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昆虫食はなぜ注目されている? 昆虫原料の商品や飲食店の導入事例も紹介

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画像素材:PIXTA

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近年、注目されるようになってきた「昆虫食」。動物性タンパク質と脂質を多く含んでいる昆虫は、環境負荷を抑えた食材として研究されてきた。さまざまな立場からの賛否はあるものの、国内でも昆虫を原材料や飼料として使用する事例が増えてきている。今回は、昆虫食が注目されている背景や、健康リスクに関する一説を紹介するほか、昆虫食を提供している代表的な飲食店をピックアップする。

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昆虫食が注目されるようになった背景とは?

昆虫食が注目されるようになった背景として、世界的な人口の増加と地球温暖化が挙げられる。国連の「世界人口推計 2022 年改訂版」によると、2022年で世界の人口は80億人を超え、2050年には97億人まで達すると見られている。それだけの人口を維持するためには食料も必要になるが、家畜の飼育には温室効果ガスが多く発生し、環境負荷が大きい。

対して昆虫は飼育にあたっての温室効果ガスの排出量が少なく、さらに場所をとらないため環境負荷を抑えての生産が可能となる。このような理由から、昆虫を食材や飼料として利用するための研究が進んでいるのだ。

参考:国連「世界人口推計」からみえる未来

忌避されることも多い昆虫食。健康リスクは?

昆虫食の文化は世界的にも多く見られる。中国やタイでは伝統的に昆虫が食べられており、中南米やアフリカなどでも多くの昆虫が食材として使用されている。日本でもイナゴを佃煮にするといった昆虫食文化が根付いている地域もある。

しかし、昆虫食は多くの人が抵抗感を持つということも事実だ。株式会社リクルートの調査・研究機関「ホットペッパーグルメ外食総研」が行った「抵抗感のある食品・食品技術ランキング」の調査によると、「絶対に避ける」「できれば避ける」を選んだ人の割合が、昆虫食は88.7%で最も多かった。

虫そのものに対する抵抗感だけではなく、昆虫食の安全性・健康リスクについて不安を感じる人も少なくない。昆虫の細菌類の多さや、重金属類の生物濃縮(※)などがその理由として指摘されているが、飼育された昆虫においてのリスクは鶏や魚などと同レベルとされている。ただし、昆虫は甲殻類アレルギーの原因となるタンパク質を持っていることが多いため、その点は特に注意が必要だろう。

※…化学物質が食物連鎖を経て生物の体内で蓄積し、濃縮される現象

良品計画やニチレイなど、大手企業も昆虫食に参入

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近年、昆虫を原料にした商品が多く見られるようになってきた。よく使われている昆虫としては、コオロギやタガメ、トノサマバッタ、スズメバチなどが挙げられる。昆虫食メーカーとしては、2014年から昆虫食を販売しているTAKEO株式会社や、昆虫食を専門に扱う『bugoom』を運営している日本サプリメントフーズ株式会社などが知られている。

無印良品のコオロギせんべい(引用元:無印良品 コオロギせんべい ネットストア先行販売のお知らせ

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また、昆虫食を扱う代表的な大手企業の一つが、『無印良品』の株式会社良品計画だ。無印良品では、コオロギのパウダーを使ったチョコレートやせんべいを販売している。また、2022年7月には株式会社ニチレイがTAKEOに出資し、資本提携を結んだことにも注目したい。ニチレイの技術やノウハウが昆虫食に活かされることで、食材としての流通が進むことも考えられるだろう。

昆虫を使った料理やアルコールを提供する飲食店も

昆虫食のブームは、飲食店の間でも静かに広がってる。ここでは、レギュラーメニューに昆虫を使った料理を提供する飲食店をいくつか紹介する。

『アントシカダ』
アントシカダは、日曜日にコオロギラーメンを提供するほか、水、木、金、土曜日に「地球を味わうコース営業」として、ジビエや野草、昆虫のコース料理を提供している。コオロギビールやタガメジンといった昆虫を使ったアルコールとのペアリングも楽しめる。

『米とサーカス 高田馬場本店』
米とサーカス 高田馬場本店はジビエとアルコールが楽しめる居酒屋だが、昆虫料理も提供している。イナゴ茶漬けやスズメバチの子甘露煮、ミズアブの釜揚げなどに加えて、昆虫食べ比べセットも。

『TAKE-NOKO』
TAKE-NOKOは、前述のTAKEOが展開している昆虫食カフェ。コオロギアイスもなかやカイコのグリーンカレーのほか、タガメサイダー、蚕の糞茶といったソフトドリンク、タガメビールといったアルコールも提供している。

『中国茶房8』
中国茶房8は北京ダックと水餃子を看板メニューとした本格中華料理店。300種類以上のメニューを提供しており、中には蚕のさなぎの揚げ物やサソリの揚げ物といった昆虫を使ったメニューもある。

環境への負荷を抑えられるだけでなく、動物性タンパク質などの栄養素が豊富な昆虫食。見た目やその印象から抵抗感がある人も少なくないが、この先さらに研究が進むことにより、より安全で栄養価の高い食材として昆虫の流通が進む可能性は十分に考えられる。食材における選択肢の一つとしても、昆虫食が今後どう発展するか注目しておきたい。

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富江弘幸

ライター: 富江弘幸

ビールライター、編集者。出版社などでライター・編集者として活動し、中国留学、英字新聞社勤務などを経てビールライターに。ビアジャーナリストアカデミー講師も務める。著書に『教養としてのビール』(SBクリエイティブ)。https://localandbeer.com