創業6年で離職者はわずか2名。超人気バル『カルボ』の「人が辞めない店づくり」
飲食業界で人事は永遠のテーマである。事業を展開していく上で人材育成は重要なポイントを占めるが、かけたコストを回収する前に独立開業を選択する人は少なくない。逆に向上心を持たずに会社に居続けるだけの従業員は事業の発展を阻害する要因となる。
そのような中、「人が辞めない店づくり」を実践し、創業6年で従業員15人退職者2人という、スペイン料理の『カルボ』『パブロ』などを展開する株式会社Viscaの由利拓也氏(41)に人材育成術、人材定着術を聞いた。
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人材の定着で実現するスケールメリット
由利氏はバルセロナの一つ星レストラン『エルスカサルス』や『アルキミア』、三つ星レストラン『ラサルテ』などで4年ほど修業して帰国、2018年4月に独立開業、中目黒『Pablo(パブロ)』をオープンした。本場スペインでの修業という、莫大な自己投資をして技術を身につけ、現在は株式会社Viscaの代表取締役として事業の拡大を図っている。
2024年現在、1号店の『Pablo(パブロ)』に加え、『囲炉裏バル カルボ』『カルボ渋谷店』、福岡『カルボ』、今年7月に開店したばかりの『ラブレチャ(LA BRETXA)』の5店舗を運営している。2024年7月末現在、社員は15人で、「人が辞めない店づくり」を社の方針として掲げている。
画像を見る飲食事業は一国一城の主を目指す人が多く、店舗で働く期間は独立のための資金や技術を蓄えるためのものと考える人が少なくない。それが定着率の低さに繋がっているが、そうした風潮に由利氏は疑問を投げかける。
「独立はメリットばかりではありません。2か月先まで予約で埋まってるのに、月収で30万円、40万円にしかならないという例もあります。稼ぐためにあまりやりたくないことをやらなければいけないということもあるでしょう。それなら給料で50万円あげれば社員は安心ですし、その上で自分がやりたいことをやっていいとすれば独立するのとあまり変わらない仕事ができます。それなら独立より、その方がいいのかなと考えてくれると思います」
人を定着させることで企業の母体を大きくし、そのスケールメリットを経営や人材育成に活用する。それによって得られた資源を人や資本に還元・再投資して、さらなる成長を図り、そこで得られた資源を還元・再投資というアップワードスパイラルを形成するのが基本的な考え方と言っていい。
「1人で稼いでいたものが2人になれば2倍、あるいはそれ以上になります。そこで稼いだお金を僕1人で取るのではなく、みんなで分配して色々なことをしようという考えです。僕1人で頑張って『スペイン研修に行こう』と言ってもできるものではありません。でも、みんなで少しずつ出し合えば、それも可能になります。『人が辞めない店づくり』と言っても『辞めさせない』のではありません。一緒に働くとこれだけメリットがあって、その結果、みんなの人生を豊かにできるという考えで、仲間を作っていく先に『人が辞めない』があるということです」