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9月の食品値上げは1,422品目。飲食店がコスト増の“新常態”を乗り切る3つの対策

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画像素材:PIXTA

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相次ぐ食品の値上げが、飲食店の経営に大きな影響を及ぼしている。この動きは今後も続くとみられており、飲食業界においてもその影響は避けられないだろう。本記事では帝国データバンクによる調査結果をもとに、食品値上げの最新動向と見通し、そしてこの状況を乗り切るための対策について解説していく。

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9月は9か月連続で前年超え、年間2万品目突破

帝国データバンクによると、主要な食品メーカー195社における、2025年9月の飲食料品値上げは1,422品目となった。 前年同月(1,414品目)から8品目(0.6%)増加し、9か月連続で前年同月を上回っている。 この連続増加期間は、前月に続き2022年の統計開始以来で最長を更新した。 また、月間の値上げ品目数としては4か月連続で1,000品目を超えている。

2025年通年の値上げは、11月までの公表分で累計2万34品目に達し、2023年以来2年ぶりに2万品目の大台を超えた。 これは前年の実績(1万2520品目)を60.0%も上回る水準だ。 これらのデータは、飲食料品の値上げがもはや一過性のものではなく、常態化しつつあることを示している。

帝国データバンク「食品主要 195 社」価格改定動向調査 ― 2025 年 9 月より

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今回の値上げに見る、飲食店への影響が特に大きい「3つの特徴」

今回の値上げに関して、食品分野別や値上げ要因の観点から見てみると、特に飲食店への影響が大きいと思われる3つの特徴が浮かび上がってきた。

特徴1:値上げ最多は「調味料」
食品分野別に見ると、マヨネーズ、ソース、ドレッシングといった「調味料」が427品目で最多だった。これらは多くの飲食店で欠かせない食材であるため、その原価上昇はじわじわと利益を圧迫していく可能性がある。

特徴2:「加工食品」「酒類」の値上げも続く
「調味料」に続いて飲食店で使用頻度の高い、冷凍食品やハム・ソーセージなどの「加工食品」(338品目)や、ビールなどの「酒類・飲料」(23品目)の値上げも影響が大きいだろう。 メインメニューやドリンクメニューの価格改定が必要になる可能性もあり、原価上昇が及ぼす打撃は避けられなさそうだ。

特徴3:要因は「円安」から「物流費・人件費」へ
値上げの要因は、原材料の高騰が97.3%で最も多いものの、続いて物流費(80.3%)、人件費(54.2%)が昨年から大幅に増加している点に注目したい。一方、「円安」を要因とする値上げは昨年から大幅に低下した。これは、値上げの主因が為替のような変動要因から、「2024年問題」に代表される物流費や最低賃金の上昇に伴う人件費といった、国内の構造的な要因へとシフトしていることを示唆する。こうしたコストは一度上がると下がりにくく、値上げの常態化を招く一因となっている。

帝国データバンク「食品主要 195 社」価格改定動向調査 ― 2025 年 9 月より

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コスト増の「新常態」で、飲食店が今すぐ取り組むべき対策とは

この「新常態」ともいえる値上げの波は、飲食店の経営に着実な影響を与えるだろう。コスト増加に直面するなか、今すぐにでも取り組める3つの対策を紹介する。

対策1:原価の再計算とメニュー構成の見直し
これまで価格を相場などから感覚的に決めていた店も、これを機に、最新の仕入れ値をもとに原価計算を行い直し、確実に利益が出る価格設定を心掛ける必要があるだろう。また、利益率が低いメニューや、原価が大幅に上がった食材を使うメニューの見直しも有効だ。具体的には、代替食材の検討や、1皿あたりのポーション調整などが考えられる。

対策2:お客が納得する「価値が伝わる」価格改定
単に値上げしただけでは、お客が離れてしまう可能性も否定できない。それを防ぐには、値上げに見合うだけの価値を感じてもらう必要がある。例えば、メニューブックのデザインを高級感のあるものに刷新したり、生産地など「こだわりの食材」に関するストーリーを紹介したり、多様な組み合わせから選べるお得感のあるセットメニューを追加したり、「値上げしても来たい」と思わせる工夫が重要になるだろう。

対策3:フードロス削減とオペレーション効率化の徹底
原材料高騰に対しては、仕入れや仕込み、在庫管理を見直し、フードロスの削減を1グラム単位で意識する努力がこれまで以上に求められる。また、人件費高騰に関しては、券売機やタブレットによるセルフオーダーシステムといったITツールを活用した省人化・効率化も、有効な対策の一つだ。

10月の値上げは3,000品目超えの見通し

10月にはさらなる値上げが控えており、予定品目数は2025年4月以来の3,000品目超えとなる見通しだ。常態化する値上げは飲食店にとって脅威となりうるが、これを機に経営の土台から見直し、時代の変化に揺るがない強い基盤づくりを行うきっかけと捉えることもできる。常に最新の動向を注視し、状況に合わせて迅速な経営判断を下すことが、店の未来を明るい方向へと導く鍵となるだろう。

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笹倉有起

ライター: 笹倉有起

コピーライター、出版社の編集などを経てフリーライターに。紙媒体とWeb媒体の両方で、ワインやコーヒーなどの嗜好系、ビジネス系、日用品や化粧品の業界紙などいろいろ執筆。長野県への旅行にハマっていて、その土地の食べ物を食べるのが好きです。