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不利な立地で坪月商37.5万円。『千住かたすみ』が激戦区のかたすみで繁盛するワケ

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『千住かたすみ』店主の桶本 守氏

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『千住かたすみ』はその屋号の通りに東京・北千住の駅前繁華街から外れた住宅街の“かたすみ”に店を構える居酒屋だ。そんな不利な立地で勝負した理由とは? あわせて、坪月商37.5万円を売り上げる秘訣について、店主の桶本 守氏にうかがった。

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来店客の7割が女性。大衆酒場の激戦区で異色のスタイルを打ち出す

東京・北千住は駅前にいくつもの繁盛酒場が軒を連ねる居酒屋の激戦区である。北千住駅の西口エリアには飲み屋街や商店街が広がり、飲食店もそちらに集中しているが、『千住かたすみ』があるのは東口エリア。しかも、駅から徒歩8分かかる住宅街の“かたすみ”に店を構えている。

マンションの1階に入居し、店舗規模は12坪26席。日が暮れると周辺は暗がりに沈むような立地だが、2022年3月のオープンから堅調に売上を伸ばし続けている。平日でも17時の開店直後から近隣住民の常連客などが続々と来店。客単価は4,500円で月商450万円をコンスタントに売り上げているが、『千住かたすみ』で特筆すべきがその客層だ。年齢層は20〜30代が中心で、来店客に占める女性比率は実に75%。時には全席が女性で埋め尽くされるほど高い支持を得ているのである。

店は住宅街の一角に立つマンション1階に入居。通りかかった人でも入店しやすいように大きな窓を設置して店内の視認性を高めた

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女性視点に立ち、細部にわたって居心地のよさを追求

店主の桶本 守氏は大学在学中にダイニングバーでアルバイトをし、卒業後も複数の飲食店に勤務。独立を意識するようになり、多くの居酒屋経営者を輩出してきた株式会社ベイシックスの門戸を叩くと、11年間の在籍中、6年間は店長として『ジョウモン 吉祥寺店』を運営した。

独立の地として北千住を選んだのはこのエリアに詳しかったためだ。桶本氏は北千住駅に乗り入れる東武スカイツリーライン沿線に実家があり、北千住のダイニングバーに勤務経験もある。「『千住かたすみ』は一見すると悪立地に思えますが、店の目の前にある高架下のトンネルを地元住民が近道として利用することから、店前の道路は意外と通行量が多いんです」と桶本氏は説明する。

グレーを基調としたモダンなデザインのカウンター。居心地のよさを重視し、奥行きを広くとった設計にした

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そして、業態開発時に意識したのが女性の視点だった。その狙いは業態の間口を広げること。近隣住民をメインターゲットにし、子ども連れのファミリーを含めた幅広い客層に利用しやすい店を目指した。「そのために大事なことは居心地のよさ。そういったことは男性よりも女性の方が鋭い視点を持っていますから、その基準をクリアできるように妻にもアドバイスを求めて工夫を重ねました」と桶本氏は言う。

桶本氏の言葉通り、内外装には女性視点を意識した工夫が随所に凝らされている。シンプルな装飾のファサードはガラス面を広くとっているが、これは店内の視認性をよくし、初来店のお客でも入店しやすくすることが目的だ。清潔感を出すため、店内は居酒屋であまり使用例がないミントグリーンをメインカラーに採用。グレーのモダンなデザインのL字型カウンターは料理が並んでも卓上が窮屈にならないように奥行きのある設計となっている。

「妻のアドバイスがとくに反映されているのがトイレの設計。スペースを広くとるとともに洗面台に大きな鏡を設置していますが、これは僕にはなかった発想ですね」(桶本氏)

桶本氏の夫人のアドバイスで、トイレの洗面台には大きな鏡を設置した

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栗田利之

ライター: 栗田利之

フリーランスの記者として、15年以上にわたって外食経営誌の記事を執筆。大手、中堅の外食企業や話題の繁盛店などを取材してきた。埼玉県下を中心に店舗網を拡げている「ぎょうざの満洲」が贔屓の外食チェーン。