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70席の大箱が満席に。渋谷のネオ居酒屋『ツキニカリ』はなぜ幅広い客層の心をつかむのか

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系列店で経験を積み、同店を立ち上げた店長の吉本剛士氏

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100年に一度といわれる大規模な再開発が進行中の渋谷。大型複合施設が次々と誕生する中、2023年12月には渋谷駅直結の「渋谷サクラステージ」が開業し、駅南西の桜丘にも大きな人の流れができつつある。それに先立ち、同年9月に桜丘にオープンしたのが居酒屋『ツキニカリ』だ。渋谷サクラステージの開業効果を見据えていたというが、オープン直後からすでに多くのお客の心をつかみ、にぎわいをみせている。

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ユニークな業態を次々展開。「店長がやりたい店を形に」

『ツキニカリ』を運営するのは、株式会社渋谷の歩き方。「渋谷の街に集う若者たちに夢を」「仲間とともに渋谷の街に新しい食スタイルを」「渋谷の街から日本を元気に」という理念のもと、30店舗ほどを展開している。古民家風の創作和食と日本酒の店『酒怪タマゴショクブツ くんなまし』、おしゃれな内装やフルーツサワーがSNSで話題のネオ大衆酒場『大衆酒場 ひまわり』、レトロな雰囲気で立ち飲みスペースもあるやきとん・串焼きの店『恋文酒場 かっぱ恋文横丁』など、店舗ごとにユニークな屋号やコンセプトを掲げ、いずれも人気店となっている。

「店長がやりたい店を形にする、というのが当社の考え。会社の方でおおまかな方向性をアドバイスすることもありますが、基本的にはすべてのマネジメントを店長に任せています」と、営業本部の板倉利枝さんは話す。

囲炉裏風のテーブル席。椅子はさまざまなデザインのものが配されている

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昭和と平成が入り混じる、古民家風のネオ居酒屋

店名の『ツキニカリ』は漢字とひらがな表記にすると“月に雁”。歌川広重の作品で、昭和24年に発行された切手の図案として知られる。渋谷サクラステージの目の前にある店舗は、木材を多用した古民家風の内装が特徴で、昭和の時代に使われていた照明や古時計などの骨董がさりげなく配されている。

計70席の客席は、囲炉裏を囲む席、ロフト席、コの字型カウンター、掘りごたつなど、さまざまなスペースに分かれていて、選ぶのも楽しい。特に目を引くのが、テーブル席の上に設けられたロフト席。階段が急で天井は低いが、他の客席よりも高い位置にあるという特別感があって人気のスペースだ。

また、レトロさを感じさせる一方で、コンクリート打ちっぱなしの壁、薄い紫の色味で統一されたモダンなラウンジ風のソファ席、1990〜2000年代のポスターや雑誌が飾られたトイレなど、よく見ると昭和と平成が入り混じった遊び心のある内装であることに気づく。これらの演出には、同店をまかされている店長の吉本剛士氏のこだわりが随所に詰まっているという。

「桜丘は再開発によって新しくなったイメージがある一方で、路地に入ると昔からの飲み屋が今も残っている。そんな新しさ・かっこよさと古臭さがミックスされた街の魅力を表現しました。自分が行きたくなる居酒屋は、年配の職人から若いアルバイトまで、いろいろな年代のスタッフが楽しそうに働いているお店。内装だけではなく、人や料理も新旧の良さが融合した店なら、幅広い層のお客様に利用していただけると思いました」

一番人気があるロフト席は立ち上がれないほどの天井の低さだが、屋根裏部屋のような隠れ家感がある

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難波美枝

ライター: 難波美枝

ライター・エディター。プロ向けのフランス料理専門誌の編集部におよそ10年在籍した後、フリーランスに。料理雑誌やワイン専門誌、Webなどで星つきレストランからビストロ、バルまで、幅広く取材。