“50品中49品が赤字”のデカ盛り居酒屋『花門』。赤字を補填するまさかの方法とは?
東京・上板橋にある居酒屋『花門(かもん)』はこれまでさまざまなメディアに取り上げられてきた人気店。デカ盛りながら全品400円(税込)というインパクト抜群のメニューとマスターの明るいキャラクターで、多くの顧客に愛されている。今回はそんな『花門』のマスター、イラン出身のコルドバッチェ・マンスール氏を取材。マンスール氏いわく、フードはほとんどが赤字とのことだが、どのように経営を成り立たせているのだろうか。
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画像を見る赤字でも「デカ盛り」を続けている理由とは?
『花門』のフードメニューはとにかく量が多い。なぜこんなにも山盛りの料理を提供しているのだろうか。
「全部のメニューを大盛りにしているのはお客さんが喜んでくれるからです。でっかい料理を出すとワーッと声を上げて喜んでくれるじゃないですか。お客さんが笑顔になってくれるのが嬉しくてやめられないんですよね」
そう言ってマンスール氏は笑う。
「『花門はデカ盛りの店』みたいに言われてますけど、もちろん言ってくれたら通常サイズも出します。だからデカ盛りは食べきれないから行きたくないってお客さんでも大丈夫。食べきれなかったら持って帰ってもいいですよ」
画像を見るメニューは50品中49品が赤字。値上げは今後もしない方針
かつては一般的な価格設定で営業していたという『花門』。フードメニューを全品400円にしたきっかけは何だったのだろうか。
「初めは380円だったのですが、これでも少し値上げしたんです。全品400円のままにしているのは、やっぱりお客さんに喜んでもらいたいからですね。オープンしてすぐ、夫婦のお客さんが来て奥さんがサイコロステーキを注文しようとしたんです。でも当時の値段は800円。旦那さんから『手持ちが少ないから安いのにして』と言われた奥さんは、結局380円(当時)の焼きそばを食べて帰られました」
その女性は妊娠をしており、栄養のあるものを食べてもらいたかったと当時を振り返る。
「値段のせいで食べたいものを諦めてしまうお客さんを見ているのが悔しかったんですよ。だから、その日の閉店後に全部のフードメニューを380円均一にして、量も倍近くに増やしました。経営者として失格ですし、私の奥さんには怒られました(笑)。だけど、お客さんの喜ぶ顔が見たくて」
現在は380円を400円に値上げしたが、それでも全50品中49品が赤字だという。
画像を見る顧客満足のためとも言えるデカ盛りは、恩返しの意味も込められているのだとか。
「お客さんに喜んでもらいたいのは、私が日本に来てお世話になったり優しくしてくれた人への恩返しの気持ちがあるからです。20代の頃、語学留学で日本に来てから現在まで皆さんからすごく優しくしてもらっています」
日本に来て覚えた「義理と人情」を大事にしたい気持ちが根底にあるという。
「うちで唯一黒字なのは『冷奴』。お隣の豆腐屋さんからその日に売り切れなかった豆腐が貰えるので、それを使っています。お返しに卵とか食材を渡していますが、これも『義理と人情』ですよ」