飲食店を借りたら必要になる「排気ダクト」。必要性や種類、ポイントを解説
2024年12月5日
画像素材:PIXTA
飲食店が店内と店舗周辺の環境を快適に保っていくために重要な役割をするのが換気設備です。特に有効な「排気ダクト」は店舗によっては賃貸契約後に工事をして設置をする必要があります。本記事では、換気設備に関わる法令や種類などを解説します。
飲食店では排気設備の設置が不可欠
飲食店の厨房で調理をすると、油などのにおいや油煙、湯気や熱気などが出ます。そのままにしておくと店内に充満してしまい、お客さまはもちろん、従業員にとっても快適な店内を維持することが難しくなります。また、においや煙をそのままにしておくと、油分やにおいが壁や天井に染み込み、建物が汚れたり火災のリスクが高まったりするため、衛生面、安全面からも排気設備は大切です。
重飲食、軽飲食を問わず、厨房で火を使い調理をする飲食店においては、店舗の規模に合った換気設備の設置が法律で定められています。飲食店を経営していく上でのルールのひとつなのです。
悪臭だと感じる人がいれば、調理臭も悪臭と判断される
とはいえ、ただ店外に排気すればよいわけではありません。関係する法律「悪臭防止法」を知っておく必要があります。
悪臭防止法は「工場その他の事業場における事業活動に伴って発生する悪臭について必要な規制を行い、その他悪臭防止対策を推進することにより、生活環境を保全し、国民の健康の保護に資することを目的とする」法律。飲食店も「事業場」に該当するため、悪臭防止法の適用を受けます。
悪臭防止法上では22物質を特定悪臭物質に指定していますが、これは臭いの強さではなく、生活環境を損なっているかどうかで悪臭がどうかを判断したものです。そのため腐敗や下水が原因の臭いなど誰もが嫌がる悪臭だけでなく、調理臭も規制の対象となり得ます。違反をすれば罰則の対象になります。
環境省・水・大気環境局環境汚染対策室の資料によれば、「飲食店などサービス業からのいわゆる都市・生活型と呼ばれる悪臭に対する苦情件数は増加」しており、背景には「人々のにおいに対する意識がより敏感になってきたことや悪臭苦情の対象が多様化してきたことが考えられる」とあります。
飲食店で働いていると、店のにおいに慣れてしまい、そのにおいを不快に思っている人がいることを想像しづらくなります。自分たちは何も思わなくとも、「不快だ」「迷惑だ」と感じる人がいれば、そのにおいは「悪臭」となることを忘れてはいけません。
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飲食店では「排気ダクト」が有効
飲食店で換気をするとき、「窓による換気」と「換気設備による換気」があります。
■窓から換気…店舗に窓があればすぐにできるというメリットがありますが、雨が降っていたり、風が強かったりすると窓を開けられないため、換気は不十分になりがちです。そもそも厨房に窓がなければ、換気ができません。
■換気扇を使う…直接厨房の排気をそのまま出します。換気扇の場所によっては近隣の店舗や生活をしている人たちに不快な思いをさせてしまう恐れがあります。
■ダクトを使う…ダクトとは建物の内部や屋外に設置された空気の通り道のこと。換気扇から直接排気を出さず、厨房に設置してある排気フードから煙や湯気などを吸込み、排気ダクトに送り込み、店の上部や人気のないところへ排気を送ることができます。
店内を快適にするとともに、周辺の環境に配慮していくには、排気ダクトによる換気が求められます。
ダクトには、主に「直出し」と「屋上出し」という設置方法があります。直出しは店舗の外壁に穴を開け換気設備を設置するため、臭いが気にならない、周辺に生活している人がいない飲食店に向いています。屋上出しは煙突のようにダクトをのばし、屋上から排出する方法です。焼肉やラーメン屋などのにおいが強く、排気量が多い飲食店に必要です。
周辺に迷惑をかけないようにする場合、ダクトの場所と向きを見直したり、ダクトを屋上に設置したりするのが最も確実な方法ですが、新たに工事をするとなると大きな費用が必要になります。まずは店舗を借りた後で排気のトラブルが起きないように、脱臭フィルターを設置する、脱臭機をつけるといった対策をとっておくことをおすすめします。
また、居抜き物件を選んだ場合、もともと使われていたダクトを使うことができますが、メンテナンスされておらず、故障しているといったこともあり得ます。契約前に現状を確認しましょう。
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