2020年2月にアルバイトで入社し、23歳で店長に就任

ビジネスパーソンの聖地と呼ばれる東京・新橋の繁華街、しかも烏森神社の参道脇という絶好のロケーションと、「名店のセレクトショップ」というユニークなコンセプトで大ヒットを飛ばしているのが、2018年10月に開業した『烏森百薬』。昼は食堂、夜は居酒屋という二毛作営業を行う同店は、夜のみで3~4回転する繁盛ぶりだ。運営するのは、元エー・ピーカンパニーの取締役副社長・大久保伸隆氏が2018年に創業した株式会社ミナデイン。「飲食業界の課題解決」も視野に入れた『烏森百薬』の店づくりについて、店長の山本航世氏に話を聞いた。

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「キュレーション型」のスタイルには、理由がある

『烏森百薬』のフードメニューは約30品あるが、そのうち店内で一から調理するのはわずか5品。残りの25品は、から揚げの人気店『太閤 分家 禅閤(大分県・宇佐市)』のから揚げや、『餃子の宝永(北海道・十勝音更町)』の餃子など、名店のメニューを取り寄せて提供している。こうしたコンセプトを採用した経緯について山本氏は、「店舗の立ち上げ時に料理人がいなかったことも理由ですが、一番は飲食業界の課題を解決する店舗を作りたかったから」と説明する。

工場から取り寄せるメニューは、どれも「手作り」にこだわって製造されたものばかり。調理済みの状態で店に届くため、店内では揚げる、焼く、盛り付ける、といった仕上げの作業を行うだけで提供できる。仕込みの工程がいらない分、業界課題のひとつであるスタッフの労働時間を短縮でき、食材の廃棄ロスも最小限に減らせるというわけだ。また、営業中は包丁もほとんど使わないため、誰が作っても味がブレないというメリットもある。

定番メニューより、手前から時計回りに「牛タンたたき」1,400円、「『餃子の宝永』味噌ダレ餃子」600円、「『太閤 分家 禅閤』鶏のから揚げ」600円

こうしたメニューをセレクトする際、大事にしているのは「定番ならではの親しみがありつつも、他店より少し魅力を感じられること」と山本氏は言う。

「まずは、誰もが知っている料理であることが前提。その上で他店よりも美味しく、印象に残ることを目指しています。自家製に比べるとどうしても原価は上がってしまうので、ソースなどの味付けの工夫や、盛り付けで付加価値を高めています」

例えば看板商品のひとつである「『餃子の宝永』味噌ダレ餃子」は、自家製の味噌ダレをかけ、小葱をたっぷりと盛ることでプレミアム感をプラスしている。ポーションは一皿につき4個。一般的に餃子は一皿5~6個が定番だが、食べ応えのある大ぶりの餃子を盛り付けることで満足感を高めている。これも手頃な売価を維持するための策だ。

一方、自家製の料理は毎月商品開発を実施し、月替わりで提供。取り寄せメニューに関しても、毎月試食会を行ってスタッフからの意見を吸い上げ、四半期に一度見直しを入れる。お客を飽きさせないための努力だが、こうした定期的なブラッシュアップがスタッフのモチベーション維持にもつながっているという。

お酒の一番人気は、「カラス森ハイボール」600円。日本酒は常時8~9種類で、1/2合500円~

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笹木理恵

ライター: 笹木理恵

飲食業界専門誌の編集を経て独立。スイーツ・パンからフレンチ、ラーメンなどまで、食のあらゆるジャンルを担当。飲食専門誌を中心に、一般雑誌やWEB、書籍などで活動している。「All About」「Yahoo!ニュース個人」でも執筆中。 https://foodwriter-rie.com/