画像素材:PIXTA
飲食店には災害・安全対策が必要不可欠
突然の大きな地震、想定外のゲリラ豪雨といった自然災害を私たちの力で食い止めることは不可能です。しかし、こうした災害への準備・対策を取っておけば「被害を最小限に抑える」ことはできます。とはいえ、防災対策の強化は集客や人材確保につながるものではないように思えるため、「防災対策にあまりコストをかけたくない」「周辺の避難経路の確認くらいでいいのでは?」と考えるオーナーもいるかもしれません。しかし、対策や準備を全くしていない状況で災害に巻き込まれ、お客様や従業員の命に関わる事態になれば責任問題に発展するだけでなく、店舗復旧にかかるコストが膨大になったり、休業が長引いたりなどの損害を受けることも考えられます。
安全・防災対策の強化は、お客様や従業員を守るための「義務」であり、自店舗の利益を守るための「手段」でもあると心得ましょう。
準備しておきたい“最低限”の対策とは?
では実際にどのような対策を考えておくべきなのかを具体的にご紹介していきます。どれも今日からすぐに対策できるものですので、ぜひ取り組んでみてください。・落下物、転倒物をなくそう
インテリアとして棚に置いてあるオブジェや高いところに置いているお酒のボトルなどは固定し、お客様の頭上や従業員の動線を避けて配置する工夫をしてください。また、大きな棚は壁や天井に固定し、揺れで中に入れているものが出ないよう、扉に掛け金を付けましょう。
・ハザードマップを確認しよう
店舗のある自治体が発行するハザードマップでお店の位置を確認し、どのくらいの被害リスクがあるのかを把握するとともに、最寄りの指定避難所の場所と道順も確かめてください。
・防災責任者を決め、マニュアルを作成しよう
災害が起きたとき、的確に指示をし、誘導できるよう防災責任者を決めましょう。そして、災害時にどう行動すればいいのかをまとめた防災マニュアルを作成し、従業員全員で共有してください。万が一、責任者がお休み・不在の時に災害が起きても慌てずに行動することができます。
・消化器具の設置は義務
2019年10月1日に消防法施行令の一部が改正され、「調理を目的とした火を使用する設備又は器具を設けた」すべての飲食店において、消火器具の設置と点検・報告が義務化されました。(一部、例外あり)消化器具とは、消化器の他、乾燥砂やバケツなどの簡易消化用具も含みます。
出火から3分以内に初期消火活動ができると被害は小さくなるといわれています。設置と点検、そして従業員が使い方と初期消火の手順を学んでおくことも重要です。
・帰宅困難時に備えた準備もしておこう
災害時は交通機関がマヒし、場合によっては従業員も含め、お店で一晩を過ごさなくてはならなくなる可能性があります。その場合に備え、必要な水や毛布、救急用品などを多めに用意しておきましょう。
「安心・安全な職場」は離職防止・生産性向上にもつながる!
火の周りに食材や荷物が常に散乱している、高い位置にインテリアやお酒が無造作に置かれている、使える状態の消化器が置いていないなど、安全性に不安を感じる職場で「働き続けたい!」と思う従業員はいません。災害など万が一の事態への備えが何もされていないことが分かれば「この店(オーナー)は従業員のことを大切にしていない」と感じ、最悪の場合、離職につながることも……。またお客様にとっても、来店時に地震が起きた時に従業員が的確に声をかけ、行動している姿があれば「この店は安心」だと感じることができます。「また来たい」と思われる一つの要因になる可能性もあります。
「大丈夫だろう」という甘い考えで、お店の“財産”でもある人材・お客様の損失につながらないよう、まずは災害・安全対策の見直しと確認から始めてみませんか?
【関連記事】
■ 災害時にスタッフを守るために! 飲食店がしておきたい防災対策・安全対策■ 事前の備えから地震発生直後の対応まで。飲食店が取り組みたい防災対策まとめ