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ヒット業態の仕掛け人・スパイスワークス下遠野氏が語る「成功の方程式」

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株式会社スパイスワークス代表取締役の下遠野亘氏

『肉寿司』などのヒット業態を数多く生み出し、『スシエビス』や『スシンジュク』といった「カタカナスシ」ブームの火付け役ともいわれる株式会社スパイスワークス。他社と連携したプロデュースの実績も多く、近年は、「国際通りのれん街」や「浅草横町」など地域の活性化に繋がる飲食商業施設も手掛ける。

建築士でもある代表取締役・下遠野亘氏は、こうした実績が評価され2022年度には外食アワードも受賞。関わる食の案件は年間200件以上とも言われる下遠野氏に、店づくりのマイルール、そして今後の展開について聞いた。

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成功の方程式は「素材×文化×調理法」。3つの掛け算で店を作る

まずは、外食アワード受賞のきっかけともなった「カタカナスシ」について。同社では、2008年に『肉寿司』ブランドを立ち上げ、2017年には回転ずしの大手「スシロー」グループが手掛けるすし居酒屋『鮨・酒・肴 杉玉』をプロデュース。そして2021年には『スシンジュク』をオープンするなど、数々の寿司業態を手掛けてきたが、いずれも王道の寿司店とは異色な店づくりで成功している。

━━「カタカナスシ」をはじめた経緯は、『肉寿司』や『杉玉』に端を発するのでしょうか?

下遠野氏 じつは僕の実家は、江戸後期から続く老舗の寿司屋だったんです。なので、寿司屋だけはやるもんかと思っていたんですけど、肉寿司だったらいいかなって(笑)。寿司とか蕎麦とか天ぷらとか江戸で始まった食べ物って、お客さんの中に「こうじゃなきゃいけない」っていうイメージがあるから、難しいんです。

事務所に飾られた古い地図は、下遠野氏の実家の寿司店のもの

━━具体的には、どのように店づくりを進めていったのですか?

下遠野氏 基本的に僕らは、「素材」「文化」「調理法」の3つの掛け算で店づくりをしています。たとえば『肉寿司』の場合は、寿司の「文化」はそのままに、素材を魚から肉に変えただけ。一方で「カタカナスシ」の場合は、「文化」は「寿司」のままだし、「素材」も魚が中心。そういう時には、ニュアンスを細かく表現していくやり方がいいと思っていて、文化を細分化したり、素材を深堀りしたり。3つの要素は変わらないんですけど、それぞれに強弱をつけて、「スタイルを作っていく」のです。このやり方なら、誰かの真似をせずとも、無限に新しい店を作っていけます。

カフェのような空間で“ツマんで呑めるスシ呑み屋”がコンセプトの『ストリーム高架下 スシブヤ』(画像提供:スパイスワークス)

━━「カタカナスシ」では、どんな点を重視して店づくりを行いましたか?

下遠野氏 カタカナの「スシ」に、ちょっとこじゃれている、かっこいいイメージをつけたいと考えました。それには、昨今の飲食業界の人手不足も関係しています。都心部の飲食店の人件費はもう払える金額の限界まできていて、「スターバックス」さんのような文化のリーダー的存在を除いて、星付きの高級店ですら困窮している状態。そんな中でも僕らはまだ都市型でやることを諦めていなくて、なんか可愛いから、面白いからっていう理由で、大学生のアルバイトが「カタカナスシで働いてるんだ」って隠さず言ってもらえるような店をやらないといけないなって。

実際にうちの『スシブヤ』では、店長をはじめスタッフがクラブで働いているような雰囲気でかっこいいんです。寿司店の伝統や文化は踏襲したうえで、僕らは新しく何かを加えさせてもらって、一歩変えていかないといけない。働く人だって、タトゥーが入った人は握っちゃいけないみたいな固定概念は嫌だなと思っています。

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笹木理恵

ライター: 笹木理恵

飲食業界専門誌の編集を経て独立。スイーツ・パンからフレンチ、ラーメンなどまで、食のあらゆるジャンルを担当。飲食専門誌を中心に、一般雑誌やWEB、書籍などで活動している。「All About」「Yahoo!ニュース個人」でも執筆中。 https://foodwriter-rie.com/