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ロイヤルホストが24時間営業を廃止。「働きやすい店」を目指す飲食企業の取り組み

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ロイヤルホストが24時間営業の店舗を来年1月までに廃止することを決定した。業界では異例の定休日を設けることを検討し、早朝や深夜の営業時間の短縮も進めているという。じつは外食産業の大手では少し前からこうした動きが広がってきている。

たとえば、すかいらーくグループは2013年に約3,000店舗のうち、620店で平均2時間、閉店時間を早めた。マクドナルドは直近2年半で24時間営業店舗を約4割強削減している。また吉野家は全店舗の5割で、24時間営業をやめた。売上高とコストが見合わなくなってきたことが営業時間短縮の理由にあげられる。ブラックバイト事件や過労自殺問題などの反動で、過酷な労働環境に対する風当たりが冷たくなってきたことも一因だろう。

このように今、様々な飲食企業が改革に取り組み始めている。それは労働時間にまつわる話だけではない。あらゆる面で従業員の“働きやすさ”を意識した取り組みが行われているのだ。飲食業界で“人に優しい”といわれる企業・店舗はどこが違うのか調べてみた。

従業員第一主義。ホワイト企業の代名詞「テンアライド」

“ホワイト企業”といえば必ず名前の挙がるテンアライドは、福利厚生の厚さが特徴だ。同社の優先順位は「1に従業員、2にお客様、3に株主」。従業員の満足を第一に考え、一人ひとりが長く働ける環境作りに尽力している。

『旬鮮酒場 天狗』や『炭火串焼 テング酒場』などの居酒屋を運営している企業ながら、全店舗基本的に深夜営業ナシ。閉店は23時半を徹底している。また、2月を除き月の休みが10日間もある。原則として1店舗に社員2名体制を採用しているため、交代しながらしっかり休むことができ、メリハリをつけた働き方が可能となっている。

さらに夏休みと冬休みも、それぞれ連続で5日間の休みを取得できる。家賃補助や育児休暇制度の完備、持ち株会も用意しているという手厚さだ。

褒め伸ばしを徹底している「ライト・ライズ」

千葉県内で人気の焼鳥店『とりのごん助』など5店舗を展開するライト・ライズ。同社が運営する店は明るく雰囲気がよいことで評判で、スタッフの定着率も高い。

ライト・ライズは1号店オープンから、4年の間に3店舗を新規出店、順調に成長を遂げていた。ただ、その成長に人材育成が追いつかず、現場が疲弊してしまった。とくに縁の下の力持ちのようなスタッフのやる気が低下していたという。代表が「このままでは事業が続けられない」という危機感を抱き、社内の制度の見直しに着手した。

採用した方法は「褒め伸ばし」だった。スタッフは就業中、仲間に感謝したいことや、自分ができたことをノートに書きとめる。シフトが終わる前に、そのノートを提出して短い面談を行う。店長はスタッフの働きを細かく評価して褒め、さらに次の段階に行けるようにアドバイスする。

また、仲間に助けられたときや「がんばっているな」と感じたときに「ありがとうカード」を渡す取り組みも実施。カードを最も集めた人を表彰する「ありがとう総選挙」も行っている。褒められることでモチベーションが高まり、仲間に感謝することで協調性のあるスタッフが育ったという。

スタッフが楽しく売上げを競う「アイ・コンセプト」

海鮮居酒屋『居酒屋にほんいち』を運営する株式会社アイ・コンセプトは、業界平均よりも20~30%高い給料の支払いを目指すほか、従業員の自主性を尊重し、成長をうながす仕組みを作っている。

その工夫の一つとして、LINEを使った取り組みがある。まず、原価率が高すぎず、仕込みがシンプルなものをおすすめメニューとして設定する。客に提案するときのシナリオや売上目標を作って、毎日ロールプレイングで繰り返し練習する。毎日売れた数を集計し、個人の成績をLINEで全員が共有するのが特徴だ。

そして店舗ごとに毎月一位を発表する。キッチンとの連携を高めるため、一位獲得者が「自分のとったオーダーを一生懸命つくってくれた」という基準で調理スタッフを指名する。その2人を社長が高級な飲食店に連れて行き、業績をたたえる“ごほうび”が用意されている。こうした制度を用意することで、従業員のやる気を刺激し、それが離職率の低下にも繋がっているようだ。

やる気をもって長く働いてくれるスタッフを増やすために

“働きやすさ”とは待遇面だけでなく、労働環境や人間関係、やりがいなどにも影響される。「テンアライド」のように休みの日や就業時間後はきちんと休める環境を整えたり、「ライト・ライズ」のように人間関係を円滑にしたりすることで、働きやすさは向上する。また「先が見えない」と感じると辞める理由になるので、定期的にスタッフのキャリアプランについて意見交換している飲食店もある。できるところから変えていくことで、従業員のやる気や定着率が向上し、効率的なオペレーションが行えるようになる。スタッフがいきいきと働く、活気のある店づくりにも貢献することになるだろう。

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三原明日香

ライター: 三原明日香

編集プロダクションに勤務し、フリーライターとして10年以上活動。ふとしたことから労働基準法に興味を持ち、4年間社労士の勉強に打ち込む。2014年に試験に合格し、20年4月に開業社労士として独立した。下町の居酒屋で出されるモツ煮込みが好物。