41%の飲食店が東京オリンピック開催に「賛成」。一方で新型コロナ感染拡大への不安も

2021年7月30日

画像素材:PIXTA
新型コロナウイルスの感染拡大が止まらない中、7月23日に開幕した東京オリンピック。主な開催地である東京都には、7月12日から緊急事態宣言が発令されており、7月末の現在も1日の新規感染者数が過去最高の2,500人を超えるなど、収束のめどは立っていない。

そこで今回の「飲食店リサーチ」では、飲食店経営者や運営者に対し、異例の状況下で開催される東京オリンピックへの様々な意見や懸念について調査するため、アンケートを実施。飲食店のリアルな声をお届けする。なお、本アンケートの実施時(6月29日~6月30日)は、東京都、大阪府、北海道、愛知県、京都府、兵庫県、福岡県の7都道府県にまん延防止等重点措置が適用されていた期間であり、制限付きで酒類提供の停止が解除されていたタイミングとなる。また当時、東京オリンピック・パラリンピック会場における観客の動員に関しては未定だったこともあり、現在(7月末)の状況とは異なることに留意したい。

<本調査について>

■調査概要

調査対象:飲食店.COM会員(飲食店経営者・運営者)
回答数:495名
調査期間:2021年6月29日~2021年6月30日
調査方法:インターネット調査
アンケート結果:「東京五輪」開催についての飲食店の意見・意向に関するアンケート

■回答者について

回答者のうち70.7%が1店舗のみを運営。また、回答者のうち東京にある飲食店の割合は54.3%(首都圏の飲食店の割合は72.4%)となっており、こうした背景が結果に影響していると推測される。

<調査結果について>

東京五輪開催について「中止すべき」が最多も、賛否としては大きく割れる結果に


最初に、2021年5月の経営状況について、コロナによる影響を受ける前の2019年同月と比較してもらったところ、最多は「2019年5月より70%以上減った」との回答で、37.8%。次いで、「50%減った(10.5%)」、「60%減った(10.3%)」と続いた。この結果から、飲食店の58.6%が「2019年同月より50%以上減った」と回答したことがわかる。

4月の売上について同様の調査を行った際は、「2019年同月より50%以上減った」との回答が52.1%だったことから、飲食店への長引く時短営業や酒類提供の停止要請などが、深刻な売上の低迷をもたらしていることは明らかだ。
こうした中、東京オリンピック・パラリンピックが開催されることについて、どう感じているか尋ねたところ、「中止するべき」との回答が29.3%と最多に。「延期するべき(17%)」と合わせると、46.3%の飲食店が現時点での開催に消極的だったことがわかる。しかし、続く「賛成(22.8%)」、「無観客での開催なら賛成(18.4%)」を合わせると、41.2%は概ね賛成の意思を示しており、単純な賛否としては大きく割れる結果となった。
※本アンケート実施時点(6月29日~6月30日)では、東京オリンピック・パラリンピック会場の観客動員に関して未定の状況だった また、開催期間中の営業意向を複数回答で聞いたところ、最も多かったのは「通常通り営業する(77.4%)」との回答。次いで「自主的に時短営業を行う(13.7%)」、「テイクアウト販売、デリバリーを強化して営業する(7.1%)」と続いた。また、通常通り営業するとしながらも、「アルコールの提供は自粛する」との回答もあり、少しでも売上につなげようという意気込みとともに、感染拡大への高まる懸念も垣間見えた。
※本アンケート実施後の7月12日から、一部地域に緊急事態宣言が発令された(8月22日まで)。これにより7月末現在は、各地の飲食店に酒類提供の停止などが要請されている
続いて、本アンケートの回答者本人に、新型コロナウイルスの1回目のワクチンを接種したか聞くと、「まだ接種していないが、今後接種する意向(61%)」との回答が最も多く寄せられた。続く回答は、「接種するか検討中(16.4%)」、「接種する意向はない(13.5%)」となり、ワクチンの接種に一定の懸念を抱いている人が少なからずいることも見えてきた。

「五輪会場内は酒の販売OKなのに、なぜ飲食店はダメ?」要請との矛盾に憤る声も


次に、東京オリンピック・パラリンピックの開催にあたり、店舗の営業を行ううえで最も懸念されるのはどのようなことか尋ねたところ、感染の再拡大による様々な影響を不安視する声を中心に、以下のような回答が寄せられた。

<回答抜粋>

■人流増加、感染者増加による緊急事態宣言の再発令と、酒類の提供停止要請

・開催することで感染者が増え、飲食店に対して酒類提供中止などを要請される懸念がある(東京都/その他/1店舗)
・感染状況の悪化による、緊急事態宣言の再発令。とにかく、アルコール販売停止だけは勘弁していただきたい(東京都/フランス料理/2店舗)
※本アンケート実施後の7月12日から、一部地域に緊急事態宣言が発令された(8月22日まで)。これにより7月末現在は、各地の飲食店に酒類提供の停止などが要請されている

■客足が落ちることによる売上の減少

・感染拡大による再緊急事態宣言や、まん延防止の時短営業要請で通常営業が出来なくなれば、売上減少が懸念される(埼玉県/フランス料理/1店舗)

・オリンピックを家で観る人が多くなることで外食人口が減り、売上が減少するのでは(広島県/カフェ/6~10店舗)

■節度を守らない客が増えること

・団体客が増えそう。また、オリンピック観戦で客層のボルテージが上がった時など、お酒の提供をどうするべきか。感染対策がしっかりできるのか心配(東京都/ラーメン/1店舗)

・オリンピックのムードで開放的な振る舞いをする人が増えると、変異株ウィルスが急速に拡大するのではないか(東京都/ラーメン/1店舗)

■外国人客の増加による諸問題

・海外からのお客様が、感染防止ルールを理解できずに守らないこと(東京都/中華/1店舗)

・海外からの来訪者による新たな変異株の発生(千葉県/カフェ/1店舗)

最後に、東京オリンピック・パラリンピックについて最も言いたいことを尋ねた結果、以下のような回答が寄せられた。

<回答抜粋>
▼開催するべきではない

■中止または延期するべき

・飲食店には時短営業やアルコール提供を自粛するように要請したのに、オリパラならば安全安心で選手村や施設にはアルコールOKなどおかしい事ばかりです。今すぐオリパラは中止にすべき(埼玉県/フランス料理/1店舗)

■こうまでしてやる理由を明確に示してほしい

・開催するにあたって納得のいく理由(人命や国民の日常生活を犠牲にしてでも開催しなければならない理由)を説明してほしい(東京都/カフェ/1店舗)

■国民の安全を第一に考えてほしい

・国民の健康とオリンピック開催の意義を、今一度冷静に天秤にかけていただきたい(東京都/居酒屋・ダイニングバー/1店舗)

▼開催自体は仕方ない

■万全の感染防止対策を講じてほしい

・オリンピックで来日した人達をしっかり隔離し、外出の規制を徹底してほしい(神奈川県/カフェ/1店舗)

■開催会場は無観客の状態にするべき

・開催するのであれば、今の状況からして無観客でやるべき(東京都/フランス料理/1店舗)
※本アンケート実施時点(6月29日~6月30日)では、東京オリンピック・パラリンピック会場の観客動員に関して未定の状況だった

一方、開催にあたって一定の理解を示す声のほか、諦めの感情を示す声なども見受けられた。

・東京オリンピック・パラリンピックが決まった時は、まさか誰もこんな状況になるとは思ってなかったと思います。今できる事を全うして、無事に開催して頂けたらと思います(神奈川県/ラーメン/2店舗)

・開催ありきなので、何を言っても無駄(東京都/居酒屋・ダイニングバー/1店舗)

飲食店は今日まで長期にわたり、あらゆる要請に従ってきた。オリンピックの開催に対しては、様々な立場からの様々な思いがあるだろう。選手たちの活躍が続々と伝えられている今は、国民をはじめ、選手や関係者の安全がきちんと守られ、新型コロナウイルスの感染拡大が一日も早く収束することを祈るばかりだ。

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