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学芸大学の人気酒場『びゃく』が明かす、グルメ激戦区で勝ち抜く「3つの秘訣」

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いくらとズワイ蟹の土鍋めし。秋田県産あきたこまちにこだわったおいしい土鍋めしは『びゃく』の名物になっている

2つ目の秘訣は「付加価値をつける」と「利益率の高いものを確実に売る」こと

池上氏は「食材のレベルを上げた」と話していたが、昨今続いている食材の価格高騰についてはどう対処しているのだろうか?

「価格を上げるのは最終手段だと考えていますが、ここ1年ほどの食材の価格高騰には目を見張るものがあり、やはり、値上げしなければいけないメニューも出てきました。ただ、値上げする場合は、お客様の満足度が下がらないよう『サプライズ感をプラスする』ことを大切にしています。

少し変わったメニューを提供したり、良いお皿を使ったり、より美しい盛り付けにこだわったりすることで、お客様に驚きという付加価値を提供したいと考えているんです。もちろん、安心感のある美味しい定番メニューをしっかり揃えることも忘れていませんよ。日常的な安心感とサプライズの融合で、お客様にご満足いただこうと考えています」

また「利益率の高いものをしっかり売る」工夫もしていると池上氏は話す。

「メニューの中には『利益率が高く、かつ多くのお客様に人気がある』商品があります。例えばサワーがそうですね。飲み疲れしないし、どんな料理にも合います。そういう商品をしっかり売るよう、従業員皆で意識しているんです。

安くて美味しい旬の果実や、こだわりの梅干しを使ったサワーをメニューに並べて、『今のおすすめは旬のスダチを使ったサワーです。美味しいですよ。いかがですか?』とおすすめすると、多くのお客様は『飲んでみるか』という気持ちになりますよね。こうやって、利益が確実に出るものを売り上げることで、その分料理にお金を回せるようにしています。

ちなみに果実や梅干しは、すべて農家から取り寄せたものです。レモンはレモン農家から、スダチはスダチ農家から、梅干しは梅干し農家から、というように。作り手の顔が見える良い品物は、安くてもやはり特別感がありますからね」

利益率の高いドリンクと、どうしても原価の上がってしまうフードを組み合わせ、トータルで原価率が28%を超えないよう調整し、この苦境を乗り切っているという。

社員旅行で秋田の保坂青果を訪れたときのもの。『びゃく』では若手育成に力を入れており、池上氏はスタッフ皆と仲がいい

細かいマニュアルではなく覚えやすいフレーズで!

無理なく気持ちの良い接客ができるよう、細かくマニュアルを作るのではなく、「1テーブル3アクション」「目配り気配り心配り」など、覚えやすいフレーズを浸透させている池上氏。これが3つ目の秘訣だ。

「ガチガチのマニュアルを作るのは嫌いなんです。どうしても堅苦しくなってしまう。そこで、よく使うのが『目配り気配り心配り』を大切にしよう、そのためには『1テーブル3アクション』を徹底しよう、といったフレーズです。

『1テーブル3アクション』とは、来店したお客様に温かいおしぼりをお出しする1アクション目、お食事の途中に取り皿をさりげなく交換する2アクション目、そしてお会計が終わりお店を出る際は入口まできちんとお見送りする3アクション目のことです。

一つひとつのアクションをとる際には『今日は寒いから温かいおしぼりをお渡ししよう』などのように、お客様一人ひとりに合わせた気配りや声掛け、会話内容を考えることも大切にしています。機械的な接客に比べて手間はかかりますが、それぞれのお客様に合わせたおもてなしをする方が喜んでもらえますから。

それぞれのアクションを忘れないよう、『客席に取り皿をあえて置かない』などの工夫もしています。取り皿がないことで、しっかりお客様に目配りして、適切なタイミングでお皿を変えようという意識が働くはずです。マニュアルがないことで、スタッフの自主性も育っていると思いますよ」

さらにお客様一人ひとりと仲良くなり、気軽に立ち寄ってもらえる接客をすることにも力を入れているという。

「従業員とお客様の心の距離が近づけば、気軽に来店してもらえるようになります。私は『びゃく』をお客様に普段使いしてもらえる店にしたいんです。そのためには、とにかく当たり前のことを続けることが重要。昔先輩に教えてもらった『はじめる、つづける、なしとげる』という言葉も大切にしていますね」

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支倉律花

ライター: 支倉律花

教員として学校に勤務しながら、グルメ・エンタメなど複数のWebメディアで記事の執筆を行う。現在はフリーランスのライターとして、教育・医療系媒体を中心に取材・執筆を担当。映画館に週4で通うのが趣味。