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日本酒の新しい潮流「クラフトサケ」の定義とは? 飲食店での提供メリットも

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画像素材:PIXTA

日本国内の酒類生産量は、1999年をピークに減少を続けているが、そんな中でも新しい潮流が誕生し始めている。2000年代からはクラフトビール、2010年代にはクラフトジンが国内で人気になり、最近では「クラフトサケ」が注目されるようになってきた。今回は、クラフトサケの定義とクラフトサケが生まれた経緯、飲食店でのクラフトサケの活用について解説する。

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「クラフトサケ」とは?

「クラフトサケ」が何を指すのかについては、2022年に設立されたクラフトサケブリュワリー協会が定義している。その定義は、「日本酒(清酒)の製造技術をベースとして、お米を原料としながら従来の『日本酒』では法的に採用できないプロセスを取り入れた、新しいジャンルのお酒」である。

現在の酒税法で定められている日本酒の造り方にはないプロセスを取り入れた、ルールにしばられない自由さが魅力のお酒だといえる。具体的には、フルーツやハーブなど日本酒では使用しない副原料を取り入れたお酒や、お酒と酒粕を分ける工程を経ないどぶろくなどが当てはまる。これらは酒税法上「日本酒」には該当しないため、分類は「その他の醸造酒」や「雑酒」になっているという特徴がある。

クラフトサケが生まれた経緯

では、なぜクラフトサケが造られるようになったのだろうか。日本国内の酒類生産量は減少し続けており、日本国内の酒蔵も同様に年々減少を続けている。2000年度には1977業者、生産量は99万9000キロリットルだったが、2020年度には1035業者、41万4000キロリットルにまで減少。業者数、生産量ともに、20年で半減してしまったと言ってもいい。

清酒製造場と出荷数量は年々減少している(参考:国税庁・酒類製造業及び酒類卸売業の概況「酒のしおり」より) ※画像引用元

酒蔵が増えない理由のひとつに、清酒の製造免許が原則として新規取得できないということが挙げられる。清酒を製造するには製造免許が必要になるが、免許を取得するためには年間60キロリットルという最低製造数量を確保しなければならない。

60キロリットルがどれくらいの量かというと、一升瓶に換算すると約3万3000本。この量を生産・販売しなければならないと考えると、新規参入は現実的ではない。実際、70年近く新規参入はない状況だという。ゆえに、新しく日本酒を造ろうとした場合、既存の酒蔵を買い取るか、委託して醸造してもらう方法が一般的だった。

そのような状況の中で、2016年に、伝統的な日本酒の技法を重んじながら、ルールにとらわれない“SAKE”を造る「WAKAZE」が創業。そして、2021年に「輸出用清酒製造免許制度」が新設される。この制度では最低製造数量基準が撤廃され、輸出用に限り新規参入が容易になった。その頃からクラフトサケを造る醸造所が増えはじめ、2022年6月27日にはクラフトサケブリュワリー協会を立ち上げるまでに至った。

クラフトサケブリュワリー協会を立ち上げた6醸造所 ※画像引用元

クラフトサケブリュワリー協会を立ち上げたのは「WAKAZE」に加え、「木花之醸造所(コノハナノ)」、「haccoba -Craft Sake Brewery-(ハッコウバ)」、「LIBROM Craft Sake Brewery(リブロム)」、「稲とアガベ」、「LAGOON BREWERY(ラグーンブリュワリー)」の6社。現在では、「ハッピー太郎醸造所」を加えた7社がクラフトサケブリュワリー協会に加わっている。

クラフトサケブリュワリー協会の目的は、

1、クラフトサケの醸造所を増やす
2、クラフトサケの知名度を高める
3、日本酒とクラフトサケが共存できる未来をつくる

の3点。クラフトサケブリュワリー協会設立後も、複数のクラフトサケを造る醸造所が創業しており、クラフトサケの知名度は徐々に高まってきているといえるだろう。

画像素材:PIXTA

飲食店におけるクラフトサケの利用シーン

クラフトサケの魅力は、日本酒とは異なる造り方をすることでより自由な表現が可能になったこと。例えば、ビール醸造に使われるホップや、フルーツ、花や茶葉などを使った新しい“サケ”が次々に生まれている。伝統的な日本酒とは別物であるが、これまでにない様々な味わいのお酒を造れるということは、日本酒が苦手だった人にも飲んでもらえる可能性を秘めているともいえる。

フルーツを使ったクラフトサケを果実酒が好きな人に提案してみたり、複数のクラフトサケを飲み比べできるセットを提供してみたりと、飲食店で提供できる体験の幅も広がる。酒類を提供する立場であれば、この日本酒の新しい潮流を知っておいて損はない。

▼クラフトサケブリュワリー協会

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富江弘幸

ライター: 富江弘幸

ビールライター、編集者。出版社などでライター・編集者として活動し、中国留学、英字新聞社勤務などを経てビールライターに。ビアジャーナリストアカデミー講師も務める。著書に『教養としてのビール』(SBクリエイティブ)。https://localandbeer.com