【新型コロナ】暗闇のゴールデン街で『配信酒場 閑古鳥』羽ばたく。新時代への“夜間飛行”
客の支援の気持ちを感じ誕生「お酒チケット」
緊急事態宣言の後、実店舗を開けなくなってからはスタッフ4人を週に1日ずつ出勤させ、ママと2人で配信を続けている。実店舗は8~9人でいっぱいになる小規模な構えだが、配信方式では50~100人がやってくる。
映像と音声は店から一方的に流すだけだが、チャット機能で来店者の声はダイレクトに入る。配信を続けているうちに、ギャランティーク和恵さんは訪問者の共通した思いに気付かされた。
「最初はチャージの500円だけいただいて公開していました。そうすると『(店のスタッフも)飲んでください、お金は店が再開してから払いますから』という声が多くなってきました。『みなさん、お金を使いたがってくれているんだな』、『応援してくれているんだな』と感じるようになりました。そこでチャージとは別に“お酒”という700円のチケットを作り、『良かったら、これで私たちにご馳走してください』というシステムにしました」
その結果、客からの“奢り”が増え「普段の営業より飲みすぎて、かなり酔っ払ってしまいます」と嬉しい悲鳴をあげることになる。実店舗を開いている時の収益に比べると決して恵まれた数字ではないが「かなり助けられているのは確かです。今ぐらいなら、何とか頑張れそうだなという感じでしょうか」と分析する。
4月29日には、親交のあるミュージシャンから届けられた伴奏に合わせて歌う生配信ライブ企画もスタート(料金は1000円)。コンテンツを充実させ、客の満足度を高める努力は怠らない。
「空間を守る」から生まれた配信酒場
配信酒場が成功している原因は、「守られた空間を提供する」という店の特性も関係する。『Snack 夜間飛行』は店舗全体で昭和のテイストを維持し、ママはミッツ・マングローブさんらとユニット「星屑スキャット」を組む歌手。また、性的マイノリティーということもあり、様々な性的バックグラウンドを持つ人が集う。
しかし、最大のセールスポイントはそこではない。ギャランティーク和恵さんによる「守られた空間」こそが、最大の魅力である。「私の仕事は(飲食関係ではなく)人間関係」と言うように、客と店、客と客、全体から円満・円滑な空気、居心地の良さを醸し出すことに腐心する。
空気を壊すタイプの客には「ごめんなさい、もう帰ってもらっていいですか?」と排除することも辞さない。「空間を守る」ことで、客は“ここに来るといつも楽しい”と感じ、それを楽しみに足を運ぶのである。
守られた空間を電脳空間に移したのが『配信酒場 Snack 閑古鳥』であり、『Snack 夜間飛行』だからできた手法と言えるかもしれない。
感じる新しい時代の到来。人が集って飲むことの奇跡
必死で店の生き残りを図る日々の中、ギャランティーク和恵さんは新しい時代の到来をぼんやりとだが、感じるという。
「配信していると『人が集ってお酒を飲んでいたこと自体、実は奇跡的なことだったのではないか』という気持ちになります。これまで昭和の懐かしさを売ってきましたが、今は『人が集っていた時代の懐かしさ』も売っているのかな、と思うようになってきました」
その一方で、ネオンサインが消えた真っ暗なゴールデン街で、カメラに向かって話し続ける光景は、戦争中に地下壕からレジスタンスのラジオ放送を続ける、古い映画のシーンのようでもある。そんな筆者の勝手な想像を話すと、ギャランティーク和恵さんは苦笑しながら言った。
「確かに洞窟の中のラジオみたいなものですよ。その意味でも、私たちは今、将来語り継がれるような時代を生きているのかもしれませんね」
新型コロナウイルスという苦境に立ち向かいつつ、未来の姿を描く。昭和から半世紀以上の歴史を刻んだ店の秘密がそこにある。
ギャランティーク和恵
福岡県生まれ、年齢非公表。武蔵野美術大学視覚伝達デザイン学科でグラフィックや映像を学ぶ。5年間在籍した後に中退。在学中に歌手活動を開始し2002年にデビュー。2005年に星屑スキャットとしての活動も開始した。2007年9月に老舗のスナック『桂(けい)』から店舗を受け継ぎ、経営者として『夜間飛行』としてオープンさせた。
『夜間飛行 -配信酒場 Snack 閑古鳥-』
住所/東京都新宿区歌舞伎町1-1-9 G2通り2F
<配信の受け方>
①夜間飛行のTwitterのページ:https://twitter.com/snack_yakanhikoにアクセス
②当日配信される「Pass Market」でのチケット販売のURLをクリック
③チャージ(500円)やお酒チケット(700円)を購入
④配信開始前にURLがメールで送られる