世界No.1ピッツァ職人! 『イル・タンブレッロ』大坪善久氏が語る「選手権優勝の舞台裏」
2025年6月、ナポリピッツァ職人世界選手権(以下、カプート杯)STG部門で、日本人としては15年ぶりに世界一に輝いた大坪善久さん。日本橋『ピッツェリア イル・タンブレッロ』のオーナーでもある大坪さんが、熱気溢れる大会の様子を中心に、ナポリピッツァへの情熱を語る。
>>飲食店“専門”の求人サイトだから即戦力が見つかる。社員とアルバイトまとめて19,800円で掲載可!
日本橋で楽しめる本場ナポリピッツァとは?
東京メトロ小伝馬町駅から徒歩5分の裏路地。薪が積まれたファサードから、すでにナポリの風情を漂わせているのが『ピッツェリア イル・タンブレッロ』だ。2010年にオープンし、今年でちょうど15周年。これまでにミシュランガイドのビブグルマンを獲得するなど、オーナーの大坪さんは巨匠(マエストロ)と名高いナポリピッツァ職人の一人である。
ピッツァに使用するのはプーリア産のクリアトマト、シチリア産の天然海塩など、本場同様の素材ばかり。唯一、水は日本橋のものを使用しているほか、季節限定のピッツァなどには大坪さんの故郷である福島県の食材を取り入れることも多い。
23種あるグランドメニューのピッツァの中でも、代表的な一皿が「マリナーラ」。200年以上の歴史を誇る最も伝統的なナポリピッツァであり、シンプルな分だけ職人としての技量も表れる。カプート杯にて本場の審査員たちの舌を唸らせたのも、大坪さんの「マリナーラ」だった。
日本の巨匠が「マリナーラ」で勝負をした理由
2025年6月3~5日、ピッツァ発祥の地ナポリで開催された第22回カプート杯。世界中から600人以上のピッツァ職人「ピッツァイオーロ」が集結し、会場は熱気と薪の香りに包まれた。
世界大会のメインスポンサーであるカプート社は、ナポリを含めたカンパーニア州にてシェア70%を誇る製粉メーカー。なかでも食感豊かな生地に仕上がる「サッコロッソ」は、日本の「ピッツァイオーロ」たちにも愛用されているピッツァ用小麦粉である。
カプート杯には、季節の食材を活かすスタジオーネ部門や現代的なアレンジを競うコンテンポラーネア部門など多彩なカテゴリーがある。なかでもSTG(スペチャリタ トラディッショナーレ ガランティータ)部門は、「マリナーラ」または「マルゲリータ」で技量を競う大会のメインイベントだ。過去21回の優勝者はすべて「マルゲリータ」を選択したが、大坪さんは「マリナーラ」を選び、挑戦の道を突き進んだ。
「リスクは高かったけど、シンプルだからこそ挑戦したかったんです。27歳からこの道に入り、ナポリで3年修業して、日本でも20年以上経験を積みましたが『まだナポリに認められていない』というコンプレックスがあって。今回の挑戦は経験になるだろうし、ダメでも笑いものになればいいやって(笑)」
そもそも大会開催の10日前まで出場する決心は固めていなかったという大坪さん。その背中を押したのは、2010年のカプート杯STG部門優勝者の牧島昭成さん(名古屋『ピッツェリア ブラチェリア チェザリ』)だった。
「僕の師匠であるアドルフォ・マルレッタが引退することになり、当初はその表彰式に引率として参加するだけの予定でした。でも、牧島くんに『せっかくだから出てみない?』『お前ならいけるよ!』『師匠に良いとこ見せたいだろ?』などと焚きつけられたのも大きかったです(笑)」
