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坪月商100万円超。渋谷『立食 型破離』が実践する“高待遇×脱属人化×正社員オンリー”の組織づくり

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1992年、高知県の割烹店で生まれた正木勇貴氏。高校卒業後、地元の有名料亭や六本木ヒルズの『焼きとり 八兵衛』などで修業。『立呑み晩杯屋』などを経て独立し、常識を覆す繁盛店を次々と生み出している

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飲食業界で長年の課題とされる「低賃金」と「属人化」。この二つの壁を同時に打ち破り、急成長を遂げる企業がある。創業からわずか3年半で3店舗を展開し、各店で「坪月商100万円超」という驚異的な数値を叩き出す。展開するのはすべて「立ち飲み業態」。一般的に低単価・薄利多売のイメージが強い業態だが、同社は客単価4,000円前後を確保し、営業利益率は40%を超えることもあるという。

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この高収益体質を背景に、雇用形態はアルバイトなしの「全・正社員」。直近では「求人飲食店ドットコム」を活用しながら、中途採用の初任給は「月給50万円スタート」という、飲食業界の常識を覆す好待遇を実現している。組織づくりの秘訣を、株式会社シゲキがほしい代表取締役の正木勇貴氏に聞いた。

「月給50万円」を可能にする、全・正社員オペレーションの勝算

坪月商100万円以上の売上を記録する『立食 型破離』。連日、感度の高い大人たちで賑わうこの店には、アルバイトスタッフは1人もいない。全員が正社員だ。一般的に、立ち飲み店などの小規模店舗では、人件費を抑えるためにアルバイトを主力とすることが多い。しかし、正木氏の考えは逆である。

「アルバイトの方にマニュアル通りのおすすめを言わせるのと、自分で仕込みから関わった正社員が自分の言葉で料理を勧めるのとでは、お客さまへの伝わり方がまったく違います。小箱の立ち飲みだからこそ、料理人の『気持ち』が乗った接客が、客単価やリピート率に直結しますから」

正社員のみで運営することには、コスト以上のメリットがあるという。その大前提にあるのが、一般的な立ち飲み業態とは一線を画す料理のクオリティだ。客単価を押し上げることはもちろん、家賃の安い空中階ながらお客を集めることができるのも料理のおいしさがあってこそ。家賃比率を売上の4~5%に抑えられているため、その分、利益をスタッフに還元することも可能だ。月給50万円スタートという破格の待遇は、こうした緻密な計算の上に成り立つ。

職人技を「ミールキット化」。徹底的な数値化が生んだスピード革命

『型破離』が坪月商100万円超を達成できる最大の要因は、正木氏が「脱属人化」のために構築した独自のオペレーションにある。これまでの店舗、『立呑み 鉄砲玉』や『立呑み中華 起率礼』では、正木氏が自ら陣頭指揮を取り、腕の良い料理人を育て上げてきた。しかし、多店舗展開を見据えたとき、職人の腕に依存するモデルには限界がある。そこで正木氏が導入したのが、徹底的な「ポーション分け」と「ミールキット化」だ。

「誰が厨房に立っても一定のクオリティとスピードを担保できる仕組み」と語るその手法は、仕込みの段階でほぼ料理を完成させてしまうというもの。例えば、中華料理の華である炒飯。通常ならオーダーごとに一から鍋を振るうが、ここでは「卵炒飯」の状態まであらかじめ仕込みを済ませ、1人前ずつポーション(小分け)にしている。

仕込み段階で7〜8割まで完成させている炒飯。ジャスミンライスを使用してパラパラ感をアップさせている

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オーダーが入れば、小分けしていた自家製調味料と合わせて炒めるだけ。提供までの時間はわずか3分程度に短縮される。

「自家製ちりめん豆板醤の炒飯」(990円)。圧倒的な提供スピードながら、しっかりと香りが立つ。火の入り加減も絶妙

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麻婆豆腐も同様だ。仕込みの段階で手間のかかる工程は終わらせておき、営業中は小分けしていた豆腐やひき肉を混ぜて炒めるだけ。

「中華料理は片栗粉でとろみをつけたり、鍋の上で味を決めたりする工程が大切ですが、逆に言えばそれが『味ブレ』の原因にもなります。そこでディスペンサーに入れた一定比率の水溶き片栗粉を使用したり、熱を加えると粘度が出る自家製調味料などを考案。熟練の料理人の技を『ミールキット』のように再構築し、本格的な味をスピーディーに提供することが可能になりました」

厨房内はレードルに至るまで計算し尽くされ、用途に適した配置で並ぶ

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中華鍋を振った経験がなくとも、ちょっとした調理経験さえあれば複雑な味わいを再現できる仕組み。これは正木氏がかつて修業した『立呑み晩杯屋』で培った、圧倒的なスピードと効率化のノウハウを、高単価な本格中華に応用したイノベーションだった。

人気メニューの「熟成麻婆豆腐」(790円)。旨みや香りのバランスだけでなく舌触りまで洗練されている

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佐藤 潮.

ライター: 佐藤 潮.

ミシュラン三つ星店から河原で捕まえた虫の素揚げまで、15年以上いろいろなグルメ記事を制作。酒場系の本を手掛けることも多く、頑固一徹の大将に怒られた経験も豊富だ。現在、Webのディレクターや広告写真の撮影など仕事の幅が広がっているが、やはりグルメ取材が一番楽しいと感じている。