『あの名店』わずか２年で４店舗目を出店。成功の鍵は「数字シミュレーション」の徹底

『あの名店』を運営するChange8株式会社取締役・井比政貴氏

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JR赤羽駅から徒歩2分の好立地。午後4時、『あの名店』の店頭に青い大きなのれんが掛かると、一人、また一人とお客が吸い込まれていく。

『あの名店』は、2021年10月の西荻窪店を皮切りに、2022年4月駒込店、同年7月板橋店、そして2023年7月に赤羽店と、わずか2年で4店舗を構える大衆居酒屋。仕掛け人は「ヒットクリエイター」として知られるChange8株式会社の井比政貴氏だ。

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ダイヤモンドダイニング時代、最初の配属先は13か月連続の不振店

東京都出身である井比氏の飲食業との出合いは、高校一年生のとき。『マクドナルド』のアルバイトが最初だった。大学に進学後は、こぢんまりとした鉄板焼き店で4年間アルバイトを経験し、経営の面白さや食の奥深さに触れた。

大学卒業後は、フランチャイズや飲食業のコンサルティングを手掛ける株式会社ジー・コミュニケーションに入社。当時、都内最大規模といわれていた店舗を任されるなど、充実感とともにエリアマネージャーを務めていた入社4年目、ふと株式会社ダイヤモンドダイニングの存在を知る。

「当時、ダイヤモンドダイニングは『100店舗100業態』の目標を掲げていたんですが、訳が分からない企業だと思いました」

そう語る井比氏は、当時すでに「自分の会社を作る」ことを目標にしていたという。ジー・コミュニケーションでは、すでにメニュー構成などにも関わっていたが、確立されたブランドの中では限界もあった。その反面、ダイヤモンドダイニングは、業態、店名、メニュー、店舗、すべてを一から作り上げている。「どうやっているのだろう、勉強したい」と思った井比氏は、2008年にダイヤモンドダイニングへ転職。最初に配属されたのは、13か月連続で前年実績を下回っていた不振店だった。

経験と実績を重ね、ヒットクリエイターに

しかしすぐに欠点を見抜き、その月から前年以上の売上を記録。その後、当時ダイヤモンドダイニングの中で一番の稼ぎ頭だった大型店の売上新記録を達成するなど、実績を重ねていった。

ただし、すべてが順風満帆だったわけではない。売上重視のマネジメントに傾き過ぎた結果、大型店をやむなく閉店に追い込んでしまったこともあったという。こうした経験を糧に井比氏は「生き残るブランドとは」と題して、新業態のアイデアを経営陣にプレゼン。その案が採用されてからの動きは早かった。

「不振店の業態を切り替え、新たなブランドを展開しました。“うまくいくはずない”なんて言われたりしましたけど、確信があったんです」

業績は絶好調。「ヒットクリエイター」と言われるようになったのも、この頃だ。

ボリューム満点の「串焼き5種盛り合わせ」（935円）。左からカシラ、ハラミ、ハツ、タン、レバー

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コンセプトは「普通にいい店」。2021年、西荻窪に『あの名店』をオープン

こうしてキャリアを重ねてきた井比氏は、2021年8月に「Change8株式会社」を設立。同年10月、西荻窪駅から徒歩1分の好立地に、大衆居酒屋『あの名店』をオープンした。アクセスの良さはもちろん、意表を突く店名や、チャージなし・お通しなしというルールが話題を呼び、さっそく人気店となる。

「業態のコンセプトは『普通にいい店』。客単価は2,500円弱なので、月2回で5,000円以下なら、サラリーマンが気楽に訪れることができるでしょう？」

とはいえ、客単価2,500円弱でも経営が成り立つのはなぜか。

「メニューはABC分析によって売れ筋を把握し、無駄のない発注や在庫管理を実践しています。感覚だけに頼ってはだめ。メニュー表のレイアウトもごく普通に見えるでしょうが、人の視線の動きや心理を突いた配置にしているんです。これによって、ある程度はオーダーを操ることができます」

こうしたオーダーコントロールは、原価率調整のひとつでもあるという。細部に仕込まれた高度な経営テクニックだ。

前菜から肉刺し、串焼き、揚げ、そして昼に営業する『東京KINGうどん』監修の極太うどんも食べられる、幅広いメニュー展開。串焼きは1本165円からとリーズナブル

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