飲食店ドットコムのサービス

坪月商140万円の『立呑み 鉄砲玉』が自由が丘に新業態。店主に学ぶ“立呑み”戦略

LINEで送る
Pocket
follow us in feedly

『立呑み 鉄砲玉』店主で株式会社シゲキがほしいの正木勇貴氏と、新業態『立吞み中華 起率礼』の井上史子シェフ

画像を見る

2022年、学芸大学にオープンし、今では連日満席の人気店となった『立呑み 鉄砲玉』。2.8坪ながら現在月商400万円、坪月商140万円という驚異的な数値を叩き出している。手掛けるのは『立呑み晩杯屋 学芸大学駅前店』の立ち上げや『おぐろのまぐろ 池袋ロサ店』にも携わった株式会社シゲキがほしいの正木勇貴氏だ。

【注目記事】「居酒屋は、死なない」。逆境の中、僕らが「原点回帰」の居酒屋を作った理由

『晩杯屋』で経営ノウハウを学んだ正木氏

高知市内で割烹料理屋を営む両親のもとに生まれた正木氏。飲食店という存在が身近にあった正木氏は、高校卒業のタイミングで料理の道を志し、高知の有名料亭『花蝶庵』へ入り20歳まで料理人として修業を積んだ。その後「都会のお店で働きたい」と上京し、友人に紹介してもらった六本木ヒルズの『焼きとり 八兵衛』で腕を磨いた。しかし24歳の頃、母親から「実家に戻ってきて欲しい」と頼まれ、地元へ帰り店を手伝うようになる。このとき正木氏が実感したのが「料理が美味しいだけでは繁盛店にならない」ということだった。

「料理はすごく美味しい店だったのですが、めちゃくちゃ流行っているかというとそうでもない。美味しい料理を作るだけではお客さまは来ないのだと実感しました。このまま高知にいても飲食店ビジネスを学ぶのは難しいと感じ、東京で真逆のことをやってみようと入ったのが当時大流行していた『立呑み晩杯屋』です。ちょうど学芸大学に新店がオープンするタイミングだったので、立ち上げから携わることができました」

『立呑み晩杯屋 学芸大学駅前店』では2年半〜3年ほど勤め、スタンディング天ぷらバー『KIKU 自由が丘』でも立ち上げを経験した正木氏。その後『立呑み晩杯屋 学芸大学駅前店』のオープニングメンバーで立ち上げた『おぐろのまぐろ』では料理長、店舗責任者を務めた。

やがて30歳になると、正木氏は自身のお店をオープンさせたいと考えるようになる。

「『立呑み晩杯屋 学芸大学駅前店』が本体買収の関係で撤退してから、学芸大学には立呑みが一軒もなくなってしまったのですが、学芸大学に立呑みがあったら絶対に流行ると思っていたんです。物件を探していたところ上昇気流に物件を紹介していただき、独立・開店パッケージを利用して『立呑み 鉄砲玉』をオープンすることができました」

『立呑み 鉄砲玉』に続き、2023年12月にオープンした『立吞み中華 起率礼』の店内。老若男女に親しみやすいデザインを意識したという

画像を見る

原価を下げるには「食材費を抑える」よりも「ロスとオーバーポーションの見直し」が重要

『立呑み 鉄砲玉』のオーダー比率はドリンク:フードが7:3だ。着席の店よりもアルコールの注文率が高く、ドリンク単価500〜600円程度で4〜5杯飲む人も多いという。原価率はトータル30%だが、ドリンクに限ると10%程度と低い。その分フードに原価がかけられるといい、原価100%の看板メニューである「マグロ刺し」が生まれた。『おぐろのまぐろ』時代にマグロ好きの人が多いことに気づき取り入れたという。居酒屋では到底お目にかかれないクオリティの生の本マグロを、990円(一人前)で提供している。

メニューのポーションや値付けについても正木氏は一家言ある。

「一人客の多い立呑みだと、小さいポーションで料理を提供した方がいいようにも思われますが、小皿すぎると調理の手間が増えて提供速度が落ち、お客さまに待ち時間というストレスを与えてしまう。そのためうちでは一人2〜3皿頼んでもらったら、満足できるくらいのポーションにしています。それプラスお酒を3杯くらい飲んで3,000円前後になるよう、値段を設定しました。原価が高くなる原因って、食材費よりもロスとオーバーポーションが問題であることがほとんどです。だからこそ、その日その日で料理の値段も正確に算出した方がいいと思っています」

こういった感覚も『立呑み晩杯屋』で培ったものだ。『立呑み晩杯屋』では1グラム単位で原価を計算し、それぞれの料理の仕込みに何分かかったか、人件費まで緻密に計算してメニューの価格を算出していたという。

Pocket
follow us in feedly
飲食店ドットコム通信のメール購読はこちらから(会員登録/無料)
飲食店ドットコム ジャーナルの新着記事をお知らせします(毎週3回配信)
中森りほ

ライター: 中森りほ

グルメ系ウェブメディアの編集・ライターを経てフリーライターに。フードアナリストの資格を持ち、現在マガジンハウス『Hanako.tokyo』や徳間書店『食楽web』、ぐるなび『dressing』、日経『大人のレストランガイド』などで飲食店取材記事や食のエッセイを執筆中。