飲食店の約5割が“見回り調査”に協力。要請応じぬ違反店には徹底指導を求める声も

2021年6月21日

画像素材:PIXTA
2021年4月頃から様々な自治体が取り入れている「見回り調査」。飲食店の感染防止対策徹底のため、自治体職員などの調査員が実際に飲食店を訪問し、その店舗の対策状況を確認する取り組みだが、調査の実施にあたっては、飲食店から様々な意見が出ている。

そこで今回の「飲食店リサーチ」では、飲食店経営者や運営者に対し、見回り調査に関するアンケートを実施。見回り調査の実施有無や、行政に望むことなど、飲食店のリアルな声をお届けする。

■調査概要
調査対象:飲食店.COM会員(飲食店経営者・運営者)
回答数:468名
調査期間:2021年5月21日~2021年5月24日
調査方法:インターネット調査
アンケート結果:コロナ禍で推奨・要請される飲食ルールとイートインの現状に関するアンケート

■回答者について
回答者のうち70.1%が1店舗のみを運営。また、回答者のうち東京にある飲食店の割合は53%(首都圏の飲食店の割合は68.4%)となっており、こうした背景が結果に影響していると推測される。

自治体の見回り調査、飲食店からは“賛否両論”の声が


まず、2021年4月の売上について、コロナ禍前の2019年4月と比較してもらった。すると、最も多かったのが「2019年4月より70%以上減った(28.2%)」という回答。次いで、「50%減った(14.7%)」、「30%減った(10%)」が続く。全体をみると、飲食店の半数以上が、「50%以上減った」と回答しており、引き続き厳しい状況が続いている。
続いて、見回り調査の実施状況について調査。見回り調査の実施有無を聞いたところ、最多は「事前に通知はなかったが、調査を受けた」で38%。「事前に通知があり、調査を受けた(9.6%)」と合わせると、47.6%の飲食店が見回り調査に協力している。
見回り調査の実施時に、主にどのような指摘を受けたか尋ねてみると、半数以上が「特に指摘はなかった(54.7%)」と回答。一方、指摘を受けた店舗では「間隔の確保やアクリル板等の設置状況(40.8%)」、「換気の実施状況(33.2%)」、「マスクの着用状況(31.8%)」「手洗い・手指の消毒(30.0%)」などの項目で指摘を受けているようだ。
また、見回り調査の指導により、新しく購入した品や設備などがあった人に対し、その購入品に補助金や助成金を活用したかを聞いた。すると、最多は「活用していない(未申請)」という回答で53.5%。「活用していない(申請はしたが支給待ち)」と回答した人も20.9%おり、合わせると74.4%もの飲食店が補助金や助成金を活用せずに新たな購入品を用意したことが明らかとなった。なお、「活用した」と回答した飲食店は、25.6%だった。

さらに、飲食店への見回り調査は、感染防止対策を強化するうえで、効果的な手段か尋ねたところ、飲食店によって意見が分かれる形となった。最も多かったのは「まあまあ効果的だと思う(31.4%)」という回答。「とても効果的だと思う(10.3%)」と合わせると、41.7%が「効果的だと思う」と回答している。一方で、51.7%もの人が「効果的だと思わない」と考えていることも判明した。
次に、見回り調査の実施について、自治体や調査員に望むことを自由回答形式で尋ねたところ、「忙しい時の調査は避けてほしい」「事前連絡がほしい」といった声があがる一方で、違反店を取り締まるという観点から「抜き打ちでの調査」を望む声もみられた。さらに、簡易的なチェックだけではなく、店舗の状況に合わせた具体的な指導やアドバイスを求める声もあり、徹底した感染対策のもとで営業を行いたいという飲食店の考えがうかがえる。

■調査に来る時間帯に配慮してほしい

・ランチの忙しい時間帯は避けてほしい(東京都/居酒屋・ダイニングバー/6~10店舗)

・忙しい時間帯に来られても困ります。事前に連絡がほしかったです(東京都/カフェ/1店舗)

■必要な備品や設備を支給してほしい

・設備に不足があれば支給してほしい(兵庫県/焼肉/2店舗)

・必要な設備は支給してほしい(東京都/居酒屋・ダイニングバー/1店舗)

■具体的な指導・アドバイスをしてほしい

・換気方法などは各店舗の現状を踏まえたうえで、不備があった場合の対処方法を具体的に指導してほしい。また、対処したかの確認もしてほしい(東京都/その他/1店舗)

・おざなりでの点検ではなく、注意喚起や指導点を明確に伝えてほしいと思う(東京都/洋食/51~100店舗)

・マニュアルどおりの形だけのチェックで見回りをしている感じがありました。アドバイスなどもほしいと思いました(愛知県/カラオケ・パブ・スナック/2店舗)

■抜き打ちで実施してほしい

・定期的に抜き打ちの見回りが実施されないのであれば、効果は薄いと思う(東京都/フランス料理/1店舗)

・まじめにやっているところは売上もほとんどなく、いい加減なところがここぞという感じで売上を伸ばしているのは納得が行かない。裏情報をとって、抜き打ちで行くべき(東京都/居酒屋・ダイニングバー/1店舗)

■違反店の取り締まりを徹底してほしい

・形だけの見回りはあまり意味がないと思います。20時以降に見回りをし、時短営業に応じていない店、アルコールを提供している店を取り締まるべき(大阪府/アジア料理/2店舗)

・営業時間やアルコール提供禁止を守ってない店をもっと指導してほしい(東京都/居酒屋・ダイニングバー/1店舗)

■見回り調査以外に税金を使ってほしい

・税金を使うことなので、意味のある動きをしてほしい。できればこのような見回りではなく、有効な税金の使い方をしてほしいですが(大阪府/イタリア料理/1店舗)

・調査員にお金を出すなら、本当に困っている飲食店に早く給付金を出してほしい(京都府/中華/3~5店舗)

全国導入が進む飲食店の第三者認証制度、31%が取得の意向


2021年5月以降全国の自治体において、飲食店の感染防止対策を自治体が認証する「第三者認証制度」が導入されつつある。「山梨モデル」などが話題だが、実際のところ飲食店はこうした認証制度についてどう感じているのだろうか。飲食店に第三者認証の取得意向を尋ねたところ、52.6%が「わからない」と回答。「ある」と回答したのは31%で、「ない」と回答した人は16.5%という結果になった。

「ある」と回答した人は、認証制度の取得がお客様の安心感につながるなど、何らかのメリットを感じているが、「ない」と回答した人は、その効果のほどに疑問を感じているようだ。それぞれの回答の理由は以下の通り。

▼認証取得の意向が「ある」

■お客様の安心につながる

・お客様に安全安心を少しでも感じて、認知してもらうため(大阪府/バー/1店舗)

・特にお客様が感染症対策を行わないお店への訪問を敬遠する傾向があるので、自店ではお客様に安心を感じていただけるような対策を施したい(埼玉県/バー/1店舗)

■店を選ぶ基準の一つになる

・一般消費者には何も基準がないので第三者の評価は影響力があると思われるので(埼玉県/カフェ/1店舗)

・お客様に選んでもらえる客観的な指標になるかも知れない(東京都/カフェ/1店舗)

■違反店との差別化を図れる

・ちゃんと対策していることを証明されたら、違反している店との差別化が図れる(神奈川県/カフェ/1店舗)

・ちゃんと感染症の対策をしている店舗が、損をしないため(大阪府/ラーメン/1店舗)

▼認証取得の意向が「ない」

■取得により得られる効果が不明

・効果があると思わないから(東京都/その他/1店舗)

・求められる対策が、本当に効果があるのか分からない。科学的根拠を出して欲しい(三重県/その他/1店舗)

■山梨と自店周辺エリアとでは状況が異なる

・山梨と都内では状況が違うから、飲食店がコロナの感染経路とは考えにくい(東京都/居酒屋・ダイニングバー/1店舗)

・山梨と東京では、飲食店の数、店舗の広さ、家賃も含めて全く違うから、同じ事は成立しないと思う(東京都/そば・うどん/2店舗)

■基準を満たすのが難しい、店舗に合わせた基準にするべき

・店の規模が小さく導入が難しい(東京都/バー/1店舗)

・店のスタイルなどによって感染対策の程度や基準は異なるべきだと思うので、画一的な基準には反対(神奈川県/イタリア料理/2店舗)

第三者認証制度については、「時短営業を緩和してほしい」など、認証取得に対する何らかのインセンティブを求める回答もみられた。実際にインセンティブの検討をしている自治体もあるため、今後も動向をチェックしていく必要がありそうだ。

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