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六本木『串かつ男/男おでん』、年商10分の1になって得た人生の平穏【連載:居酒屋の輪】

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おでんに使用するのは長期熟成の「まるや八丁味噌」。薄口のおでん出汁と抜群に調和する

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眠らない街である六本木でも夜22時半には閉店

今から10年ほど前、最後の1店舗となった『串かつ男』をリニューアルし、『串かつ男/男おでん』として再出発。当初はきっちり半年で業態を変え、春夏は串かつ屋、秋冬はおでん屋としていたが、現在は「9月末ごろから5月初旬まで」と、おでん屋営業が伸びたという。

「おでん屋としての月商は350万円ほど。ピークの12月は月商450万円くらいまで伸びますが、夏の串かつは月商250万円に満たないこともあります。それでも、オーナーがちゃんと店に立てば十分やっていけるもんですよ。無理する必要はありませんから、朝まで続けていた営業も夜22時半の閉店に変えました。5億円だった年商は10分の1以下になりましたが、今の方がずっと自由に過ごせて、心も平穏です」

おでんは定番から変わり種まで多彩なラインナップ。大根の注文率はほぼ100%という

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厨房に立ち続け、おでんの味わいも高めてきた伊藤さん。出汁は鰹節を中心に、サバ、イワシ、昆布を組み合わせて薄口に仕上げている。「大したことはしていませんよ」と伊藤さんは謙遜するが、例えば大根だけでも昆布出汁で4〜5時間下茹でし、出汁のなかで急速に冷やしながら2〜3時間かけ味を染み込ませるなど、妥協はない。

おでん出汁で味付けた落花生がお通し400円の定番。急速冷凍を活用し1年中提供する

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「いろんな飲食業をやってきたので、そのノウハウをおでんに詰め込んでいるだけです。日本ワインと葡萄畑の近くで収穫された大根のマリアージュなんてのも提供していましたが。残念ながら大根の品質が安定しないんです。やっぱり八百屋さんで色、形、固さを直接確認して、おでんに適したものを選ばないと。秋口は良い大根が手に入らないので、冬になってからが本番ですね」

グラスだけでも9種がオンリストされる日本ワイン。果肉たっぷりの国産果実酒も揃う

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アルコールはおでん屋の定番である日本酒や焼酎などを抑えつつも、日本ワインに特化。純和風の奥深い出汁、熟成香や旨味の強い八丁味噌には、日本ならではの風土で醸造されたワインが絶妙にマッチする。

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佐藤 潮.

ライター: 佐藤 潮.

ミシュラン三つ星店から河原で捕まえた虫の素揚げまで、15年以上いろいろなグルメ記事を制作。酒場系の本を手掛けることも多く、頑固一徹の大将に怒られた経験も豊富だ。現在、Webのディレクターや広告写真の撮影など仕事の幅が広がっているが、やはりグルメ取材が一番楽しいと感じている。