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新店『一天張』も絶好調! 『原価ビストロBAN!』小泉氏が語るアフターコロナの戦い方

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『一天張』店頭に佇む株式会社BAN代表の小泉貴洋氏

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『原価ビストロBAN!』を運営する株式会社BANが、昨年秋に日本橋人形町に九州鮮魚と自家製餃子が楽しめる酒場『チュウノジョウ』をオープンさせ、今年5月18日には同じく日本橋人形町に姉妹店となる『一天張(イッテンバリ)』をオープンさせた。2店舗ともにネオ大衆酒場風で、1階は立ち飲み、2階は着席スタイルだ。コロナ禍を経て激安チェーン酒場にとどまらず、新業態にチャレンジした背景、そしてアフターコロナ時代に求められる飲食店の形について代表の小泉貴洋氏に聞いた。

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競合優位性と価値の高さに重きを置いた新業態

ワイン88円~、ハイボール55円〜、生レモンサワー99円〜など、すべてのドリンクをほぼ原価で提供し、約2年で22店舗まで出店した『原価ビストロBAN!』。明確なブランディングと再現性を持たせることで、スピーディーな出店に成功した。

しかし、パンデミックの煽りも受け、コロナ禍で直営含め10店舗が閉店を余儀なくされる。もちろん新型コロナの影響を受けたことが一番の理由ではあるが、代表の小泉氏はそれ以外の理由についても深く考察していた。

「コロナ禍でも人が集まるお店に注目してみました。そういうお店は目の前のお客さんとスタッフのために、今どうあるべきかを考え続けているし、軸の部分では時代の変化に左右されず、毎日同じことを繰り返し、今後もそれを繰り返していくようなお店です。我々が次に新しくお店をやるなら、再現性を無視してでも価値を上げたお店を作りたいと思いました。それは、新たな軸で多店舗させていく上でも必要なことだと改めて考えたのです」

『一天張』のコンセプトイメージは「天」がオーロラのように描かれたロゴにも表れている

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そこで取り掛かったのが、繁盛店の分析と新店のポジショニング設計だった。星野リゾート代表の星野佳路氏監修の書籍『競争優位を実現するファイブ・ウェイ・ポジショニング戦略』を熟読し、どのような飲食店を作るべきか価格、アクセス、サービス、商品、経験価値をそれぞれレベル5で表すマトリクスでお店の設計図を作った。

「限られたリソースをどこに優先的に使うかを考え、真似されやすい店舗の“立地”や“価格”ではなく、競合優位性が高い“サービス”にフォーカスすることにしました」

そのポジショニング設計の結果生まれたのが、餃子と九州鮮魚をウリにした『チュウノジョウ』。コンセプトは「最高にちょうどいい酒場」で、「外食って楽しい」と最近気づき始めた人に受け入れられるような、入りやすい雰囲気を目指した。

人形町に目をつけたのは立地特性から。平日はオフィスワーカー需要があり、土日は平均所得の高い近隣住民の需要がある割に、繁華街に比べると賃料も安い。コロナ禍を経て高い賃料を払ってでも売上を立てるという売上至上主義から脱却し、手元に残るお金を大切にするなど足元を固める方針をとった。

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中森りほ

ライター: 中森りほ

グルメ系ウェブメディアの編集・ライターを経てフリーライターに。フードアナリストの資格を持ち、現在マガジンハウス『Hanako.tokyo』や徳間書店『食楽web』、ぐるなび『dressing』、日経『大人のレストランガイド』などで飲食店取材記事や食のエッセイを執筆中。