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坪月商193万円! 自由が丘『起率礼』料理長が明かす「回転・原価・人」の仕組み

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『起率礼』の料理長・井上史子氏。名門ホテルで培った本格中華の技術を立ち飲みならではのスピード感で発揮する

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厨房から小気味よい鍋の音が響き、注文からわずか数分で本格中華が次々とカウンターへと滑り出していく。東京・自由が丘の『立呑み中華 起率礼(きりつれい)』。名門ホテルなどで腕を磨いた料理長・井上史子氏が厨房に立つ同店は、立ち飲みというカジュアルな業態でありながら、食通を唸らせるクオリティで連日満席の賑わいを見せる。

4.4坪という空間ながら、ピーク時には最大25名が立ち飲みを楽しむ店内

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驚くべきはその収益性と効率性だ。2023年12月のオープンから3年弱、人員増強前でも月商490万円という驚異的な売上を誇っていたが、調理スタッフの増員と定休日の撤廃により、月商は850万円まで急伸。坪月商に換算すると193万円という、飲食業界でも屈指の数値を叩き出している。さらに、原価率50%を超える豪華な海鮮を取り入れながら、店舗全体の総合原価率(アルコール含む)は23〜24%に抑え込んでいるという。

手厚い三人体制による人件費を投じながらも、極めて健全なFL比率を維持する同店。客単価4,000円台、1日約70名が訪れる現場で、一体どうすればこれほどの高回転と高利益率を実現できるのか。ザ・リッツ・カールトン大阪やウェスティンホテル東京などの名門中華料理店で修業を積んだ井上氏に、「効率的オペレーション」と「仕組み化」の秘訣を聞いた。

営業前の仕込み風景。提供スピードを最大化するため、すべての食材や調味料に綿密な下ごしらえが施される

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仕事術① メニュー設計と仕込みで、ピーク時の「待たせない」をつくる

『起率礼』がこれほどの高回転を実現できる最大の要因は、徹底されたメニュー設計と仕込みの段取りにある。運営元である株式会社シゲキがほしいのオーナー・正木勇貴氏とともに組み立てたメニュー構成の鉄則は、「全体の6割を冷菜(スピードメニュー)にする」ことだ。

お客が入店してドリンクとともに頼む最初の一皿を、いかに待たせずに出せるか。それが立ち飲みの満足度と回転率を大きく左右する。しかし同店では、単なる作り置きは行わない。「作り置きしちゃうと、作りたてのときと閉店間際で、メニューによっては味が大きく変わってしまう」(井上氏)。そこで採るのが、「8〜9割まで仕込んでおき、最後の仕上げだけを直前で行う」という折衷スタイルである。

この手法は、正木氏の哲学と井上氏自身のレストラン経験を掛け合わせたものだ。姉妹店の渋谷『型破離』ではグラム単位で素材を1人前ずつポーション分けし、誰が調理しても同じ味を再現できる仕組みが徹底されている一方、『起率礼』では、あえて「ある程度の技術を持つ人でなければ作れない」設計にしている。

「こちらの店舗はベテランの料理人がそろっています。仕込みの工程さえ共有すれば現場の技術で応用が利くため、最後の仕上げを残しておくやり方が成立するんです」(井上氏)

公式Instagramの投稿より。毎日同じ画角と自然光で撮影される写真は、SNSでの集客だけでなく、調理スタッフが器や盛り付け、分量を確認するマニュアルとしても機能している

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作り置きが可能なメニューも、保存性と独自性を同時に高めるアイデアが詰まっている。わかりやすいのが、人気上昇中の「白和え(ピータン×パクチー×ザーサイ)」だ。中華の定番である「ピータン豆腐」を居酒屋向けに再構築した一品だが、ここには提供スピードを極限まで高める逆算の工夫もある。

本来のピータン豆腐は、オーダーが入るたびに豆腐を切り、具材を刻んで盛り付けるため、営業中の手数が多い。そこで同店では、あらかじめ豆腐をせいろで蒸して火を入れ、重しをかけて徹底的に脱水。芝麻醤などのタレ、ピータン、ザーサイ、パクチーを合わせ、白和えとして仕込んでおく。

「豆腐は水分から劣化していくんです。仕込み段階でしっかり脱水して和えておけば、保存性が高まります。2日で売り切る回転にしているため、鮮度も落ちません。オーダーが入れば、グラムを量って皿に盛るだけで提供できますよ」(井上氏)

日持ちと提供スピードを両立した「白和え(ピータン×パクチー×ザーサイ)」(590円)。山盛りにすることで客の満足度も高めている

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温菜のオペレーションも、同様に細かくルール化されている。厨房内の熱源が限られる中、左の炒め鍋は「香港焼きそば」(790円)「熟成麻婆豆腐」(890円)「ハムユイ炒飯」(980円)用、右の鍋は「海老のマヨネーズ和え(1皿3尾)」(890円)専用と役割を完全に固定。炒飯の米はあらかじめ120グラムずつ計量してラップに包み、調味料もレードルやスプーンの規定量を決めることで、調理中の迷いはゼロだ。事前の綿密な仕込みと現場での最小工数が合致することで、厨房の稼働が必要な炒め物でも高回転での提供を可能としている。

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佐藤 潮.

ライター: 佐藤 潮.

ミシュラン三つ星店から河原で捕まえた虫の素揚げまで、15年以上いろいろなグルメ記事を制作。酒場系の本を手掛けることも多く、頑固一徹の大将に怒られた経験も豊富だ。現在、Webのディレクターや広告写真の撮影など仕事の幅が広がっているが、やはりグルメ取材が一番楽しいと感じている。