恵比寿の“ちょっといい居酒屋”『ゆうゆ』。成功の鍵は、引き算オペレーションとスタッフ成長力
2025年5月にオープンした恵比寿の『ゆうゆ』は、“ちょっといい居酒屋”として早くも話題沸騰中だ。運営するのは、渋谷『うゆう』や恵比寿『魚見茶寮』など、予約困難な人気店を展開する御幸佑亮さん。成功の鍵は、店舗の「ハードづくり」とスタッフが自然に成長する「環境」にあるという。シンプルなオペレーションと意識改革で、恵比寿界隈のグルメな客層を魅了する、その哲学に迫る。
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居酒屋以上割烹未満「ハードづくり」の哲学とは?
「僕はソフトではなく、ハードづくりにこだわっています」と語る御幸さん。ここでの“ハード”とは、店舗デザイン、雰囲気、調理オペレーションまでを含む全体のパッケージを指す。マニュアルを押し付けるのではなく、御幸さん自らが「実践の場」で手本を示すことで、スタッフが自然に学べる環境を構築している。
この哲学は、単なる店舗運営を超え、スタッフ一人ひとりがプロフェッショナルとして成長するための基盤を築くものだ。
「まず働くスタッフにとって“カッコいい店舗”であることが重要です。デザインだけでなく、コースターや箸置きの配置まで細部にこだわります。そうした環境に立つことで、スタッフは自然と洗練された所作を身につけるんです」と御幸さん。凛と整った上質な空間がスタッフの意識を高め、接客の質を向上させる好循環を生んでいるのだ。
2019年の恵比寿『魚見茶寮』、2022年の渋谷『うゆう』、そして今回の恵比寿『ゆうゆ』と店舗を展開してきた御幸さん。自宅を3店舗の中心点に構え、「店舗が近いからこそ、背中で指導できる」と語る。23時に『魚見茶寮』の営業を終えた後、自転車で5分圏内の他の店舗にも顔を出す徹底ぶりだ。この日々の目配りこそが、スタッフに「いつでもオーナーが見ている」という良い緊張感を与え、自主性を育んでいる。
「独立以前からの同僚2人と『魚見茶寮』を立ち上げましたが、信頼関係があっても感情が絡むと難しい面も出てきます。だからこそ、目の届く範囲でトップダウン型の経営が有効だと感じました。もちろん、僕がいる時といない時で接客の仕方は違うと思うし、お客さまに合わせた臨機応変さも必要ですから、基本的には個人の判断に委ねていますよ。ただ、僕が店に顔を出すと、スタッフが清掃状況を確認するため急にトイレへ駆け込んだりして(笑)。それでチェックが甘かったと気づく。そんな小さな意識の変化が大事なんです」
こうしたエピソードからわかるように、御幸さんのアプローチは厳しさと信頼のバランスが絶妙だ。スタッフはオーナーの存在をプレッシャーではなく、成長の機会として捉え、結果として店舗全体のクオリティが安定している。
