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空中階でも坪月商37万円を達成! 自由が丘『おゆげ』が凝らす3つの工夫

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自由が丘『おゆげ』店主、山下海里(かいり)さん。後ろに見える看板の店名文字は、楽コーポレーションの宇野隆史会長による筆

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およそ10年の間、居酒屋ひと筋で働き、2023年7月に自由が丘で独立を果たした山下海里さん(33)。「蒸しと土鍋ご飯」を掲げた14坪の店舗は、人気・実績ともに絶好調だ。

まったく地縁のない土地で開業、通称「L字が丘」と呼ばれる入り組んだ路地にあるビルの2階という条件にもかかわらず顧客をじわじわとつかみ、2023年12月に月商520万円を達成。開業半年にして繁盛店の仲間入りを果たした。

成功の条件は、近年の「お米メニュー人気」だけに留まらない。そこには、人気店となるための周到な工夫があった。

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自由が丘駅前のロータリーから西側へ徒歩1分、飲食店がひしめく通称「L字が丘」の空中階にある店舗。大きな看板はなく、小さな行燈の光に導かれて写真右奥の階段を登っていく

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妥協しない条件を決めて物件探しに2年

20代前半で楽コーポレーションに入社した山下さん。下北沢や吉祥寺の店舗では、同世代のゲストと数多く接した。休みの日、将来の「自分の店」を思い描きながら、憧れの居酒屋を研究するうちに「この空間は、共通した“色気”がある」という特徴に気づく。

いずれもデザイン事務所A-SWITCHの秋本純一氏が手がける店だった。将来、自分の店もデザインしてもらいたい――。そんな長年の夢を、この『おゆげ』で実現させた。

「店名」と「料理」が簡潔に伝わる行燈。ホームセンターの材料から手作りして製作費を節減

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物件探しには2年をかけた。楽コーポレーション出身の先輩たちが進出していないエリアで勝負したい、との大まかなイメージはあったものの、静岡・三島出身の山下さんは街にこだわらなかった。

「東京のどこか、という広い条件で探しました。昔より路面店のメリットは少ないので階数にもこだわらなかったのですが、賃料、面積、駅からの距離という3点は妥協しませんでした。30分おきに『飲食店ドットコム』をチェックした時期もあります(笑)」

目印の生花をエントランスに毎日飾る。奥まった扉に対して、デザイナーの秋本氏は店内の様子が見える透明ガラスを提案したが、山下さんは入店時のインパクトを重視。現在の曇りガラスを主張して譲らなかった

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ようやく条件に合ったタイ料理店の居抜き物件(賃料は坪2.7万円)に出会って契約し、自由が丘へやって来た。独立前の勤務先だった下北沢や吉祥寺からは遠く、ゼロから顧客を開拓するしかなかった。

「土地勘も人脈もないから、最初は集客に必死です。頼りにしたのはSNSのクチコミと地元からの応援でした。オープン時に『自由が丘.net』というサイトで紹介いただいたほか、この『L字が丘』にある他のお店からつないでいただいたご縁も多いです」

現在では7割ほどを常連客が占める。そのうちの多くは、月2〜3回の頻度で通ってくれるそうだ。日曜・祝日の開店時間は少し早めて16時から、明るい時間帯は家族連れで賑わう。客単価は6,500円ほどで、自由が丘の居酒屋の中でも高単価である。

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神吉弘邦

ライター: 神吉弘邦

経済誌『Forbes JAPAN』、デザイン誌『AXIS』、建築誌『商店建築』、カルチャー誌『BRUTUS』などに寄稿するフリーランス編集者。コロナ禍で飲食店のありがたさに気づき、料理の奥深さにも開眼。メディア取材や企業コンサルティングのかたわら、現在「あて巻き」発祥の寿司居酒屋でも修行中。実家は仕出し屋。