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春闘、『すき家』『餃子の王将』など外食チェーンで賃上げの動き。一方、雇用形態による格差も

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写真はイメージ。画像素材:PIXTA

3月15日に集中回答日を迎えた2023年の春闘は、大手企業を中心に労働組合の要求に対する満額回答が相次いでいる。3月17日の連合の発表によると、ベースアップ(以下、「ベア」)と定期昇給を合わせた賃上げ率は平均3.8%と、2013年以降で最も高い結果となった。外食産業でも賃上げの動きが見られる一方、労働組合への加入率が低い非正規雇用労働者の賃上げまでにはつながっていない現実も浮き彫りになった。

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外食産業各社で満額回答など賃上げが相次ぐ

2023年の春闘では、人手不足が深刻な外食産業の賃上げも目立つ。以下に外食大手各社の動きをピックアップする。

■王将フードサービス
『餃子の王将』の運営会社である王将フードサービスは、労働組合の要求に対して満額回答。約2,000人の正社員を対象に平均7%の賃上げを実施すると発表した。1万3,000円のベアと定期昇給をあわせて、平均2万2,000円と過去最高の引き上げ額となる。王将フードサービスのベアは2016年以来7年ぶり。

■ゼンショーホールディングス
『すき家』『なか卯』などを展開するゼンショーホールディングスは、11年連続でベアを実施。正社員1,210人に対して平均9.5%、3万2,864円の賃上げを行うとしている。同社は2030年まで賃上げを継続することを労働組合と合意しており、今回の引き上げ額は過去最高となった。

■すかいらーくホールディングス
また、『ガスト』『バーミヤン』などを展開するすかいらーくホールディングスも、労働組合の要求に満額回答。すかいらーくホールディングス、すかいらーくレストランツの正社員約4,400人に対し平均4.38%、1万4,349円の賃上げで、過去10年で最大の賃上げ額となった。

■松屋フーズホールディングス
『松屋』を展開する松屋フーズホールディングスも、正社員約1,570名に対してベースアップを実施すると発表。全体で約6.9%の賃上げを行うほか、家計支援手当5万円と持株会への特別奨励金の支給を今年も継続するとしている。

画像素材:PIXTA

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アルバイトやパートなど「非正規雇用」の賃上げは進まず。労組加入率の低さも背景に

松屋フーズホールディングスはベアを行ったことについて、「今後も社員一人ひとりが安心して働ける環境を整えると共に、昨今の物価高を鑑みて、給与等の引き上げを決定いたしました」と発表。すかいらーくホールディングスも「人財こそが当社の成長における最大の財産である」としたうえで、「このたびの春季交渉においては、従業員およびそのご家族が少しでも安心して生活いただけるよう、満額回答にて合意いたしました」と述べた。

しかし、こうした賃上げの動きも、労働者全体の約4割を占めるといわれる非正規雇用には波及しにくい。背景として、アルバイトやパートなど非正規雇用労働者の労働組合加入率の少なさ(今年2月時点で推定8.5%)があげられる。

3月17日には、『スシロー』の非正規雇用労働者による「全店舗におけるパート・アルバイトの10%以上の時給の引き上げ」を求めるストライキが実施されたが、運営会社のフード&ライフカンパニーズは「賃上げに踏み切る状況ではない」と返答するに止まっている。

今後はこうした雇用形態による交渉結果の差が課題の焦点になるだろう。

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富江弘幸

ライター: 富江弘幸

ビールライター、編集者。出版社などでライター・編集者として活動し、中国留学、英字新聞社勤務などを経てビールライターに。ビアジャーナリストアカデミー講師も務める。著書に『教養としてのビール』(SBクリエイティブ)。https://localandbeer.com