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M&A、コロナ禍で新たな武器を携えた『晩杯屋』。「安くて旨い」を貫き100店舗を目指す

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その日の魚介メニューはホワイトボードで紹介。注文率も高い

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セントラルキッチンの閉鎖が大きな転機に

これと並行して、2021年にセントラルキッチンを閉鎖したのも大きな変化だったと鈴木氏は話す。「出口の見えないコロナ禍で、維持していくのが大きな負担になっていました。毎日豊洲に通い、『その日に安いもの』『仲卸が売りたいもの』を仕入れるというスタイルはいまも変わりませんが、セントラルキッチンを経由して各店へという物流から、魚を丸のまま各店へ配送するという流れになりました」

使用する魚は同じでも調理は各店で行うため、店舗ごとにメニューに変化が生まれ、アラ汁や煮こごりといった「食材使いきり」のメニューも誕生した。さらに、以前は業者から「これも持っていってよ」と言われても全店分のロットに足りず購入できなかったような魚も仕入れられるようになり、扱う魚種の種類が増えたことで顧客満足度の向上にも繋がっている。

暑い季節のピリ辛メニューとして導入された「唐辛子しゅうまい」190円。新商品にはメニュー名の左に「新」のマークが書かれている

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「薄利多売ではなく、適正価格」が開業からの信条

メニューは全店共通の50~55品と、日替わりのおすすめ10品。メニュー表はあるものの、食材が高騰したり安定供給が難しくなった場合は潔くそのメニューを取り下げる。「最近ですと、鶏のから揚げがなくなりました。長期的に鶏肉の価格が下がらないだろうという判断です」

また低価格と品質を両立させるためには、細かな工夫も欠かせない。たとえばアジフライなどの揚げ物や天ぷらは、衣付きの加工品を使うと食感が悪くなってしまうため、必ず各店で衣付けして揚げ、ふわっとした食感に仕上げる。

刺身に欠かせないワサビは、本ワサビ使用のものを選ぶなど、小さなこだわりは数えきれないほどあるという。「全店共通のメニューは商品部で開発を行っていますが、柔軟に商品を入れ替えるのはトリドールグループになっても変わりません」

ドリンクの売れ筋は、1位が「中」250円。仕入れ値に合わせて価格を下げたものもある

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よく『どうしてそんなに安くできるの』とお声をいただくんですが、我々は創業からずっと薄利多売でやっているわけではなく、これが適正価格だと思ってやっています。値上げも何度か行っていて、直近では2022年9月に実施しました」

2022年度はとくに酒類の値上げ幅が大きかったことから、ドリンクメニューも改定を余儀なくされた。煮込みは130円から150円に、ビールは440円から490円に値上げされたが、安さは健在だ。

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笹木理恵

ライター: 笹木理恵

飲食業界専門誌の編集を経て独立。スイーツ・パンからフレンチ、ラーメンなどまで、食のあらゆるジャンルを担当。飲食専門誌を中心に、一般雑誌やWEB、書籍などで活動している。「All About」「Yahoo!ニュース個人」でも執筆中。 https://foodwriter-rie.com/