新型コロナ「すでに収束」と企業の24.2%が回答。飲食店の売上も回復傾向
東京商工リサーチが行った「新型コロナウイルスに関するアンケート」の結果が発表された。これによると企業活動における新型コロナの影響について「すでに収束した」と回答した企業は24.2%で過去最高を記録。一方で赤字を見込む企業もいまだ多く、アフターコロナ時代への過渡期にあることがうかがえる。
【注目記事】「居酒屋は、死なない」。逆境の中、僕らが「原点回帰」の居酒屋を作った理由
新型コロナウイルスの影響は「収束」傾向か
「新型コロナウイルスの発生は、企業活動に影響を及ぼしていますか?」という質問に対し、「影響が出たがすでに収束した」は24.2%と過去最高の数値だった。最多は、コロナ禍の「影響が継続している」で60.4%、12月の前回調査から3.3ポイント改善した。また、企業規模別の集計でも、「影響が継続」は大企業・中小企業ともに過去最低で、「すでに収束」は過去最高となっている。
約9割が「倒産する企業が増える」と回答
続いて「今年(2023年)は、前年と比較して倒産や私的整理、廃業が増加すると思いますか?」という質問に対し、「思う」「やや思う」と回答した企業の合計は88.8%だった。その一因として、金融機関による無担保融資制度、いわゆる「ゼロゼロ融資」の返済開始が今年に控えていることが考えられる。
また、「『ゼロゼロ融資』の返済負担の軽減などを目的とした『コロナ借換保証』を利用しますか?」という質問に対しては「利用した」が4.3%、「利用する予定」は7.5%で合計11.8%となった。規模別では、大企業が2.1%、中小企業は13.2%が利用に言及した。
コロナ借換保証の利用に言及した企業を業種別でみると、旅行や葬儀、結婚式場など「その他の生活関連サービス業」の32.0%が最多で、次に「飲食料品小売業」30.3%、「飲食店」27.6%と飲食関連業種が続く。また、「コロナ借換保証を知らない」と答えた企業も多く、同制度の情報が企業に浸透していない可能性も考えられる。
前年比で売上が増加した企業は、飲食業が最多
売上をコロナ禍前の19年同月と比較してもらったところ、全体の55.3%が減収と回答。規模別では、大企業が45.1%、中小企業は56.6%が減収と回答した。
一方、売上の前年同月比の調査では、飲食業の85.1%が「増加」と回答しており、2位の鉄工業60.9%、3位のパルプ・紙・紙加工品製造業57.1%に大きな差をつけた。
今年度の収益見込みに関する質問でも、飲食店の70.3%が「増収」と回答し、こちらも業種別で最多となった。19年比で「売上が増加した」と答えた業種のランキングに飲食業は入っていないが、売上は回復傾向にあると考えていいだろう。
減益と答えたうち4割が「赤字見込み」と回答
売上は回復しても、利益につながっていない結果も出ている。「今年度(2022年度)の業績見通しは、次のうちどれですか?」という質問に対し、「増益」は27.1%、「減益」は34.2%と、増益した企業よりも減益した企業の比率が上回る結果となった。また、減益と回答したうち、42.4%の企業が「赤字見込み」と回答。
減益と回答した企業に対して理由を尋ねると、最多回答は「原材料価格の高騰」で72.6%。また注目すべきは、多くの企業が「人件費の引き上げ」を減益の理由として挙げている点。挙げている企業は大企業よりも中小企業の比率が高く、昨今高まっている賃上げ機運により、厳しい経営を強いられている企業が少なくないことがうかがえる。
【注目記事】渋谷『カクニマル』が常連客に愛される理由。初回で客の心を奪うスゴい「演出力」
新型コロナウイルスの感染症法上の分類が5類へ移行することや、それに先駆けたマスクルールの緩和など、世情はアフターコロナに着実に進んでおり、今回の調査結果からもその気配を感じられる。
しかしながら、原材料費やエネルギー費の高騰だけでなく、人件費の上昇も経営を脅かしている現状も明らかになった。体力がある大企業に比べ、中小企業はより厳しい局面にさらされているといえるだろう。飲食店経営者は、このアフターコロナ時代への過渡期における対策をしっかりと検討し、健全な経営へとつなげていきたい。