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渋谷に復活した『富士屋本店』、再開発で激動する街で「正直な酒場」を貫く

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店内は2エリアに分かれており入口すぐのコの字カウンターと奥にも同様にコの字カウンターとテーブル席、テラス席もある

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『大衆酒場 富士屋本店』のスピリットを継ぐ『立呑 富士屋本店』を開業

『大衆酒場 富士屋本店』閉店後、復活を試みていたが新型コロナウイルス感染拡大の影響による酒類提供停止、時短要請などの煽りを受けた同社。新たな場所として選んだのが、休業していた『富士屋本店ワインバー』だった。

「ちょうど隣の店が閉店したので、お店をつなげて商売しよう考えました。しかし、以前のお店の復活とは考えていません。あの建物で、個性的な名物スタッフたちがいてこその『富士屋本店』だったので。自分の中では『富士屋本店』のスピリットを継承した新しい立ち呑みだと考えています」と加藤氏は語る。以前のスタッフは高齢化していたこともあり、浜町や三軒茶屋の店舗経験者や、新規スタッフを募り、復活ではなく新たなスタートを切ることとした。

店舗の空間づくりは主に『立呑 富士屋本店』店長であり、建築士の資格も持つ酒主涼介氏が担当。自身で図面を引きレイアウトを考え、カウンターを新設し、テーブルの組み立てや照明や棚の設置、コートフックなどもDIYした。

名物料理のほか、新メニューやナチュールワインで月商810万円

『立呑 富士屋本店』としてリスタートする上で意識したのは「地域密着」だ。「酒屋母体なので、あまり色のつかない酒場を目指した」と加藤氏は話す。

安さだけを追求するのではなく、『大衆酒場 富士屋本店』時代の料理を引き継ぎつつも、素材を厳選し丁寧に作ったメニューを『富士屋本店 日本橋浜町』の料理長が考案。「ハムキャ別」や「なすみそ」(300円)などの名物はそのまま、ハムカツは以前よりも分厚い「雲仙ハムカツ」(600円)というように、いくつかのメニューはアップデートするなど奇をてらわず酒に合う酒場料理、食事ものを以前より豊富に揃える。

『大衆酒場 富士屋本店』時代からの名物である「ハムキャ別」(400円)

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新メニューとしては、魚を使った和食も見逃せない。『富士屋本店 日本橋浜町』で提供している鰯の生ハム巻を同店では「鰯の海苔巻」(850円)へとアレンジした。また、ドリンクにナチュールワイン(グラス550円〜)も新たに取り入れたことから、「芽キャベツのフリットカラスミかけ」(550円)や「自家製レーズンバター」(600円)などワインに合う料理も新たに盛り込んだ。

「鰯の海苔巻」(850円)

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日本酒や酎ハイのメニューも広げ、「特製山椒サワー」(550円)など自家製サワーもラインナップ。とはいえ瓶ビールは「サッポロ赤星」(490円)と手頃だし、焼酎やウイスキーを瓶ごと提供するスタイルは『大衆酒場 富士屋本店』の頃と変わらない。

「宝焼酎360ml」750円、「ブラックニッカ180ml」750円など、焼酎やウィスキーは小瓶で提供

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以前は注文もキャッシュオンスタイルだったが、『立呑 富士屋本店』では「0regi(ゼロレジ)」の導入でキャッシュレスに対応。Wi-Fiやモバイルオーダーも導入し、混雑時でもスタッフがスムーズに対応できるようにした。

オープン当初は常連客が多く年齢層もそれなりに高かったというが、渋谷駅近くの路面店ということもあり、最近では年齢層が下がり始めているという。現在、平均来店客数は1日約100人、平均客単価は約3,000円、日商27万円、月商810万円で推移している。

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中森りほ

ライター: 中森りほ

グルメ系ウェブメディアの編集・ライターを経てフリーライターに。フードアナリストの資格を持ち、現在マガジンハウス『Hanako.tokyo』や徳間書店『食楽web』、ぐるなび『dressing』、日経『大人のレストランガイド』などで飲食店取材記事や食のエッセイを執筆中。