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半身990円のアジフライに納得。亀戸『Crisp!』に学ぶ「脱・薄利多売」の居酒屋経営

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左がウェルダン、右がレア。仕入れたアジによって塩加減や脱水時間を変える。「フレンチの技法を駆使している意識はないが、理論的に調理法を組み立てるのはかつての経験からかも」(石井氏)

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アジフライを武器に、徹底して他と差別化する

そのためのアプローチとして取った戦略の一つが、大手企業が乱立する「安い・早い」とは真逆の土俵に立ち、「食材や料理に他店との差別化を図る『価値付け』をすること」だ。

店の看板を張るアジフライは、その価値付けの末に導き出した『Crisp!』の“武器”。千葉県の豊かな食材を全面に打ち出しながら、自身の料理人としての技量が表現できるものとして、アジフライにたどり着いたという。海産物の揚げ物であれば、産地のブランドと同時に、仕立て次第で自分の特色を出すことができる上、消費者が外食に求める「普段食べない・家庭でつくりにくい」というニーズも満たせると睨んだのだ。

ふかふかのパン粉に気持ちよさそうに沈むアジ。産地に執着しすぎると営業できなくなるため、臨機応変に他の産地のものも使用する。仕入れが安定する食材として、ブランド豚『林SPF』のとんかつも提供

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「ただ、それなりの価格で提供するためには、家庭はもちろん他の飲食店さえ真似できないような違いを出さなければならない」と石井氏。

オリジナルでブレンドする揚げ油は、パン粉の食感・味・香りとの相性まで考慮し、コーン油と米油を使用。油切れがよく軽やかに仕上がるコーン油に米油を加えることで、揚がったあとの衣にバニラのような香味と甘みをまとわせる。

アジは千葉県産の黄金アジをメインにその時々で納得のいく品質のものを仕入れ、丁寧に皮と骨を取り除いた後、脱水と保水を繰り返し、最後にもう一度“企業秘密”の特製調味液で保水してスタンバイ。客から好みの揚げ方を聞き、『中屋パン粉』から仕入れる特製の打ち粉と生パン粉で包んでサッと揚げたら完成だ。ふわりとやわらかくジューシーに仕上がったアジフライは驚くほど軽く、魚やパン粉、油の甘みが見事に調和する。

「夜の単品(半身)で990円(税込)。昼の定食で1,980円(税込)。アジフライとしては安くない価格でしょう。でも、他でマネできないクオリティを求めてブラッシュアップしてきたからこそ、お客様が支持してくださいます」

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山本愛理

ライター: 山本愛理

フリーライター・エディター。WEBを中心に食にまつわる記事を執筆。 昔ながらの喫茶店から星付きレストランまで、美味しいものを通して幸せな時間を提供してくれる人の声と熱を届けるのが好き。空いた時間はもっぱらカフェ巡り。