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『原価ビストロBAN』の新業態『チュウノジョウ』。月商700万円を売る“中の上”という価値

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株式会社BAN代表取締役社長・小泉貴洋さん

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2022年10月、人形町の老舗穴子店の跡地にオープンした『チュウノジョウ』。店名の如く、「いつもよりちょっと良い」料理やサービスがお客を引き寄せ、すぐさま月商700万円を達成する繁盛店となった。

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実は同店は、『原価ビストロBAN』を展開する株式会社BANの新業態である。フランチャイズ展開で急速に出店数を増やした『原価ビストロBAN』と相反して、『チュウノジョウ』では個人店としての価値追求に目を向けた。店のコンセプトでもある“中の上”はどのように具現化しているのか。同社の代表取締役社長・小泉貴洋さんを取材した。

飲食事業の原点に立ち返り、『チュウノジョウ』をオープン

同店の出店には『原価ビストロBAN』にかけた思いと経験が生かされていた。

「コロナ禍を経験して、再現性と価値のバランスはシーソーのようだと実感しました」(小泉さん、以下同)

『原価ビストロBAN』ではフランチャイズ事業として、再現可能なビジネスモデルの確立を目指してきた。しかし店舗数を順調に伸ばす一方で、価値や魅力づくりに苦戦したと小泉さんは語る。さらにコロナ禍の影響もあり、2020年に到達した最大22店舗から、2023年には13店舗まで縮小してしまった。

「それでも繁盛している店舗はあるので、この業態自体が悪かったとは考えていません。コロナ禍を耐えきれなかった店と、売上を出し続けている店、この違いはなにか考えたとき、結局は“今、目の前にいるお客さまのことをどれだけ考えられているか”、ただそれに尽きると思ったんです」

この気付きから約2年の構想を経て、個人店の顔を持つ『チュウノジョウ』をオープンさせた。

人形町の路地裏で雰囲気のある店構え。大きな窓から賑わいが見える一階は立ち飲み、二階はテーブル席

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イメージ共有のため店を擬人化。俳優の「大泉洋」みたいな店にする

「長く愛される店にしていきたい。イメージは俳優の『大泉洋』さんです」

小泉さんは漠然と抱いていた感覚を言語化し、従業員や業者と共通認識を持つために、店を擬人化するというアプローチをとった。出店にあたっては、大泉洋さんの魅力分析から始めたという。

「彼は俳優として二枚目も三枚目も演じられるし、バラエティ番組でのお笑い要素もあり、特番のMCまでこなせる幅広さがある。そして地域愛が強い、など。一点突出した強みがあるというよりは、多面性が彼の強みです。だからか大泉洋さんを嫌いだという人は、そんなにいませんよね。きっと一時的な流行ではなく、10年後20年後も活躍し続けると思います。そんな普遍的な魅力をもつ店にしたかった」

多面性を持つことは、特定のなにかに縛られない柔軟性があるということ。飽きがこず、愛され続ける普遍的な店づくりを目指す上で、欠かせない要素だ。こうした発想から、店の外観は料理のジャンルが特定できない抽象的なデザインに、一方メニューには、想像をかきたてる余白を残しつつも、なじみのある料理をラインアップ。そして様々なシーンで利用できるよう一階は立ち飲み、二階はテーブル席という二層構造を採用するなど、自由度が高くかつ日常的に使える店舗デザインに落とし込んでいった。

二階テーブル席。穴子店の歴史を受け継いだかのような雰囲気ながら、天井高もあり心地よい空間

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ちなみに二層構造の店舗設計は、コロナ禍の集客に対する懸念の払拭にも役立っている。

「最低50席以上の中規模物件を探してはいましたが、ご時世もあり、全席を予約で埋めて1.5〜2回転させるのは正直プレッシャーでした。そこで一階は完全な立ち飲みカウンター、二階はテーブル席と用途を分け、売上の立て方を分割したんです。50席すべてを埋めるのは大変だけど、二階の25席だけを予約で埋めることを目標にすれば、比較的経営しやすい。フロアが違うだけですが、アプローチの異なる二つの箱を合わせて100%を目指している感覚です」

現に二階はグループ客でいつも予約で満席だ。一階はリピーターを中心にウォークインで賑わっているので、まさに狙い通りと言える。

いずれも1,000円以内。「前菜」の他、刺身などを提供する「日替わり」メニューも

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松本ゆりか

ライター: 松本ゆりか

東京でWebマーケターを経験した後、シンガポールへ渡りライフスタイル誌やWebメディア制作に携わる。帰国後、出版社勤務を経てフリーライターに。主に中小規模ビジネスや働き方に関する取材・執筆を担当。私生活ではひとり旅とはしご酒が好きなごきげんな人。