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話題のワンオペ中華『ムーダンジアン』の魅力。「名店の技×発想力」で紡ぐオリジナル料理

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『ムーダンジアン』の金岡永哲シェフ

下町風情が今も残る入船で、夕方から暖簾を掲げる中華料理店がある。『MUDANG JIAN(ムーダンジアン)』だ。カウンター6席、4人掛けのテーブルと2人掛けのテーブルが並ぶ、鰻の寝床のような細長い店を、金岡永哲シェフがワンオペで切り盛りしている。

金岡氏は高校卒業後、『赤坂璃宮』で7年修業。その後、3軒の店で働き、2021年11月、36歳で『ムーダンジアン』を開業した。故・譚彦彬シェフの元で広東料理を研鑽した料理人がなぜワンオペの店を始めたのか……。

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『赤坂璃宮』で7年、別の中華料理店で4年修業

『赤坂璃宮』に入店した当時の自分は「珍獣レベルだった」と振り返る。いったいどこが珍獣だったのか。

「12名ほど同期がいましたが、高卒で料理未経験者は僕だけ。僕以外は高校で料理を専攻していたり、調理師学校の卒業生でした」

実家は祖父が開業した『牡丹江飯店』(千葉県香取市)。食事はすべて親まかせ。包丁を握ったこともインスタントラーメンを作ったこともなかったが、厨房に立つ祖父や父の姿を見て育った金岡氏は、いつしか中華料理人を目指していた。

入店した2004年4月当時、『赤坂璃宮』は赤坂店1軒しかなかった。ひと月ホールを経験し、5月から厨房に立った。包丁の握り方や鍋の振り方はもちろん、広東語も学ばねばならなかった。料理名はすべて広東語だったからだ。

そして同年10月オープンの銀座店立ち上げに加わる。2008年2月、赤坂本店が赤坂Bizタワーへ移転するのに伴い赤坂本店へ異動。25歳になった2011年年末、『赤坂璃宮』を退職し、別の中華料理店に転職した。

紹興酒に加えてワインも提供している

客単価5,000円以下で楽しめる料理を提供

『赤坂璃宮』の名物料理といえば、赤ハタを丸ごと使う「清蒸鮮魚」を真っ先に思い浮かべる。皿にのせた赤ハタをセイロで蒸した後、高温に熱した油を注ぎ、仕上げに合わせ調味料をかけた料理だ。

「うちの客単価は5,000円以下。清蒸鮮魚をメニューに掲げる日もありますが、高級魚の赤ハタは使えません」

『ムーダンジアン』流清蒸鮮魚

『ムーダンジアン』の清蒸鮮魚は、白身魚の切り身と野菜を小さなセイロにのせて蒸す。熱した油をセイロに直接かけられないため、別皿に用意した香味野菜とタレに、熱した油を注ぐ。『赤坂璃宮』で覚えたレシピを変えたのは、客単価を抑えるためだけではないと金岡氏は説明する。

「魚を丸ごと一匹使った清蒸鮮魚が目の前に出てきたら誰でも早く食べたいと思いますよね。でも、うちは酒を飲みながらゆっくり料理を召し上がってほしいと思っています。タレを直接かけて出すと清蒸鮮魚がしょっぱくなる。そのためタレを別皿で用意させていただきます」

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中島茂信

ライター: 中島茂信

CM制作会社を経てライターに。主な著書に『平翠軒のうまいもの帳』『101本の万年筆』『瞳さんと』『一流シェフの味を10分で作る!男の料理』『自家菜園のあるレストラン』。『笠原将弘のおやつまみ』の企画編集を担当。「dancyu web」や「ヒトサラ」、「macaroni」などで執筆中。