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飲食店を支えた「雇用調整助成金」コロナ特例、経過措置も終了へ。今後注目の人材系の助成金は?

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雇用調整助成金(新型コロナウイルス感染症の影響に伴う特例)の経過措置が2023年3月31日で終了となる。2023年4月以降は、通常制度の支給要件を満たせば利用可能。また、厚生労働省は4月3日より「雇用関係助成金ポータル」をスタートさせる予定で、これによって電子申請できる雇用関係助成金の範囲が拡大する。今回は、飲食店でも利用できる助成金についても紹介する。

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雇用調整助成金(雇調金)は通常制度へ。支給要件の変更も

雇用調整助成金とは、従業員に支払う休業手当等の一部を助成する制度。経済上の理由により事業活動の縮小を余儀なくされた事業主が利用できる。助成を受けるには、直近3か月の売上が前年同期と比べて10%以上減少するなど、さまざまな要件を満たす必要がある。

新型コロナウイルス感染症拡大以降は、特例として、最近1か月間の売上高または生産量などが前年同月比で10%以上減少しているといった要件になっていた。この特例は2022年11月30日までで終了。経過措置が2023年3月31日までとなっており、2023年4月からは通常制度に戻ることになる。雇用調整助成金が通常制度に戻ると、下記のような要件になるため注意したい。

1.、直近3か月の売上などが前年同期と比較して10%以上減少していること。比較可能な前年同期がない場合は助成対象とならない。
2.、直近3か月の労働者数の平均が、前年同期に比べ5%を超えかつ6名以上(中小企業事業主の場合は10%を超えかつ4名以上)増加していないこと。
3.、コロナ特例を利用した事業所が通常制度を申請する場合、最後の休業から1年以上経過していること。

そのほか、一部の労働者を対象とした短時間休業も助成対象となる。また、6月30日までは計画届の提出が不要となり、残業相殺も行われない。

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4月から「雇用関係助成金ポータル」がスタート。電子申請できる助成金の範囲拡大

また、厚生労働省は2023年4月から「雇用関係助成金ポータル」をスタートさせ、4月3日から受付が開始される。これによって電子申請できる雇用関係助成金の範囲が拡大され、助成金の受付から通知まで雇用関係助成金ポータル上で行うことができるため、利便性の向上が期待される。なお、利用するには「GビズID」の申請・取得が必要になる。申請から取得までは日数がかかるため、早めに申請しておきたい。

雇用関係助成金ポータルで電子申請できる助成金は、再就職支援、転職・再就職拡大支援、雇入れ、雇用環境整備、仕事と家庭の両立支援、人材開発に関わるもので、電子申請の開始時期は、下記のとおり助成金によって4月からと6月からに分かれる。

■2023年4月から電子申請開始となる助成金
・キャリアアップ助成金 正社員化コース
・トライアル雇用助成金 一般トライアルコース

■2023年6月から電子申請開始となる助成金
・労働移動支援助成金
・中途採用等支援助成金
・トライアル雇用助成金(一般トライアルコース以外)
・地域雇用開発助成金
・人材確保等支援助成金
・通年雇用助成金
・キャリアアップ助成金(正社員化コース以外)
・両立支援等助成金
・人材開発支援助成金

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今後、飲食店が注目すべき助成金は?

飲食店が注目すべき助成金として、特に次の3つをピックアップして紹介する。

■キャリアアップ助成金
キャリアアップ助成金とは、アルバイトなど非正規雇用の労働者を正社員化や、処遇改善の取り組みを実施した事業主に対して助成されるもの。例えばアルバイトを正社員化すると1人あたり57万円の助成を受けられる。また、アルバイトの基本給の賃金規定を3%以上5%未満で増額改定し、昇給した場合に1人あたり5万円が助成されるなど、処遇改善支援に関するコースがある。

■人材確保等支援助成金
人材確保等支援助成金は、人材の確保・定着を目的とし、労働環境の向上を図る事業主などに対して助成されるもの。雇用管理改善で離職率低下に取り組み、目標達成した場合に57万円を助成する雇用管理制度助成コースをはじめ9つのコースがある。例えば、就業規則などの多言語化をするといった外国人労働者に対しての労働環境を整備することで、経費の2分の1(上限57万円)を助成する外国人労働者就労環境整備助成コースなど。

■トライアル雇用助成金
トライアル雇用助成金とは、特定の要件を満たした求職者に対して原則3か月のトライアル雇用を行った事業主に助成されるもの。業種経験がなくても、トライアル雇用期間中に適正を見極め、トライアル雇用期間終了後に採用するかどうかを判断できるため、ミスマッチの防止にもなる。受給要件を満たせば、1人あたり最大4万円が支給される一般トライアルコースのほか、障害者トライアルコースなどがある。

このほかにも、飲食店の状況によって利用できる助成金がある。新型コロナウイルス感染症の5類への移行を控え、客足も戻りつつあるが、飲食店の雇用に関しての悩みは、今後も課題として残るだろう。雇用に関する助成金は常に把握し、適切に利用することで事業を継続させていってほしい。

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富江弘幸

ライター: 富江弘幸

ビールライター、編集者。出版社などでライター・編集者として活動し、中国留学、英字新聞社勤務などを経てビールライターに。ビアジャーナリストアカデミー講師も務める。著書に『教養としてのビール』(SBクリエイティブ)。https://localandbeer.com