最低賃金引き上げで東京・神奈川は1000円越え。高騰する人件費に飲食店経営者の本音は

2019年9月11日

画像素材:PIXTA
先日、厚生労働省の「中央最低賃金審議会」が、全国の最低賃金の目安を27円引き上げることを発表した。これにより最低賃金(時給)が東京で1013円、神奈川で1011円と、全国で初めて1000円を超えることになる。2019年10月から導入される予定だが、増税のタイミングとも重なり、悩む経営者も少なくないはず。そこで「飲食店リサーチ」では、最低賃金の引上げなど、飲食店の人件費にまつわるアンケートを実施。飲食店経営者の本音や上がる人件費への対策をまとめた。

■調査概要
調査対象:飲食店.COM会員(飲食店経営者・運営者)
回答数:377名
調査期間: 2019年8月20日~2019年8月28日
調査方法:インターネット調査
アンケート結果:「飲食店の人件費」に関するアンケート調査

■回答者について
回答者のうち67.4%が1店舗のみを運営している。また、東京にある飲食店の割合は56.2%(首都圏の飲食店の割合は74.2%)となっており、こうした背景が結果に影響していると推測されます。

飲食店の人件費率は?「売り上げの30%」に収まる店が6割


まずは、現状のアルバイトスタッフの時給についてみてみよう。22時以前の勤務時間に対して、アルバイトスタッフの平均時給を調査した結果、最も多いのが「1001~1100円」で38.7%という結果に。その次に多いのが「901~1000円」の27.6%で、ここには2019年9月現在の東京都の最低賃金額985円が含まれる。

それでは売り上げに対する人件費の割合、いわゆる人件費率はどうだろう。「飲食店の人件費は売り上げの30%が目安」と聞くことも多いが、その目安に収まっている店はどれくらいだろうか。

アンケート結果によると、「20%以下」が24.1%、「21~25%」が16.4%、「26~30%」が19.4%。そのため目安とされる「売り上げの30%」に収まる店が6割ほどとなっている。もちろん、人件費率がほかより高くても、別の項目でバランスを取れていれば経営に問題ないため、一概に「30%」に収まれば安心というわけではない。しかし、この結果から「人件費を売り上げの30%」以下に収めようと意識している人が多いことがわかる。

最低賃金の改定に合わせ、給与の値上げをする飲食店は45.4%も本音は?


東京、神奈川では時給が1000円を超えることとなった最低賃金。この改定に合わせて、給与の賃上げを検討している飲食店は、45.4%という結果になった。中には「正直賃上げは辛いです。人材確保するだけでも大変なのに 」(神奈川県/専門料理)「福利厚生も考えると、人件費の負担が大きくなり過ぎです。中小企業では賃金の値上げをしたくでもできない状況にあり、気持ちと現実のギャップが大きいです」 (神奈川県/中華)と、苦しい本音も。

さらに、人件費に対する考え方を尋ねたところ、「投資」と考える店は28.9%に対し、「費用」と考える店は66%と2倍以上。「自身の育て方で大きな売り上げを作ってくれる可能性があるため、投資と考えてほかよりは少し高めに払っている」(兵庫県/居酒屋・ダイニングバー)、「店の運営はどれだけ優秀な人材を育てるかにあると考え、投資と位置付けています」(兵庫県/フランス料理)と、考えるのは投資派の声。

一方、費用派からは、「人材を育てたい(投資)として考えているが、実際のところ育ちきる前に辞めてしまうケースが多いため、実質は“必要経費”になってしまっている」 (愛知県/イタリア料理)、「この業界では店舗の移動によるスキルアップもあるので定着は難しく、投資とは考えづらい。必要な費用と考えている」(東京都/フランス料理)という声が。「投資」としたくても、そうできない現状があるようだ。

高騰する人件費に、飲食店が行う工夫や対策は?


今後も上がり続けることが予想される最低賃金。人件費率が大きくなり過ぎて、悩む飲食店経営者もいるのではないだろうか。そこで最後に、どんな工夫や対策で人件費をコントロールしているのかを聞いてみた。

■労働時間を見直し、残業代を抑える
・月間の総労働時間を規定内にコントロールしている。ブラックや超過勤務にならないようにする (東京都/居酒屋・ダイニングバー)
・22時前には、できるだけアルバイトを退勤させている(東京都/居酒屋・ダイニングバー)
・お客様が少ない時間帯は、働き方改革を含め営業時間の見直しを考えている。無駄な人員配置の時間が多いような気がするので(埼玉県/和食)

■インセンティブやボーナスを取り入れる
・売上が季節によって如実に変化するので、単純に時給アップするのではなく、ノルマではないが、“平均して通常このくらいの売上はある”という数値を超えたら大入手当。下回っても罰則はなしで、トータルで見ると賃金を上げている(東京都/バー)
・インセンティブを必ずつけている。やる気がアップするから(東京都/和食)

■業務の効率化をはかり、少数精鋭で勝負
・アルバイトでも良いサービスができるようにマニュアルを用意する (東京都/居酒屋・ダイニングバー)
・ハンディを導入し、今後、卓上タブレットを検討している。従業員には、AIにできないような“頭を使って動く、接客する”ことを助言している (東京都/鉄板焼き・お好み焼)
・一定の売り上げを少ない人数で回せたときは1時間から2時間分のボーナスをあげている。ゲーム感覚で士気もあがるし、売り上げを明確に還元できるので、これは投資だと思っている(東京都/焼肉)

店の利益に大きくかかわる人件費。一方、あまりに出し渋ればスタッフの士気も下がってしまうため、判断に悩む店主も少なくないだろう。「人件費は30%」はあくまで目安と考え、収支全体のバランスを見ることも大切だ。ぜひ他店の行う工夫や対策を参考に、自店にとって最適な額を見つけてほしい。また改めて、働きやすい環境について考えてみてはいかがだろう。マイナスにだけ目を向けず、チャンスと捉え、従業員の士気向上に向けて動きだそう。

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