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ニュー中華酒場『代官山ライチ』、“普段使い”と“目的来店”の両方を狙った業態戦略

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約15坪の店内にはネオンサイン、ポップなロゴを採用し、写真に切り取りたくなる要素を散りばめている

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成功のカギは「不変性と余白がある業態を選ぶこと」

CHAKASが居酒屋出店に至ったのは、土屋氏の存在が大きい。

「土屋が激戦区である三軒茶屋で立ち呑み酒場の『奥三茶 たまや』をやっていたことは、活かすべき強みだと思っていて。彼が入ってくれたからこそ、アフターコロナのタイミングでリアル店舗をやろうと2021年から話していました」

中華業態に決めたのは、昨今の流行を分析した上で、CHAKASの業態開発ポリシーに則った結果だという。お弁当の開発においても、「不変的に好きなもの」をテーマにしており、さらに「新規開発の余白があるもの」を掛け合わせて業態選択し、成功してきた。

「最近のトレンド業態として餃子酒場、焼売酒場、町中華などがありますが、それと同じことをしても繁盛させるのは難しい。そこで、日本ではまだそんなに広まっていない本場中国にある料理や食材を探したときに、ラム肉に行き着きました。日本でラム肉を出す中華料理店はありますが、ガチ中華が多いですし、一般的に中華=ラムとはなっていません。そこでラム料理を中心に据え、和洋中をうまくアレンジして、ガチ中華、町中華をミックスし、気軽に足を運べるお店にしようと思い至りました」

もう一つ、店舗開発で意識したのがエリア特性だという。出店エリア自体は、CHAKASが渋谷、武蔵小山などにデリバリー弁当のセントラルキッチンを構えているため、このエリアからアクセスしやすい立地で考えていたという。そんな中で見つけたのが路地裏、半地下、アパレルや美容室などが連ねる雑多な雰囲気の代官山のこの物件だった。

『代官山ライチ』のターゲットとなる客層について、染谷氏はこう分析する。

「まずは近辺で働くアパレル店員さんや美容師さんが多いことは、代官山の大きな特徴ですね。代官山について話を聞いていくと、夜の時間は人が少なく、日常使いできるようなお店がないから中目黒や恵比寿に飲みにいくという話でした。そういった方々が日常的にサクッと気軽に飲みに来たくなる酒場テイストなお店、というのは勝ち筋があると思いました」

そして代官山という街に外から来るターゲットについては、ラム肉を使ったアレンジ中華をメインに据えた理由にも繋がる。

「飲み屋街でもない代官山に飲みに行くのって、わざわざ足を運ぶ強い理由がないと難しい。普通のお店をやってもなかなか差別化できないので、ラム肉やパクチーなど嫌いな人も一定数いるけれど『好きな人はめちゃくちゃ好き』な尖ったメニューの方が来てくれると考えました。店名のライチも、ライチが大好きな楊貴妃を喜ばせようと、玄宗皇帝が1,000キロメートル以上離れた場所からライチを取り寄せたという逸話にちなんでおり、そういう魅力がある店になりたいという思いを込めています」

右下から時計回りで「ラム肩ロースたたき」800円、「たっぷり茄子のラム麻婆」900円、「辛い!! よだれ鶏」650円、「チャイナキッス」500円

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メニューは、低温調理した臭みの少ないやわらかいラム肉に、自家製麻辣ソースを合わせた「ラム肩ロースたたき」や、ラム挽肉のうま味でお酒や白米が進む「たっぷり茄子のラム麻婆」など、やはりラム肉料理が目を引く。ほかにも「豆豉ウフマヨ」「冷やしトマトのハーブ和え」など、和洋中折衷な料理も一品1,000円以下とリーズナブルな価格で並ぶ。

「個人的にはラム肉を使った中華を食べるなら、ナチュールワインよりも炭酸系が飲みたいと思って。ワインもスパークリングワインが中心で、サワー系ドリンクを多く揃えています」

定番のレモンサワーやハイボールはもちろん、ライチ酒とソーダをミックスした「チャイナキッス」などのオリジナル炭酸飲料もラインナップしている。ドリンクも1杯500円程度と手が届きやすく、高級なイメージのある代官山で親しみやすさを打ち出した。

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中森りほ

ライター: 中森りほ

グルメ系ウェブメディアの編集・ライターを経てフリーライターに。フードアナリストの資格を持ち、現在マガジンハウス『Hanako.tokyo』や徳間書店『食楽web』、ぐるなび『dressing』、日経『大人のレストランガイド』などで飲食店取材記事や食のエッセイを執筆中。