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学芸大学×酒場のレインカラーはなぜ「カフェ」を開業したのか? 目指したのは働き方の多様性

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株式会社レインカラー 代表取締役・手島義朋氏(右)、取締役社長・手島まどり氏(左)

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酒場とカフェ。一見すると相容れないように思える2つの業態だが、学芸大学エリアで人気酒場を展開するレインカラーは昨年末、エッグタルトとコーヒーの店『SUNNY SIDE RAINCOLOR』をオープン。それも既存店での二毛作営業ではなく、独立した店舗での新業態だ。店を手がける手島義朋氏・まどり氏夫妻に、その真意と経営戦略を聞いた。

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エッグタルトが主役の新業態。コンセプトは「オカシ・オハナシ・オタノシミ」

「お帰りなさい、今日も学校楽しかった?」

夕刻前、賑わいを見せる学芸大学東口商店街の先で聞こえてきたのはそんな声。目をやると、エッグタルトとコーヒーのスタンド『SUNNY SIDE RAINCOLOR(サニーサイド レインカラー)』の前には、笑顔で言葉を交わす地元客が集まっていた。小窓越しにタルトが入った袋を受け取り、母親に手を引かれながら帰路に着く子どもたちの表情は実に嬉しそうだ。

『サニーサイド レインカラー』は、学芸大学エリアで人気の飲食店『大衆酒場 レインカラー』『ポップガストロノミー レインカラー』を展開する株式会社レインカラーが仕掛ける新業態。2022年12月、同社はこれまで中心としてきたアルコールを提供する業態から、日中営業を行うカフェ業態の開発に初めて乗り出した。コンセプトは「オカシ・オハナシ・オタノシミ」。既存店同様、地域に密着した親しみやすさと、“お客様をポジティブに裏切る”期待以上のアイデアやサービスを軸に、本格エッグタルトとスペシャルティコーヒーを展開する。

「小さな子どもからお年を召した方まで、誰もが日常的に手に取れて、ちょっとした手土産にもできる、長く愛されるお菓子で喜んでもらいたかった」と語るのは、代表取締役・手島義朋(てしま よしとも)氏。

店の前を通る住民たちに明るく声をかけていた手島氏

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かつて、同じく学芸大学にある名イタリアンバール『ロ・スパッツィオ』でバリスタを務めていた手島氏は、パートナーで取締役社長のまどり氏の妊娠を機に、それまで彼女が営んでいたカフェバーの場所を引き継ぎ『ワイン食堂 レインカラー』をスタート。その後、より気軽に使える『大衆酒場 レインカラー』、美味しいものを手頃な価格で味わえる『ポップガストロノミー レインカラー』を次々と展開し、一躍地域に愛される酒場へと成長させた。

『サニーサイド レインカラー』は『ワイン食堂 レインカラー』をリニューアルするかたちでオープン

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コロナ禍を機に見直した、自分と周囲のライフワークバランス

そんな軌道に乗っていた矢先、押し寄せたのが新型コロナ感染拡大によるパンデミックだった。飲食店には酒類の提供禁止などさまざまな営業制限が課されたため、大切なスタッフのために少しでも売上をつくろうと既存店でモーニング営業を開始。これがターニングポイントになったと手島氏は振り返る。

「自分たちが思っていた以上に、同世代で子どもを持つ方や近所にお住まいのご年配の方など、夜の営業では出会えなかったお客様にたくさん来ていただきました。当たり前のことですが、お酒があるかないかで、その飲食店の使われ方って大きく変わる。コロナ禍でちょうど働き方や生活の価値観が見直され始め、家庭で過ごす時間を大切にする人が増えた時期でもあったので、これから求められていくのはこういう場所なのかなと感じたんですよね。僕ら自身も店に立ちながらパパ友・ママ友と会えるのは嬉しかったですし、実際に僕も、午前中に子どもを保育園へ送る前に立ち寄ってみたらとにかく気持ちがよくて。老若男女、みんなが笑顔になれる場所っていいなって」

また、飲食店で働きたいと考える人々からは、「日中の時間帯なら働きたい」という声も驚くほど多く寄せられたそう。こうしたことも、時代や子育て世代に合った働き方のスタイルを模索するきっかけになったと話す。

当時モーニングで提供していたのは、自家製ポルケッタとブッラータチーズを添えたフレンチトーストや、ゴルゴンゾーラとはちみつムースのブリオッシュなど、同社ならではの品々

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RIN

ライター: RIN

カフェライター・エディター。街の小さな一軒からトレンドカフェ、昔ながらの喫茶店まで、カフェという場を通じて幸せを提供してくれる人の声と熱を届けるのが好き。ライフワークは"スコーンの人"(IG:@rin_125)。