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15坪で1日の集客200人以上。“面倒な”注文方法でも常連客が絶えない『なまけ』の愛され力

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客席は厨房を囲むL字型カウンターの他、4つのスタンディングテーブルを設置している

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スタッフのモチベーションが上がりやすい仕組み

ちなみに『なまけ』という店名は、いわしの「生魚」、ホルモンとラムの「けもの」から頭文字を取ったもので、そこに「オーダーテイクを怠ける」という意味を込めたそう。だが栗田氏は、「実際にはスタッフは全然怠けられませんけどね」と笑う。

ピークタイムの人員配置は調理担当3人、接客担当2人の5人体制。厨房内に設置した座席表のホワイトボードにお客の名前を記入し、チケットと組み合わせて注文管理をしている。店内には最大30人のお客を収容するため、繁忙時は目の回るような忙しさとなり、接客担当のスタッフは文字通り店内中を駆け回っている。

SNSを見て来店するお客が増えていることから、洒落の意味を込めてユニークなメッセージを短冊メニューの横に吊り下げている

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「たしかに店の営業は忙しいですが、プラスチック皿とプラスチックカップで提供していることもあって、面倒な洗い物はほとんどありません。また、スタッフはいつも高いモチベーションを保ってくれていて、そこも『なまけ』の強みの一つなんです。お客様の名前をお呼びする接客の流れで、逆にスタッフもお客様から名前で呼んでもらえるのですが、こうしたコミュニケーションが自然と士気を上げてくれるんだと思います」

栗田氏曰く、サービスの基本方針は「お客様とフラットな関係」であること。かしこまった接客ではなく、親しみのある声がけが「らしさ」となる。そのうえでお客の退店時にルール化しているのが「また来てね」という呼びかけだ。

「若い女性スタッフではなく、おっさんスタッフが言うのが肝。『また来てね』というおっさんには似合わないフレーズが、逆にお客様に刺さるんです」

経営会社の一括仕入れで商品力を高める

一方、商品クオリティの点において大きいのが経営会社の食材調達力だ。神奈川・横浜と東京・蒲田を中心に、寿司店や鮮魚居酒屋などの多業態で31店を展開しているオリエンタル物産は、横浜中央卸売市場の買参権を有し、グループ店で使用する鮮魚を本部で一括仕入れしている。

『なまけ』でもフードメニューの5割を鮮魚料理で構成し、高い食材調達力をフル活用。とくに約35品を揃える刺身と寿司のカテゴリー原価率は45%にもおよび、高品質を追求している。

写真手前から時計回りに、「ホルモン焼(大腸・小腸・肺)」(330円)、「いわしたたき」(330円)、「生ラム塩焼(ショルダー)」(660円)。アルコールは売れ筋の「チューハイ」(330円)など28種を揃えている

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「刺身はすべてツーオーダーで鮮度維持を徹底していますが、とくに品質に差が出るのがイワシです。捌きたてかどうかが肝心なので、カウンター越しの調理場で注文ごとに手開きにするのですが、このライブ感も売りなると考え、イワシを名物メニューの一つとしました」

魚介は魚種ごとの仕入れ量を抑え、売り切りにすることによってロス率をほぼ0%に抑制。また、イワシのワタは「いわし塩わた」(税抜300円)に加工するなど、廃棄されがちなイワシの頭、骨、エビの殻なども料理に使用して歩留まりを高めている。

イワシ料理の注文数は一日30~40品。注文ごとにイワシを手開きにし、タタキや寿司として提供する

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もう一つの名物メニューであるホルモンに関しては、大阪・西成の『鉄板焼きホルモン やまき』の提供スタイルがモデルになっているという。栗田氏曰く、「店頭に設置した鉄板でホルモンを焼きあげ、シズル感を演出したかった」そうで、「ラム肉については自分の好みが反映されていますが、立ち飲み酒場でラム肉を食べられる店はほとんどないことから導入を決めた」と説明する。

一方、「葱冷やっこ」(220円)、「チーズオムレツ」(550円)、「素やきそば」(440円)、といったサイドメニューもラインアップ。メニューバリエーションを広げ、大衆酒場らしさを打ち出すことにより、常連客の来店頻度アップにもつなげている。

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栗田利之

ライター: 栗田利之

フリーランスの記者として、15年以上にわたって外食経営誌の記事を執筆。大手、中堅の外食企業や話題の繁盛店などを取材してきた。埼玉県下を中心に店舗網を拡げている「ぎょうざの満洲」が贔屓の外食チェーン。