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東新宿で坪月商50万円を叩き出す『七福八郎』。勝因は、感度の高い商圏調査と低投資出店

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「京紅地鶏 もも炭火焼き 塩」(1,078円)が炭火焼きメニューの売れ筋1位。モモ肉1枚を丸ごと使用しており、単品原価率は80%を超える

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単身世帯が多く、世帯収入が高い商圏調査の結果から業態コンセプトを考えた

『七福八郎』は炭火焼きをフードのメインとした客単価4,500円の居酒屋だ。この業態は物件ありきで開発されたものだが、そのプロセスを夏木氏はこう説明する。

「物件契約を交わした段階ではどんな業態にするか決まっていませんでした。東新宿の商圏調査を進めたところ、単身世帯が多い、世帯収入が高い、新宿エリアの商圏にも含まれているといったことがわかりました。また、エリアの外食マーケットをチェックすると通いやすい居酒屋が少なく、居住地区外のエリアで外食をしてから帰宅する住民も多くいたことから、日常づかいできる炭火焼き居酒屋という業態が固まりました」

フードは炭火焼きメニュー7品、酒肴メニュー13品、月替りメニュー5品の計25品。地鶏のモモ肉1枚を丸ごと使用した「京紅地鶏 もも炭火焼き 塩」(1,078円)の単品原価率は80%を超えるなど、炭火焼きには原価を投じて看板メニューとして品質を追求している。

インパクトある商品ビジュアルのため、SNS投稿につながりやすい「四川シビレ麻婆豆腐」(1,298円)

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一方、酒肴メニューの売れ筋である「新鮮鶏の白レバー刺し」(1,408円)と「四川シビレ麻婆豆腐」(1,298円)はいずれも単品原価率15%前後の戦略商品。白レバー刺しは商品名には示していないハツ刺しを添え、麻婆豆腐は受け皿にこぼれ落ちるように盛り付けてインパクトのある商品に仕上げるなど、1品1品に付加価値化の工夫をほどこしている点も見逃せない。

フードは「毎月変わるメニュー」「自慢の炭火焼き」「七福乃肴」の3カテゴリー計25品という絞り込まれた商品構成

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試飲サービスの導入で1人当たりのアルコール注文数が大幅に伸びた

アルコールは60種をラインアップ。定番8銘柄、月替わり6銘柄を揃える日本酒、スパイスの漬け込みジンを用いた七福ジン5種、定番の芋や麦の他、ワサビやゴマなど豊富なバリエーションを揃える焼酎がメニューの柱だが、ユニークなのは日本酒、焼酎の無料試飲サービスを採っていることだ。

日本酒の定番メニューはグラス660円、748円、1合徳利880円、968円の2ラインの価格で8銘柄、月替わりメニューはグラス748~990円、1合徳利968~1,210円の価格帯で6銘柄を揃える

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お客がリクエストした日本酒、焼酎をミニサイズのお猪口で試飲できるが、その分量もひと口分ではなく、お猪口2分の1杯程度は注ぐ。試飲分の日本酒、焼酎はロスになってしまうわけだが、試飲をすると大半が注文につながる他、お客がお礼としてスタッフにドリンク1杯をご馳走してくれることもあるそう。結果、試飲サービスの導入によってお客1人当たりのアルコールの注文杯数が2杯から3~4杯に増加。アルコール売上比率は40%に伸び、原価率はむしろ下がったという。

サービスレベルの高さも『七福八郎 東新宿本店』の集客を支えるポイントのひとつだ。冒頭でも触れたように、夏木氏はかつて、接客力で定評の高いDREAM ONに在籍しており、こうした経験も糧になっている。「DREAM ONの赤塚元気社長は、お客様はもちろん、スタッフを含めた周りの人全員を楽しませるサービスを実践されていました。そうしたサービスの教え、ロールプレイングをメインにしたトレーニング手法などを受け継がせてもらっています」と夏木氏は言う。

日本酒、焼酎の試飲サービスはお客とコミュニケーションを図るきっかけになり、常連客づくりにもつながっている

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栗田利之

ライター: 栗田利之

フリーランスの記者として、15年以上にわたって外食経営誌の記事を執筆。大手、中堅の外食企業や話題の繁盛店などを取材してきた。埼玉県下を中心に店舗網を拡げている「ぎょうざの満洲」が贔屓の外食チェーン。