飲食店の利用率は18時以降減少。緊急事態宣言解除後も団体客は依然少なく

2020年8月6日

画像素材:PIXTA
7月以降、新型コロナの感染者数が全国的に増加している。これを受けて東京都では、8月3日~31日までの期間、酒類を提供する飲食店およびカラオケ店に対し、営業時間を朝5時~夜10時までに短縮するよう要請した。飲食店への短縮営業要請は、これで2度目となる。

一度目は、今年4月に出された緊急事態宣言の後だった。5月25日に緊急事態宣言が解除されて以降、東京都は飲食店への休業や短縮営業要請を3段階で緩和したが、6月19日よりすべての制限を解除。飲食店は一時、時間制限を受けることなく、営業を行なうことが可能になった。

そこで今回の「飲食店リサーチ」では、再び要請が出される前の7月20~21日の期間、飲食店経営者や運営者を対象にアンケートを実施。「ウィズコロナ」の意識とともに「新しい生活様式」が提唱される中、経営状況は緊急事態宣言が解除される前と後でどう変化したのか調査した。今回はその結果をお届けする。

■調査概要
調査対象:飲食店.COM会員(飲食店経営者・運営者)
回答数:532名
調査期間: 2020年7月20日~2020年7月21日
調査方法:インターネット調査
アンケート結果:「新型コロナウイルスによる飲食店の営業時間制限解除後の状況」に関するアンケート調査

■回答者について
回答者のうち68.8%が1店舗のみを運営。また、回答者のうち東京にある飲食店の割合は60.9%(首都圏の飲食店の割合は74.6%)となっており、こうした背景が結果に影響していると推測される。

飲食店への短時間営業制限解除後も、約4割は慎重な姿勢


まず、現在(7月20日~21日の調査時)の営業状態について尋ねたところ、最も多かったのは「通常通りの営業時間で営業(52.6%)」という回答、次いで「営業時間を短縮、または調節して営業(42.3%)」と続く。時間制限が解除されていたとはいえ、約4割は慎重な営業を行なっていたようだ。

また、「テイクアウト・デリバリー販売を継続中」という声は26.3%となり、緊急事態宣言中に引き続いて集客手段のひとつになっていることが分かった。

一方、「閉業を検討している(3.9%)」、「すでに閉業した(0.9%)」と回答した店舗もあり、5%弱の店舗が閉業に追い込まれていることが明らかになった。

次に、2020年6月の売上を昨年同月の売上と比較してもらった。その結果「前年同月より30%減った(19%)」という回答が最も多く、次いで「50%減った(17.3%)」、「70%以上減った(14.7%)」、「40%減った(12.8%)」、「20%減った(10.9%)」、「60%減った(10.3%)」と続く。50%以上売上が減ったという回答を選択した方は約4割だ。

緊急事態宣言中に実施したアンケート(4月の昨年対比)では「90%以上減った(28.3%)」が最多となり、84.8%の店舗が「半分以上減った」と回答したことと比較すると、著しい減少の時期は脱しつつあることが分かる。

18時以降の飲食店利用が減少傾向、団体客も少なく


緊急事態宣言の発令中は、東京都をはじめとした各自治体が飲食店に対して営業時間の短縮を要請した。これによって東京都では、夜20時までに閉店する店舗が増加。その後、緊急事態宣言の解除から3つの緩和ステップを経て、一時、すべての制限が解かれることとなった。

この一連の事態を経て、客の利用時間に変化があったかどうか尋ねたところ、最多となったのは「ディナー時間帯(18時頃~22時頃)の利用が減った(39.7%)」との回答。続いて「22時~24時以降の利用が減った(29.9%)」、「ランチタイム時間帯(11時頃~14時頃)の利用が減った(21.1%)」となり、全体的に飲食店利用者が減っている中でも、特に18時以降の利用が減少傾向にあることが分かった。

さらに、利用客層の変化についても調査したところ、最も多かった回答は「団体客が少なくなった(52.6%)」、次いで「ビジネスパーソン客が少なくなった(31.2%)」という回答が続いた。緊急事態宣言が解かれたとはいえ、やはり"密"が避けられない大人数でのイベントや会合などを自粛する動きは変わっていないようだ。また、ビジネスパーソン客の姿が減っていることから、引き続き在宅ワークを推奨する会社が多いことも予想される。一方で、「2~4人の少人数客が増えた(30.1%)」という回答も見られた。

新メニューや感染予防対策のアピールで集客を狙いつつ、コストの見直しも


こうした中、集客面や店内対応などで工夫していることを自由回答で聞いたところ、感染予防対策に加えて、POPやクーポンの作成、SNSの積極的な活用など、さまざまな対策を行なっている様子が見えてきた。回答をいくつか抜粋して紹介する。

・SNSや顧客メールで来店を促した。店内では席配置を広く取り、衛生面を強化している。(東京都/居酒屋・ダイニングバー/6~10店舗)
・メニュー、営業日、時間、感染防止対策について伝えるためのPOPを充実させて、アピールすることが増えました。 (神奈川県/カフェ/1店舗)
・店が小さく客席の減少はできないので、マスク対応は勿論、除菌スプレーや除菌シートなど置いている。SNS等で新メニューなどの発信。クーポンを作るか検討中。(大阪府/洋食/1店舗)
・お客様への還元キャンペーンの実施。感染対策への取り組みを随時発表。(東京都/カラオケ・パブ・スナック/1店舗)
・普段取り扱わない高級食材をイレギュラーメニューとして採用して告知しています。(宮崎県/バー/1店舗)

また、売上や利益を確保するために行った対策で効果が得られたこと、工夫したことについて聞いたところ、人件費をはじめとする固定費を削減するほか、食材コストの見直しを行う、テイクアウトやデリバリーによる販売をさらに強化するといった回答が寄せられた。こちらも何点か紹介する。

・メニューの見直しで工程を簡単にし、人件費がかからないようにした。あとは家賃交渉。(愛知県/その他/3~5店舗)
・アルバイトおよび厨房要員のシフト調整、バックヤード要員の在宅勤務による交通費の削減など。(東京都/居酒屋・ダイニングバー/1店舗)
・ウーバーイーツやペイペイピックアップを活用し、テイクアウトやデリバリーの売上獲得につなげた。人件費削減の為、従業員のシフト時間を大幅に見直した。(愛知県/和食/1店舗)
・余剰の仕入れをしない。新規商品を仕入れない。御通しを既製品に変えた。(東京都/バー/1店舗)
・緊急事態宣言解除後の営業方針として、原価率を50%前後に。常連さんは勿論、新規のお客様に出来るだけ喜んでいただけるようにしている。(滋賀県/居酒屋・ダイニングバー/1店舗)

定着しつつある「新しい生活様式」


「ウィズコロナ」の意識が共有される昨今、飲食店では「新しい生活様式」への対応も進んでいる。そこで、具体的にどのような対策がとられているのか聞いてみたところ、「入店時のアルコール消毒を推奨する」が86.8%と最も多く、続いて「従業員のマスク着用を徹底する」が81.6%、「座席を減らして距離をじゅうぶんに保つ」が63.2%となり、基本的な対策はすでに多くの店舗で行なわれていることが分かった。また、約3割の店舗が「電子マネー・スマホ決済への対応」を進めており、現金の受け渡しによる感染リスクを下げようという意向も見えた。

再びの飲食店短縮営業要請へ。テイクアウトやデリバリー拡充を検討する店舗多数


緊急事態宣言が解除され2ヶ月が経過したが、東京都では8月3日より再び、酒類を提供する飲食店などに短時間営業要請が出されている。こうした状況がすでに十分予想できたアンケート調査時(7月20~21日)に、「自治体から飲食店への休業または営業時間短縮の要請は必要か」という調査をしたところ、「はい(34.6%)」「いいえ(36.3%)」「わからない(29.1%)」と、回答は大きく割れる結果に。

感染の拡大を防ぐうえではやむを得ないが、一方で自分たちの生活を考えると厳しい、という交錯した思いが垣間見える。

そのうえで、今後もしこうした要請が出された場合、どのような対策を講じる予定か自由回答で聞いたところ、以下のような回答が寄せられた。

・イートインは間隔をもっとあけ、なるべく店内が込み合わないように徹底し、来店の際も検温をしてもらう。テイクアウトの充実性とデリバリーによる各業者との連携を強化する。(東京都/居酒屋・ダイニングバー/1店舗)
・ウィズコロナに向けてデリバリー戦略を強化している。同時にスーパーへの弁当卸を打診中。借入も申請中。(東京都/カフェ/1店舗)
・ランチタイムのみの営業に切り替えて、最少人数で乗り切る。(東京都/アジア料理/3~5店舗) ・YouTubeチャンネルの開設。(東京都/イタリア料理/1店舗)
・もはや閉店しか道がない。自粛と補償はセットじゃないと困る。(東京都/お弁当・惣菜・デリ/6~10店舗)

やはり、テイクアウトやデリバリー、スーパーマーケットへの卸しなど、イートイン以外の販路を確立する、といった声が目立った中、「しっかりと対策を行っている店舗には、時短要請を行うべきではない」という意見も。いずれにせよ、東京都において感染防止対策徹底のアピールにつながる「感染防止徹底宣言ステッカー」の掲示は必須だ。飲食店に向けた様々な金融支援なども積極的に活用しつつ、この危機を乗り越えていきたい。

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